ネパール実話怪談 #1 マヤ・デヴィの話
当事者、本人に直接聞いた実話(名前は変更しています)
マヤ・デヴィの話
ヴィクラムの祖母マヤ・デヴィがガウン(田舎)で暮らしていた娘時代の話し。
ある日、マヤ・デヴィは村の娘達数人と、家畜にやる草を刈りに出かけた。
「ドコ」と呼ばれる大きな背負い籠の紐を頭に掛け、草刈り釜を手に山の斜面に拡がる草原へ向かった。
腰の高さまである緑の中、楽しくお喋りしながら草を刈っていると、一人見知らぬ娘がいることに気付いた。マヤ・デヴィは
「あなたはどこから来たの?村は近くなの?」と、その見知らぬ娘に聞いたが、無言で草を刈り続けるばかりで何も答えなかった。
変な娘だな、と思いながらふと足元を見ると、その娘の足首から先が真逆を向いていた。
踵が前、つま先が後ろ向きについている。
キチャキンニだ。
それはネパールに伝わる幽霊キチャキンニだった。
恐怖で血の気が引いたが、平静を装いそのまま何も気付いていない振りをした。
キチャキンニの機嫌を損ねたら恐ろしい呪いが降りかかってしまう。
マヤ・デヴィは逃げ出したくなるのを堪えてキチャキンニの側から少しずつ、さりげなく距離を取った。
籠が山盛りになるまで黙々と草を刈り、仲間の娘達と帰路に着いた。
もし、キチャキンニが付いて来ていたらと考えると怖ろしくて、誰にも言えなかった。
なんとか無事に家に着き、ほーっとしたという。
今から80年前にマヤ・デヴィが体験した話でした。