#011 紆余曲折レポ(1)ー「まだら」なニュー・ノーマル
こんにちは!
『Tokyo Scope』プロジェクト 広報担当です
今回は4月末に開催した全体会議の様子と、
具体的なコンテンツの骨格を紹介する記事の前編です!!
今年のテーマは「ニュー・ノーマル」
先日お知らせしたように、
『Tokyo Scope 2023』のテーマは ニュー・ノーマル です
コロナ禍を中心とするここ数年で大きく揺らぐこととなった「普通」に着目し、
随時更新されていく「あたりまえ」を捉え直すことを目指しています
↑ 詳しくは ↑
0428 全体会議
今回の全体会議では、
学生の興味関心に合わせ4班に分かれて行った文献リサーチの発表と
コンテンツの方向性についてのディスカッションを行いました
1班 ー データ班
1つ目はデータ班です
国や都の大規模な統計から民間や学生独自の小規模な調査まで、
さまざまなデータをもとに
東京のニュー・ノーマルを俯瞰することを目指す班です
そんなデータ班では、
植淵知哉『社会調査で描く日本の大都市』古今書院 [2022] を扱いました
現代日本は「都市の時代」であり、
21の大都市に 実に3700万もの人々が住んでいます。
著者が実施した位置情報と結びついた大規模インターネットアンケート(n=約3万人)により、
都市環境と都市住⺠の複雑な関係を解きほぐし、多様な連関を詳らかにする一冊です
「地域の50年後は明るいと思うか」
「スマホの位置情報を使っているか」
「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきか」など
アンケートの内容は多岐に渡り、各都市の回答状況から特色を読み解くこともできとても面白いものでした
リサーチを経て
文献リサーチを経て、学生からは
田舎の人たちの方が地元愛あると思っていたが、意外とそうでもない
約20年で刑法認知数が大きく減っている。なぜ? これもニュー・ノーマルかも
幸福感について、新型コロナ中は不幸という論調が大きいが本当か?
若者が大都市で暮らすことに強いこだわりを見せなくなった。リモートワークの普及などの影響?
実際の所得格差のデータと人々の認識に差があるのは、メディアによるイメージの形成(○○の高級住宅街などの表現)も関係しているのではないか
コロナの前と後を比べてコミュニケーションアプリ(Zenlyとか)の利用率の増加についてデータとして知りたい
→コロナ禍による「人と会いたい欲」的なものの高まりが利用数のデータの増加に現われていたら面白いかも?
などの意見が挙がりました。また先生方からは、
データとして集められた際に捨象されてしまう事柄(サイレントマジョリティ、サイレントマイノリティ)にどのようにアプローチしていくか
データをインフォグラフィックスに落とし込んでいくにあたり、とにかくチャレンジしてみること。予想との違いを楽しみ、さらに調査を加えていくとより面白くなる
コロナ禍以前にもあったニュー・ノーマルの潮流と、新型コロナ流行によって生まれたニュー・ノーマルのまだらが面白くするヒントになるかも
などのコメントをいただきました!
2班 ー ヒト班
2つ目はヒト班です!
近年はインターネットが普及し、従来とは全く異なる新しいつながり方が常態化しています。そうしたヒトとヒトとの距離感やコミュニケーションの在り方、またはヒトとカネの関係性を取り巻くニュー・ノーマルを扱う班です
そんなヒト班では、
エドワード・T・ホール『かくれた次元』みすず書院 [1970] を扱いました
人間の生存やコミュニケーション・建築・都市計画といった
今日的課項とふかく結びついている“空間”利用の視点から人間と文化のかくれた構造を捉え、
大量のしかも急速に変化する情報を、ひとつの統合へと導く指標を提供する社会学の名著です
リサーチを経て
リサーチを経て、学生からは
二者が違うツール(一方は文字、一方は音声)を使用してコミュニケーションをしている=本文中にもない、ニュー・ノーマルな距離感なのではないか。SNS上のコミュニケーションでは、既読をつけたり返信するかどうかの決定や、するタイミングを自分で選択可能
コロナがもたらした「ディスタンス」が、「控えめに考え深く話す(p.137)」空間やその余裕を、消費を促進するために圧迫感のある都市の中にもたらした(ノーマル(「できるだけ消費させようという、せこせこした社会」→ニューノーマル(「ゆとりをもって、深く思考できる空間」へ)
苦情によってボール遊びができない、思うように遊べない公園は長い目で見たら ニュー・ノーマルかも?
鍵アカの鍵は物質社会のパーテーション?
などの意見が挙がりました。また先生方からは、
コロナ禍での電車の乗車率を扱うと、データ班との結びつきが生まれるかも
第10章の「ソーシャルディスタンス」は力学的観点から用いられたもの。はたしてヒト班が考えるソーシャルディスタンスは?
文字だけで分析できるものではなく、観察の方法にも注意すること
1970年に出版された本の普遍性をどのように2023年の本誌に生かしていくか
などのコメントをいただきました!
後編では、残り2班のリサーチを紹介します!
お楽しみに!
記・澤井雅治(南後ゼミ8期)