同じ国の話です
《エクス・リブリス》の新刊『傷ついた世界の歩き方』を読みました。フランス人の著者がイランの国内をあちこちめぐった旅行記です。イランを訪問したのは2022年のことのようです。本当につい最近のイラン旅行記になります。
この時期というのは、日本でも報道されましたが、マフサ・アミニさんが死亡した事件の直後です。最初のうちは著者の記述にそこまでの緊張感は感じられますが、後半はやはり緊迫したイラン情勢がうかがわれます。
イランという国に詳しいわけではありませんが、少し前に平凡社新書『イラン』を読んでいたので、その時にはここまでの緊迫感、緊張感を感じなかったです。同書の刊行が2021年12月なので、マフサ・アミニ事件の前です。書かれている内容は更に前の時期を扱っているので、『傷ついた世界の歩き方』の時期よりも少しはのどかな雰囲気が漂っていたのかも知れません。
同じ《エクス・リブリス》では『スモモの木の啓示』が同じくイランが舞台の作品です。クルド人やゾロアスター教徒など、イランの多数派、主流派ではない人々がどれほど苦労しているかがうかがわれる物語です。
『傷ついた世界の歩き方』は外国人が数週間イランを巡った観察記でありますが、『スモモの木の啓示』はイランの中に暮らす人が体験し、味わった物語です。両書を併読すると、イランという国を両側から見ることができるのではないでしょうか。
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