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【UFO】Close encounter 宇宙人の声

最初に気付いたのは小学3年生頃だろうか。
変な飛び方をする飛行機を時々見ていた。
学校の帰り道や、公園で遊んでいる時、ふと空を見ると、白っぽいドットがいる。

ドットはすーっと移動したり、空中で停止もする。おはじきを弾くみたいに少しずつ進む事もあった。
「なんか変なの」と一瞬思うが、遊びや友達とのお喋りに戻って、すぐに忘れてしまう。
その「変な飛行機」について特に誰にも話さなかった。わざわざ人に言うほどの事じゃないと思っていた。
頭の悪い子供だったので、それ以上深く考える事など無く「変な飛行機」という片付け方をしていた。

「変な飛行機」が日常の一部になって既に1年以上が過ぎていたある日、6歳年上の姉が帰宅するなり
「今日、テレビでUFOやる!絶対見るから!!」とかなり興奮している。
高校1年の姉もまた頭が悪かった。
姉のテンションにつられて私も「見る!!」と叫んでいた。

第1次オカルトブームの頃である。
テレビでUFOとか超能力の特集番組がたまに放送されていた。
「空飛ぶ円盤」から「UFO」に呼び名も変わり定着しつつあった。
空飛ぶ円盤、UFOはお釜のような形状のアダムスキー型しか知らなかった。
宇宙人もデカいタコとかイカみたいな姿だと。
当時はテレビや姉が持ち込む雑誌くらいしか情報源が無かった為、その程度の認識だった。
私の中でUFOや宇宙人はゴジラとか浦島太郎と同じカテゴリーに入っていた。

お待ちかねの番組が始まった。
前フリは今も昔もあまり変わらない。
大袈裟な効果音とコメンテーターやゲストの有名人が声をあげて怖がる画、アダムスキー型UFOの合成写真等を小間切れに見せ
「ついに衝撃の映像初公開!」みたいなナレーションからの…ハイ、CM。
もうこの時点で姉が騒いでうるさい。
番組が再開。
姉がようやく黙った。

番組内容はこれまで見たものより一歩進んでいた。
宇宙人はヒト形になり、UFOのフォルムも色々だ。
映像(今なら動画)もあった。
その中に私が時々見ている、白っぽいドットがジグザグ飛行している映像があった。
あれ?これって時々見かける点々じゃん(点々と名付けていた)

テレビ画面を眺めながら
「これ知ってる。たまに見るよね」と呟くと姉がすごい形相でこっちを向いた。
「そそそそれってUFOじゃん!!」

「いつ見たの?! どこで?! 何回?! どんな感じで?!」
何かにつけて、いつも私を小ばかにしている姉が、1つも否定する事なく私の話しを「うん、うん」と真顔で聞いている。
さっきまでとは別の種類の興奮状態に入ってしまったようだ。

それからの姉は、姉らしく対抗意識を燃やし、UFOを見つけようと日々空の観察に没頭していた。
そして、新しい情報を持ち帰った。
「UFOを呼ぶ呪文がある」
当時、日本中の子供がやったであろう
‘’ベントラー ベントラー‘’だ。

この「ベントラー ベントラー スペースピープル」というのはアメリカのUFO研究家ジョージ・ヴァン・タッセルが行っていた地球外生命体との交信に使う呼びかけの言葉で、宇宙友好協会という団体が日本に拡めたのが始まりらしい。

姉がその「UFOを呼ぶ呪文」を一体どこで仕入れてきたのか
「ベントラー ベントラー こちら第三惑星地球、宇宙の友よ来たれ」と勝手にアレンジされていた。
日本語?!
「怪しいな…」と思ったが、姉の言うことは信じなければならない。

夏の夕方。
姉が真剣な面持ちで言った。
「よし、やるぞ。」
いよいよUFOを呼ぶミッションが下された。
親も出かけているし、やるなら今日しかない。

社宅3階のベランダに出る。
視界を遮る高い建物は無く、眼下には低層の住宅街。
その先には土をならしただけで開発途中の宅地が拡がっている。
社宅は傾斜地の上にあるから眺めが良かった。

ベランダは割りと広く、横幅6メートルくらいあるが母親が観葉植物をやたら並べているせいで姉と並んで立てない。
仕方なく長いベランダの端と端に立った。

顔を見合わせて互いに頷くと、例の呪文を唱え始めた。
「ベントラー ベントラー!こちら第三惑星地球、宇宙の友よ来たれ!」
声に出して言うと小っ恥ずかしい。
馬鹿馬鹿しい気がしてきて、にやにやしていると
「声が小さい!真面目にやれ!」
司令官の命令である。キリッとせねば。
やっている内に、段々その気になってきた。

夕暮れの空に向かい、二人声を張って‘’ベントラー ベントラー‘’を唱え続けた。
もう本気である。
心から宇宙の友に呼びかけていた。

どれくらい時間が経ったのだろう、空が青みがかってきた時だった。
地平線辺りの上空東側と西側、更に視界の正面にあたる南側の三方向から、あのドットちゃんが3つ現れた。
「来たーー!!」 
しかも、3つ同時に。
姉と私は大興奮。

3つのドットはピッ、ピッとおはじきジグザグスタイルで飛行して視界の中心に向かっている。
3ドットたちはどんどん近づいていき、私達が見ている前方正面で合体すると静止した。
と次の瞬間、巨大な濃いオレンジ色の光りを放った。
「えええー!!」
予想を超えた状況に驚愕した。

目の前の光景をスクリーンに置き換えたとする。肉眼で見ているサイズ、見かけの大きさは、単独のドットが1.5センチくらい、オレンジ色の光りはやや縦長の10センチくらいに見えた。(距離と実際の物体サイズ計算は物理学者にお任せします)

巨大なオレンジ色の発光体はビカビカ、ギラギラした光りを放ったまま静止している。
私と姉は驚きのあまり呆然とその光りを見ているだけで頭が空っぽになっていた。

更に予想を上回る事が起きた。
突然、右の耳が掌を密着させてぐっと塞がれたみたいな感じになったかと思うと、耳の中に直接声が流れ込んできた。
男のような低音、抑揚のない早口で
 ‘’ゴニョゴニョゴニョゴニョ‘’ と何か言った。 聞いた事もない言語。何を言っているのかは解らない。
音楽用語でラジオボイスというのがあるが、それに似ている。
間違いなく「音」ではない「声」だった。

パッと姉を見ると姉も同時に私を見た。
目が合った瞬間、自分たちに同じ現象が起こったのを悟った。
ひゃー、とも、ひょーともつかない情けない悲鳴を上げて部屋に逃げ込んだ。

ベランダから1番離れている姉の部屋で手を取り合い誓った。
「もう、やめよう。UFOの事は忘れよう。」
こうして二人のシークレットミッションは終わった。

その後数日間はUFOにさらわれたらどうしよう、と怯えていたが別に何も起きず、この事は記憶倉庫の奥深くに封印された。

大人になってから思い出し、人にこの話しをしてみたが、与太話扱いされて誰一人信じてくれないので、また記憶倉庫にしまい込んでいた。

それから数十年が過ぎ、UFOや宇宙人については 「UFO?いるみたいだね」くらいの軽いスタンスで取り扱うようになっていた。
が、しかし。
いきなり記憶倉庫の扉が開くようなモノを見ることに…   つづく。

続きはいずれ、そのうちに、です。

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