「その他」の気概?
『「その他の外国文学」の翻訳者』の見本が出来てきました。
このタイトルをご覧になって、どういう内容の本なのか、おわかりいただけるでしょうか? そして「その他の外国文学」にあえてカッコが付いている意味に気づいた方はいらっしゃるでしょうか?
そのヒントは右の画像です。ネット書店「アマゾン」のジャンル分けで「文学・評論」部門を辿っていったものです。「日本文学」の下がいわゆる海外文学になるわけですが、「中国文学」から「ギリシャ・ラテン文学」まで具体的な国名・地域名が上がっているのは九つで、これら以外の国・地域はすべて「その他の外国文学」にまとめられてしまっています。
日本で翻訳が出版されている点数から考えて、このジャンル分けはやむを得ないと思いますが、それでも「その他」にまとめられた国・地域の言葉や文学、歴史、文化を学んでいる人にすればモヤモヤとしたものを感じるのではないでしょうか?
左の画像は、同じくネット書店「楽天ブックス」のジャンル分けです。なんと「外国の小説」でひとまとまりにされています。いくらなんでもこれは大雑把に過ぎるのではないか、という気もします。
ただネット書店の場合、リアル書店とは異なり、棚をつらつら眺めて装丁を楽しんだり、帯の惹句を熟読したり、といった行為はほとんどなく、書名や著者名で検索し、ダイレクトに目的の本に辿り着いたらカートに放り込む、というのが定番でしょうから、あまりジャンル分けにこだわっていないのかも知れません。
とはいえ、楽天ブックスのこのジャンル分けは潔いと言いますが、ネット書店としてのスタンスが垣間見えるものがありますね。
そういうネット書店に比べると、リアル書店が母体である紀伊國屋書店のオンラインストアはジャンル分けも充実しているように感じられます。アマゾンと似ているようでちょっと異なりますね。
「その他ヨーロッパ文学」とか「その他アジア文学」というのがありつつ、更にそれらからもこぼれるものが最後の「その他海外文学」なのでしょう。ここに分類されるのは一体どういった作品立ちなのでしょう。逆に興味が沸いてきます。
そして最後、一つだけ横長な画像は丸善&ジュンク堂書店のネット書店「honto」のジャンル分けです。
日本の他には「アジア」と「欧米」があるだけで、あとは「その他海外の小説・文学」になってしまいます。ちなみに、この「その他海外の小説・文学」をクリックすると「ラテンアメリカ」と「アフリカ」という分類が現われます。
「欧米」の下位ジャンルは、「ギリシア・ラテン」「英米」「ドイツ」「フランス」「スペイン」「イタリア」「ロシア」「その他ヨーロッパ」となり、「アジア」の下位ジャンルは「中国」「韓国・朝鮮」「その他アジア」です。
話は戻って『「その他の外国文学」の翻訳者』ですが、本書はウェブ連載がベースになっています。それを一冊にまとめ、斎藤真理子さんの序文を付したものです。本書をお手に取られた方、まずは斎藤さんの序文を一読してみてください。