学生が主催する研究室トークイベント「GDLabLT」 の舞台裏
📢 本記事はmast Advent Calendar 2023の21日目の記事です。20日目は丈一「ztext.jsで5000兆円風の文字を立体的に描画する」でした。
mast17 & 現在大学院D1の稲田です。筑波大学 情報学群 情報メディア創成学類(mast)のグラフィックスデザイン研究室(金尚泰研究室/GDLab)の学生によるトークイベント「GDLabLT」の企画立案を担当しました。この記事では、開催にあたっての舞台裏や反省点、ノウハウについて報告します。
GDLabLTのお品書きや開催要項は、研究室Webサイトに掲載しています。一部はスライドもご覧いただけます。X(Twitter)でのポストまとめもあります。
LTとは
「ライトニングトーク」を意味する略語で、10分程度の短いプレゼンテーションをいくつも行うイベント形式です。コロナウイルスが流行る前までは、情報学群界隈でも、学生イベントとして活発に開催されていました。
LTの良いところを述べるにあたり、コロナ前の最盛期にLTを回しておられた先輩の言を紹介します。「どんなにヘタでも、つまらない話でも、10分で終わるから場が持つ」。すごく頑張ってキュレーションしなくてもいい感じに盛り上がる、便利なスタイルです。
開催結果
今回は水曜日の放課後に、学内の開放教室「クリエイティブメディアラボ」で実施。参加者は約20人で、部屋のサイズ的に想定していたキャパシティのほぼ上限値でした。
アンケートの回収数は10件。すべての方から最上位評価の⭐5を頂きました!自由記述にも「就活や院進など、知らずにもやもやしていたことの解消になった」「研究室の雰囲気がわかった」など、嬉しいコメントをいただきました。
企画したわけ
研究室の中身を知ってほしい
学生が活発にアクションを起こしている、弊研究室の雰囲気を知ってほしいという思いがありました。ちょうど研究室での配属面談の時期であることも意識しています。mastでは配属に必須なのは教員との個人面談のみですが、それだけではわからない面白いところを我々から見せたいという意図です。
早くから研究/研究室を知るタイミングがほしい
mastでは研究室に正式に所属するのはB4からですが、もっと早ければよいのに、というのがGDLabの学生メンバーの意見です。他大学だとB2・B3から配属がある学部も多いでしょう。
特に弊研のように学生が研究テーマを自由に設定する研究室では、4月に研究室に所属していきなり自分の興味を研究として成立するように整える必要があり、とても大変です。
たいていの研究室には、正式な配属でなくても所属する方法があると思いますが、その感覚はあまり知られていないでしょうし、そもそも研究室という組織は謎が多すぎます。研究・研究室に興味を持ってもらうこと、いつでも来て良いと示すこと、敷居を下げることを目指しました。
情報交換の場を復活させたい
これは稲田の個人的なテーマでもありましたが、コロナで吹っ飛んだLT文化 = 情報交換の場を復活させることも目的でした。
mastはLT・アドベントカレンダーなどで学生間の情報交換をオープンかつ活発に行ってきました。稲田自身も、先輩方の書いた・喋った知識に何度も救われた経験があります。コロナでこれらの文化はだいぶ希薄になっていますが、以前を知っている世代が改めて開催することで今後のケーススタディにならないか、と思っています。この記事も、観客としてはわからない、主催者目線の知識を共有したくて書いています。
プログラム構成
通常LTは発表者を募集してプログラムを決定しますが、今回は企画者(稲田)側からトピックと発表者をキュレーションしています。「なぜやるのか」を踏まえつつ、聴衆の集中が持続するように、かつ、メンバー全員に喋る機会があるようにプログラムを組みました。
各セッションは基本10分(発表が7分、質疑応答が3分くらい)としました。LTとしては一般的な構成ですが、研究室の名前を掲げている堅さもあってか、セッションによっては質問が出ず、ちょっと持て余す感じも……。
全体の尺
全体の尺は90分。ちょっと長いのでは?という気がしなくもないですが、過去のLTでは2時間を超えるものもあり、大丈夫だろう!と判断しました。実際ダレることなくスムーズに進行したので万事OKです。
グループトーク
プログラムの中には複数人が同時に喋るグループトークがあります。LTとして一般的な形式ではなく、かつ、スピーカーのスキルが求められる、明らかに難しい形式なことが予想できたため、これを設定するのはある種チャレンジでした。実際に行った対策を次節で見ていきます。
準備と練習
それぞれのトピックを誰に喋ってほしいかを稲田から指定しました。スピーカーには1️⃣トピック・2️⃣時間配分・3️⃣喋ってほしい大まかな内容を伝えるのみで、各自でプレゼンテーションを作成してもらいました。
LTは大学でやるプレゼンにしてはだいぶノリが軽いですが、これは見たことがないとなかなか想像がつきにくそうです。この温度感を掴むために、過去に稲田が見たお気に入りのトークを2本(以下)選んで、トピックを伝える際にみんなで視聴しました。
クロスチェック
通常、学生のやるLTで話す内容に主催者から事前チェックが入ることは稀です。しかし、今回は研究室オフィシャルなイベントということもあり、メンバーみんなでクオリティ担保のためのクロスチェック&練習を実施しました。
チェック実施は5日前と当日直前の2回。1回目は話題の補充(「これも喋ってほしい」を伝える)と話の進め方のチェックをしました。当日直前の2回目はスライドをパラパラめくるだけで、内容というよりは接続チェックです。2回目で問題が発生した人はいなかったので、結果としてはこれ以上にしっかり見る必要はなさそうでした。
グループトークの練習
問題のグループトークですが、今回は稲田から以下のような準備プロセスを提案しました。
登壇メンバーで話したいエピソードをすり合わせる。雑談形式でよい。
司会役を1人決め、その人がスライドを作成する。(→1回目の練習で中間チェック)
直前練習:本番どおりの席配置で一巡させてみる。
司会役から他のメンバーに話を振るタイミングを打ち合わせる。
この段階ではグダグダでも良い。振られるタイミングを各自が把握できればOK。
本番:直前練習と同じ流れで話を進める。
(🎉 練習の記憶が残っているのでスムーズに進むはず)
勘所は司会役以外の準備コストが限界まで低いところです。文章を書いたり、台本を読み込んだりする必要がありません。この方式で本番に臨んだ結果、概ねどのセッションも聞いて面白いレベルに達しました。
難しそうなところがあったとすればやはり質問の投げ方。答えの了解がない(なにを喋ればいいのか受け手が理解していない)投げかけはグダるようです。答えやすい質問をすぐ作れる技能のある人もいるでしょうが、やはり事前に打ち合わせをすること……それも「実際に喋ってみる」「うまくいく流れを身体で覚える」ことが重要であると感じました。
広報
イベント開催に当たって集客のために行った広報の内容を振り返ります。
紙媒体&授業訪問
少部数(50枚)ではありますがフライヤーを作成しました。
トークイベントは内容そのものが集客のキーです。お品書き(タイトルの一覧)をこの段階から大きく出したかったので、スピーカーたちには話のタイトル(仮でもいいよ!)を早期に決めてもらい、フライヤーに掲載しました。完成したフライヤーは弊研指導教員の担当する授業を訪問して配布したほか、会場ではハンドアウト代わりに設置しました。
学生がやる小規模なイベントにおいては、きちんとデザインされた紙の広報媒体の存在は本気度を伝えるアイテムであると思っています。ただ一方で、紙媒体が若干疎まれるような風潮もある情報系では、効果はプラマイゼロだったかもしれません。実際、置いておいてもあまり減らないし、かなりの数が余りました。
ML(メーリングリスト)
情報メディア創成学類では所属学生全員が入った公式MLがあり、普段は事務や先生からの連絡が流れていますが、実は管理者に許可を得れば学生も発信できます。
現在は学類長が管理者とのことで、概要と趣旨を添えて相談して許可をいただき、2回(2週間前/前日)にわたって広報を行いました。ターゲットユーザー全員に、確実にpushできる手段が使えたのは非常に強力だったと思います。
開催後のアーカイブ
スライドのアーカイブと、X(Twitter)でのポストのまとめを公開しました。どちらも直ちに来場者が増える施策ではないですが、今後のコミュニティや類似イベントの開催に向けて重要な広報要素であると思っています。
スライドは事前の準備不足で公開までやや時間がかかってしまったこと、またXのポストは会場にライブで流れる(投稿を促進する)仕掛けを作れなかったこと、いずれもちょっともったいなかったです。次回に期待。
運営
アンケートの取り組み
来場者を対象に紙でのアンケートを実施しました。
対面イベント一般においては、オンラインフォームよりも紙で実施する方が効果的(回収率が高い)ではないかと思います。設問内容は非常にシンプルで、自由記述と総合的な満足度(1〜5)の2点です。自由記述だけだとマイナスの要素を伝えてくれる人が非常に稀である(ことがある)ため、定量設問を設けています。舞台公演や美術展に携わってきたノウハウが役に立ちました。
非常に簡単な内容であるにも関わらず、アンケートの回収率が低かった点が反省点です。終了後の退出を急かす雰囲気があったこと、筆記具を用意しなかったことなどが要因であったと考えています。ていうか、これも情報系界隈であることを勘案すると、オンラインフォームも用意すればよかったですね。
スタッフ配置
タイムキーパーや出入り口の案内係はシフトを事前に決めていました。しかしシフトに並ぶ面々は、全員がスピーカーでもあり。当日はドタバタし続け、決めたとおりに回ったかといわれると微妙な感じがあります。運営専任者がいるとよかったですね。
また、スタッフの待機場所を明確に決めておかなかったら、部屋の下手側半分というイヤな位置に固まってしまいました。来場者側から見ればさぞかし怖い雰囲気だったことでしょう。次回は、来場者とスタッフが自然に混ざって存在できるような雰囲気を作りたいと思います。
今後やってみたいこと
継続開催
今後もこのようなイベントを継続して開催できればいいなと思っています。年1ないし年2の頻度で考えています。新歓みたいに4月開催とかもおもしろそうです。
参加者層の拡大
B3以外の人を増やせればいいなと思っています。現状ではどうしても、配属説明会的な感じになってしまうのかなと……。ゲストを呼ぶ、時期を変えるなどの方法を考えています。
おわりに
序盤で「情報交換の場が復活すれば」と書きましたが、折しもmastAdCの2日前の松田くんの記事でこのLTでの発表内容を取り上げていただいたり、また折しも会場になったクリラボの利用について、X上でちょっとしたディスカッションがあったりと、その素地めいたものはなんとなく存在するのではないかと感じています。
稲田やGDLabメンバーの知見を活用した取り組みとそのドキュメントが、これからの世代の(もちろんmast以外でも)コミュニティ形成に役立てばいいなと思っています。
明日のmastAdC投稿者は「びき」さんです!おたのしみに👋
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