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「壁に生えてる陸のイソギンチャク」と呼んでいた植物が、人の名前みたいだった話
「正確な名前は知らないし、わざわざ調べるほどでもないから、自分の中で勝手に名前を付けた」という経験はないだろうか。
私には今日まで、
「壁に生えてる陸のイソギンチャク」
と勝手に呼んでいた植物があった。
形状は生垣。
一面に細いピンクの花弁がにょもにょもと開いている。
その様子は、まさにイソギンチャク。
植物に詳しい方は、この時点で「あぁ、あれか」と思いつくんだろうなぁ。すごい。
歩いていると、たまーに見かけて、
「おっ、もうイソギンチャクの季節か...」
なんて、それで季節を感じられるほどには馴染んでいたのだけど。
まあ、わざわざ名前を調べなくても、別に生活に支障はないし、独自の呼び方があったのでそれで事足りていた。
が、人間生きていると、ふとした時に「知的好奇心」の方が勝つことがあるようで。
それまで一切そんな気は起きなかったのに、
「なんていう植物なんだろ...調べてみるか...」
と、道中突然に思ったわけである。
今は写真を撮るだけでその植物の名前を教えてくれる時代。
カシャっと撮れば、即座に対象を認識してくれる。
対象、植物と認識。
名前「トキワマンサク」
...え、だれ...?
なんかこれ、誤認識してない?
どこのどなたなの...
これ、マンサクさんちの生垣ってこと?
個人情報大丈夫?
これが、私の第一の感想だった。
まさか、この植物の名前ってことはないよね?
と、検索をかけてビックリ。
目の前にあるイソギンチャクの名前で間違いなかった。
「ま、マンサクじいちゃん...!!!」
とか、呼びたくなるようなネーミング。
ここまで人のような名前なら、「トキワマンサクさんが見つけたから、そういう名前がつけられている」とかなんだろう、と思って調べたら、全然違った。
トキワマンサク(常磐万作、学名:Loropetalum chinense)は、マンサク科の植物の一種。
いや、マンサク科ってなに!?
マンサクって、科名なんだ...
しかも、勝手に「万咲」かと思っていたら「万作」なのか。
この植物を発見したトキワマンサクさんは、存在しなかった。
私の頭の中で、『花咲か爺さん』ばりにイソギンチャクを咲かせていたおじいさんは、完全に空想の産物だということがわかった。
なお、wikiさん調べによると、基本種は薄黄色で、紅色なのは変種「ベニバナトキワマンサク」というらしい。
私が普段目にしているものは、後者だった。へぇえ。
いやはや、世の中はまだまだ知らないことで溢れているものだ。
毎日通っている道でも、案外自分の気に留まっていないだけで、見えなくなっている・知らないままになっているというものが、多いのかもしれない。
忘れっぽい私は、きっとこの花の名前も遠からず抜け落ちてしまうと思うが、たぶん「おじいちゃんぽい名前だった気がする」くらいは覚えていられると思う。
どうかその話をする相手が植物に詳しくて、この情報量だけで「トキワマンサク」に行き着いてくれる人であることを願うばかりだ。
追記
この記事を書いてから、もう少しで1ヶ月が経とうとしている。
通常の自分なら、この時点で花の名前なんてもうすっかり忘れているはずなのだが、この花についてはまだしっかりと覚えている。
当たり前といえば当たり前すぎるのだが、
やはり調べて記すというのは、記憶に残す過程で大事なんだな...と再認識させられた。
こういう、誰かにとっては当たり前な知識も、自分にとっての発見であるなら、この場を借りて、こうして記録していくのも面白いかもしれないな...と思った夜更けである。
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