
異色の水墨画 近藤浩一路
15~6年くらい前、鎌倉をぶらぶら散歩して着物専門?の骨董店に立ち寄った。
薄暗い店内は昔の着物や帯、和装小物がぎっしり詰まっている。
古い着物は柄や織りのデザインがおもしろく見ていて楽しい。
まあまあお高いし、着物愛好家でもないから見るだけで何も買う気は無かったんだけど、ショーケースの上に並んだスカーフの中に色と柄が気になる物があった。
漆喰に似た色の生地に薄墨色の柄。
広げてみたら木々の後ろに富士山が描かれた風景画だった。右下に作家名と朱色の落款印がある。
しぶいわー。
店のマダムが「それは絹よ~500円でいいわよ~」ってニコニコ話しかけてきた。
見るだけ…のつもりだったがマダムのニコニコマジックと500円という格安感もあって「あ、じゃあ頂いていきます」と即答していた。
柄に惹かれて買ったけど、首に巻いてみると何か違う。
スカーフ?風呂敷?うーんわからん。
ま、その内出番が来るでしょう、と箪笥にしまったままだった。
先日そのスカーフの事を思い出して箪笥から引っ張り出してみた。
皺が気になりアイロンがけしていて、ふと作家名が気になった。
そうだ、調べてみよう。
古い漢字が一文字解らないが、読み取れる部分を頼りにGoogleで検索したら、意外な事に情報が出てきた。(有名な作家だとは思っていなかった)
作者は近藤浩一路という人で明治の水墨画家だった。
なるほど。これはスカーフや風呂敷、というより作品だったのね。
首に巻いてもしっくりこない訳だ。
スカーフ?風呂敷?にしたのは何かの記念品だったのかな?
ちょうど空いている額があったのでセットしてみた。
スカーフは70×70くらいで大きいから、縁を折って観たい部分が出るように額装したらいい感じ。
この画家についてネットで調べてみた。
近藤浩一路
明治17年(1884)〜昭和37年(1962)
山梨県出身
東京美術学校(現在の東京芸術大学)西洋画科を卒業後、新聞社に入り挿絵や漫画作品制作を経て後に水墨画へ傾倒。
大正11年にパリをはじめとするヨーロッパ各国に滞在。同級生で親友の藤田嗣治とも交流があった。
日本美術史における浩一路の画業に対する位置づけは未だ不確定だが、「孤高の画家」「異色の水墨画」といった異端的評価がなされている。
こんな風に後になって作者を知るっていうのも面白い。
これも1つの出会いなのかな。
近藤浩一路殿、しまいっぱなしですいませんでした。
この作品、しばらく振りに日の目を見ましたね。
なんて思いながら飾った絵を眺めてる。