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現代人、濃い味に慣れすぎ「Cö shu Nie(コシュニエ)」

インターネッツによる情報過多

音楽の間口が広くなった今、各個人で摂取している音楽は昔と比較にならないほどバラエティに富んだものになり、簡単に新しいバンドを発掘できるようになった。提供する側…アーティストサイドの音楽性も年々交じり合い、洗練され、更に新しい音が生まれている。

結果、”斬新な音に慣れる→他の斬新なアーティストを聴く→慣れる”という音楽IQ矯正ギプスとでも言うべきループが発生しているのではないだろうか。

そんな、耳が刺激に慣れ過ぎた現代人の耳にもインパクトを残せるのがCö shu Nieというアニメ「東京喰種トーキョーグール:re」の主題歌で一躍有名になったバンドだ。

同アニメの主題歌を担当した「TK from 凛として時雨」とセットで好きな人が多い印象だが、やっている音楽は全然違うし、TKも多分ここまでやらない。

凄い事をしているのが”分かりやすい”

動き回るベースライン、荒れ狂う構成、そして変拍子…一般的に好まれるポピュラーミュージックでやらない要素の欲張りセットだ。そこそこ音楽を聴いている人間でも、ちょっとやりすぎじゃない?って思う複雑怪奇っぷりだ。人気アニメのタイアップによって、音楽好き以外の層にはこの曲はさぞ斬新に聴こえただろう。

”凄いことをしている”というのは簡単に伝わるが、受け入れられるかは話は別だ。しかし、東京グールの後もタイアップを獲得している所を見ると、少なくとも業界関係者はイケると判断しているようだ。

それは彼女達の曲にはある特徴があるからだと思う。

緩急×ピアノ×インスタントラーメン

日本人は基本的に変化が激しいメロディラインを好む傾向にある。まず、その点でこのバンドはやりすぎなくらい緩急がついたラインだ。「中村未来」のクリアな声質に美メロ…複雑な演奏と合わせてもキャッチー値は大幅なプラスに転じている。

加えて、多くの楽曲でピアノが鳴り響いている。エレキギター等と違ってアタック音が優しく、豊かな音がする非常に耳馴染みの良い楽器だ。ピアノが入ると途端にまろやかになり、聴きやすくなることに最近気づいた。「ゲスの極み乙女。」とかも同じ理由で耳馴染みが良くなっているのではないかと思います。

狙ってやっているのかは分からないが、このバンドの”やるな”と思った点が再生時間だ。音楽を聴くのにも体力が必要だと思う。情報量が増えれば増えるほど長時間聴くのが辛くなってくるが、実はこのバンドの楽曲の大半が”3分以内”に終わる。

メジャー1stアルバム「PURE」の12曲中9曲が”3分以下”という徹底ぶり。おかげで1曲単位であればサクっと聴ける。

このように、受け入れられる要素は多々あるのだ。このルールを守れば売れるのかと言えばそうではないと思うし、相当な音楽センスが無いと成り立たないだろう。

ロックの匂いが”しない”ロックバンド

一切感じない…というのは流石に言い過ぎだと思うが、それでも希薄だなと感じている。バンドサウンドなのに感じるこの違和感を探るために聴き返しながら、ふと思い浮かんだのはアニメや映画のサウンドトラックだった。そして、wikiを確認してみると、メインコンポーザーの中村未来ディズニー音楽の影響を受けているらしい。正解を当ててしまった自分の感性を褒めてあげたい。

劇伴は人をリズムに乗せることを目的としていない音楽だ。で、あるので冷静に聴くと変拍子の曲も珍しくもなく、場面に合っているかどうかだ。今思いついた有名どころだと”パイレーツオブカリビアン”や”ターミネーター”のメインテーマなんかはモロ変拍子だ。他にも沢山あるので探してみてほしい。

この影響がコシュニエの変拍子の嵐に繋がっているのだとしたら説明がつくし、アニメとの相性が抜群であることも納得。

Cö shu Nieを聴いた世代の”その後”

若者に限った話ではあるが本当に想像がつかない。

思春期にBOOWYを聴いた世代にとっては90年代の音楽はさぞ濃く映っただろうし、90年代の音楽で育った自分には9mmや凛として時雨のようなバンドは大事件だった。

Cö shu Nieレベルに刺激的な音楽に慣れた世代が衝撃を受けるような音楽性を持ち合わせたバンドが現れるのだろうか?もしかしたらリバイバルブームでシンプルなロックが流行るのかもしれないし、そもそもバンド音楽自体が無くなっているかもしれない。

全く想像がつかないが、その時まで今と変わらずに音楽が好きであれたらいいなぁと思ってます。



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