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うちの黒き猫 #3 黒猫は米軍所属
ネットで迷い猫の掲示板を見たが該当は無かった。
念の為、近所の動物病院に連れて行く。
健康チェックは勿論、この辺りの迷い猫なら病院で情報が得られるかも知れない。
動物病院の診察台の上で、剛毛の黒猫は凶暴だった。
先生やスタッフの人にシャーしながら鉤爪パンチを繰り出す。
おお、なんと野生的な…毛皮も熊っぽいし。
診察の結果、健康問題は無かったので一安心。
「実はこの子、迷い猫で数日前からうちにいるんですけど、何か情報はありませんか?」すると先生が、
「マイクロチップが入ってるかもしれないから、見てみましょ」
首の後ろにバーコードリーダーのような器具を当てたら、反応した。
「あら、この子、米軍の猫だわ」
米軍?!
「そう。飼い主さんは、お宅のすぐ近くよ。米軍の人なんだけど…この猫ちゃんの事で前に色々あったのよ…」
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どういう事か話しを聞いた。
飼い主は夫婦揃って米軍関係者でお子さんもいるらしい。
猫数匹を多頭飼いしているのだが、この黒猫は他の猫全員と相性が悪く前にも家出したのだという。
その時は米軍ファミリー斜め向かいのSさん宅で保護をして、この病院に連れて来たそうだ。
やはり首輪は無かったのでSさんは野良猫だと思っていたが、今回と同様にマイクロチップで飼い主が判り、登録先の米軍の動物病院に連絡をした。
米軍の動物病院のドクターとこちらの先生は友人だった。
通常なら飼い主に連絡して引き渡すのだが、話が違った。
米軍ドクターが「飼い主に戻さない方がいい」と言うのだ。
「飼育環境が良くない。多頭飼いでストレスフルだから、きっとまた家出を繰り返す。あの飼い主には戻さない方がいい」と。
そこからが大変だった。