カンボジアで必ず聞く 「ナガイナガイ」 は何なのか (それはベトナム語のrồi rồi...だった)
これは私のカンボジア生活 6年半の疑問でした。私の他にもカンボジア生活をしている人、旅行でちょっとローカルの人の会話に耳を傾けたことのある人は、「ナガイナガイ…」を聞いたことがあると思います。
1.カンボジア人が 「ナガイナガイナガイ」 と言っているのは何?
これ、プノンペンのイオンでトゥクトゥクを待っているときに初めて聞き、びっくりしました。どう聞いても、日本人の苗字「長井」あるいは「永井」に聞こえます。
でもそれをはっきりと認識し、日本人同士で確かめたのは在住2年を過ぎてからでした。旦那さんがカンボジア人のある方から、「ナガイナガイのナガイは、実はヌンハウイなんだって」と聞いて、ますますわからなくなりました。
2.どうして 「ヌンハウイ」 が 「ナガイ」 に聞こえるの?
さて、ナガイの正体がヌンハウイということから、その書き方を知ったのはさらに 2年後くらいでした。何かの時に、クメール語の先生に教えてもらったのです。
私はヌンは និង(and) だと思いこんでいたので、意味がわからなくなっていたのでした。ヌンはもっとカジュアルなクッション言葉だったと知り、それならむしろ意味はហើយ ハウイ(完了)なのかと思いました。
日本人に難解すぎるリエゾン
さらに音声面で理解するのに、 トータル6年半かかりました。図解してみました。
「ហ្នឹង ヌン」 と 「ហើយ ハウイ」の二語が繋がった時に、
1.ヌンの最後のンゴー④ងの g音が次の語頭につながる
2.ハウイの ⑤h子音ហが音声上消える
3.④gに直接次の母音⑥アウើが来る
→ヌンガイのような発音になるが、日本の子音母音パターンに合わせて日本人には 「ナガイ」 と聞こえる
いやースッキリしました!
3.ベトナム語のrồi rồi rồi...とナガイナガイナガイは同じ?
さて、私の中では ベトナム語の rồi = ហើយ ハウイ (完了の意味)です。これはクメール語を習い始めた時にすぐ気づきました。使い方もほぼ同じです。
ベトナム語とクメール語は、過去時制は結構曖昧で、過去を表す副詞を使えばそれだけでOK(「昨日」が入っていれば過去とみなされる)だったりします。
でも、この完了語句は結構大切で、「やったかやってないか」「終わったか終わってないか」を rồi = ហើយハウイ(あるいは chưa = នៅナウ) で表現することが多いな、と感じていました。
それを思うと、rồi rồi rồi...とナガイナガイナガイはシチュエーションを考えるとほぼ同じ感じがします。「了解」「はいはい、わかってるわかってる」みたいな感じですね。
4. 3が同じだとすると、「rồi=ハウイហើយ」 なのに、どうしてハウイハウイじゃないのか
クメール語のh音 (ហ)は早口になるとほとんど発音されないため、語感を保つためにヌンហ្នឹងを入れ、また意味的にもハウイហើយだけだと命令や催促っぽく聞こえて少しきついので、ヌンហ្នឹងをクッション言葉として入れたようです。
(そういう違いが、カンボジア人がベトナム人の話し方がきついと感じる原因の一つかもしれません)
韓国語と日本語の関係を少し思い起こさせました。かなり近い言語とは言っても外国語で、直訳だと微妙に意味が違ったりキツく感じたり昔の表現だったり、似ているからこそ難しい部分もありますね。