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うちの黒き猫 #7 猫暮らし

前の飼い主が「嫌がって自分ですぐ外す」と言っていた首輪。 なるべく軽くて負担が少なそうな物を選び着けてみると少しも嫌がらず、寧ろ自信に満ちたような表情。 「あたしはその辺の野良猫とは違うわよ」 とでも言ってるように見えた。 嫌がって外したりするどころか、ブラッシングの後は 「さ、ネックレス着けてちょうだい」 みたいな風に首をすっと伸ばして待っている。 最初の頃は殆ど鳴かず、要望がある時だけ低音で「ぎゃー」と言っていたのが、今では「にゃーん」とか「ぴゃーん」と猫らしい(?)声

    • うちの黒き猫 #6 別れの挨拶

      すみちゃんとの生活が3か月過ぎたある日、誰かがうちの門戸をコンコンと叩いた。 「すみませーん。こんにちはー」 玄関を出て門戸を開けると、12~13歳くらいだろうか。ヒスパニック系?の可愛らしい女の子が緊張した面持ちで立っていた。 「あのー、黒猫飼ってますよね?」 来たか。 例の米軍夫婦の娘さんに違いない。 日本語は完璧だ。 米軍夫婦は日本語が全く話せないので娘さんを寄こしたのだろう。 「あぁー、うちで飼ってるわけじゃないけど毎日遊びに来てるわよー」 にこやかに白々しいセリ

      • うちの黒き猫 #5 Diabloという名の猫

        「Diablo?!」 「悪魔」を意味するハードな名前に驚く。 自分の猫に「悪魔」と名付けるとは… 何だかねえ…と先生と顔を見合わせた。 後々分かったのだが、飼い主が好きなゲームタイトルから取った名前だった。 ディアブロちゃん。 呼びづらい… 縮めて「ディアちゃん?」と呼んでみる。 ピキッと反応した。でも何だか緊張感を走らせて落ち着かない様子。 再度「ディアちゃん」と呼ぶと体勢を低くして固まった。 もしかすると、その名前と嫌な記憶がワンセットになっているのではないだろうか。

        • うちの黒き猫 #4 話し合い

          米軍ドクターとこっちの先生、飼い主夫婦、保護したSさんとで話し合いの場が設けられた。 実は以前から米軍ドクターは飼い主に、飼い方についてずっと注意をしていたらしい。 「まず、なぜ首輪を付けない?野良猫と間違えられたらどうする?」 米軍ドクターが言うと 「付けても嫌がってすぐ自分で外すんだよ!」ときた。 「他の猫たちと離して彼女の居場所を作ってやるべきだ。ちゃんとケア出来ないならSさんに譲渡した方かいい。彼女の幸せを考えるなら、そうしなさい」 日本人と違ってずいぶんハッキリ言う

          うちの黒き猫 #3 黒猫は米軍所属

          ネットで迷い猫の掲示板を見たが該当は無かった。 念の為、近所の動物病院に連れて行く。 健康チェックは勿論、この辺りの迷い猫なら病院で情報が得られるかも知れない。 動物病院の診察台の上で、剛毛の黒猫は凶暴だった。 先生やスタッフの人にシャーしながら鉤爪パンチを繰り出す。 おお、なんと野生的な…毛皮も熊っぽいし。 診察の結果、健康問題は無かったので一安心。 「実はこの子、迷い猫で数日前からうちにいるんですけど、何か情報はありませんか?」すると先生が、 「マイクロチップが入って

          うちの黒き猫 #3 黒猫は米軍所属

          うちの黒き猫 #2奇跡の猫

          黒猫、雌、成猫。 妄想が生み出したかのような猫の登場に少し狼狽える。 奇跡としか思えない。 黒猫はそのまま数時間寝続け、目を覚ますと大きく伸びをして布団から降りてきた。 首輪は無い。 目ヤニ、鼻水無し。 怪我や皮膚病も無くきれいだ。 人に慣れているようだし、迷い猫だろうか? よく見ると、変わった毛皮をしている。 短い剛毛がみっちり生えていて、真っ黒いタワシみたい。 黒光りする剛毛の下はグレイから白のグラデカラーでふわふわの毛が密集している。まるでフェルトだ。 毛密度が高過

          うちの黒き猫 #2奇跡の猫

          うちの黒き猫 #1 猫が来る家

          プチ・ペットロス、とでも言いましょうか。 とある事情で近所の黒猫を3か月預かって無事お帰しした後、ほっとすると同時に何か大事なものが欠けてしまったような寂しさがあった。 あの黒くて丸い四つ脚のかわいい生き物よ… もうここにはいないのに、物音がするとつい猫の姿を探してしまう。 そうだ。猫を飼おう、と決心した。 保護猫の里親募集サイトを見たり、知り合いのツテで保護活動をしている方を紹介してもらったのだが、その保護活動家は電話で1度話しただけで、私の家を見に来ると言う。 いきなり

          うちの黒き猫 #1 猫が来る家

          【UFO 遭遇体験】Close encounter 宇宙人の声

          最初に気付いたのは小学3年生頃だろうか。 変な飛び方をする飛行機を時々見ていた。 学校の帰り道や、公園で遊んでいる時、ふと空を見ると、白っぽいドットがいる。 ドットはすーっと移動したり、空中で停止もする。おはじきを弾くみたいに少しずつ進む事もあった。 「なんか変なの」と一瞬思うが、遊びや友達とのお喋りに戻って、すぐに忘れてしまう。 その「変な飛行機」について特に誰にも話さなかった。わざわざ人に言うほどの事じゃないと思っていた。 頭の悪い子供だったので、それ以上深く考える事な

          【UFO 遭遇体験】Close encounter 宇宙人の声

          黒猫のHanaちゃん #2

          猫に恋い焦がれ過ぎた結果、 脳内で生成した「エアねこ」をかわいがるという(どうかしている)技で自分を誤魔化してきたが、思いも寄らず本物の猫のお世話をする事になり嬉しかった。 うちで生活をし始めた黒猫Hanaちゃん。 餌もよく食べ、まるでずっとここに住んでいたかのように、すっかり寛いでいる。 座布団の上で伸びをして起き上がった時、Hanaちゃんの体からパラパラっと白い粒が紺色の布地にたくさん落ちた。 蚤の卵。 毛を掻き分けて見たら蚤だらけだった。 黒い毛色のせいで、気が付か

          黒猫のHanaちゃん #2

          黒猫のHanaちゃん #1

          数年前、とある事情で黒猫を3カ月程預かりお世話した。 元々大の猫好きなのに「飼う」という決断が出来ずにいた時だった。 まわりからも、そんなに猫が好きなら飼いなよ、と言われ続けていたが、 はたして自分は一生涯、猫を満足させて幸せに出来るのか、と考えると責任の重さにびびって、なかなか結婚を決断出来ない男みたいに腰が引けていた。 預かった黒猫はHanaちゃんという。 11歳のシニア猫で、丸顔がかわいい優しい猫。 出会いはある8月の朝。 掃き出し窓を開けた時にどこからか 「きゃっ

          黒猫のHanaちゃん #1

          ネパール実話怪談 #4 レカとアルジュンの話

          当事者、本人に直接聞いた実話 (名前は変更しています) レカとアルジュンの話 レカとアルジュンは地元の大学で出逢い大恋愛の末、駈け落ち婚を果たした。 二人はジャート(カースト)が異なるゆえに、双方の親族が結婚を許さなかったからだ。 アルジュンは高校教員、レカは小学校教員として、小さな借家で新生活を始めた。 やがてレカの弟妹が訪るようになり、彼らの助けでレカの両親は二人の結婚を受け入れ、実家に顔を出せるようになった。 しかし、アルジュンの親族は依然として二人の結婚を認める

          ネパール実話怪談 #4 レカとアルジュンの話

          ネパール実話怪談 #3 ラムチャンドラの話

          当事者、本人に直接聞いた実話 (名前は変更しています) ラムチャンドラの話 ラムチャンドラが学生だった頃の話。 友人の家に遊びに行った帰りのこと。 日が落ちて外は既に暗くなっていた。  当時フェワ湖沿いの道は舗装もされていず街灯も無かった。 昼間はツーリストで賑わうレイクサイドの通りも、しんとして真っ暗だ。 「ああ、しまった。明るいうちに帰ればよかった」  とラムチャンドラは後悔した。 ネパリーは概して視力が良い。 懐中電灯など無くても、真っ暗な道を歩くのに不便は無かっ

          ネパール実話怪談 #3 ラムチャンドラの話

          ネパール実話怪談 #2 アルン・バハドゥールの話

          当事者、本人に直接聞いた実話(名前は変更しています) アルン・バハドゥールの話 アルン・バハドゥールはグルカ兵退役後、ネパール中部の町ポカラに妻と大学生の長女を頭に5人の子供達と暮らしていた。 退役後はダムの管理局に務め、趣味のガーデニングを楽しんでいる。 ある晩、ベッドに入り寝ようとしていると、天井でガラガラ、バリバリと物凄い音がした。 何事かと外に出てみると大量の石ころが家の周りに落ちていた。 これはおかしいぞ。一体どういう事だ?と考えながら怖がる子供達をなだめて眠

          ネパール実話怪談 #2 アルン・バハドゥールの話

          ネパール実話怪談 #1 マヤ・デヴィの話

          当事者、本人に直接聞いた実話(名前は変更しています) マヤ・デヴィの話  ヴィクラムの祖母マヤ・デヴィがガウン(田舎)で暮らしていた娘時代の話し。 ある日、マヤ・デヴィは村の娘達数人と、家畜にやる草を刈りに出かけた。  「ドコ」と呼ばれる大きな背負い籠の紐を頭に掛け、草刈り釜を手に山の斜面に拡がる草原へ向かった。  腰の高さまである緑の中、楽しくお喋りしながら草を刈っていると、一人見知らぬ娘がいることに気付いた。マヤ・デヴィは 「あなたはどこから来たの?村は近くなの?」

          ネパール実話怪談 #1 マヤ・デヴィの話