農業技術の話 風に強く土嚢を節約する不織布トンネル設置
八戸のピーマン露地栽培の場合、まだ寒い4月下旬から栽培スタートするために不織布トンネルを作り保温します。
不織布トンネルを作る際の資材は
・ダンポール
・不織布(製品名パスライト、アイホッカ等)
・土嚢袋
しかし春は風が強く、うまく不織布を張らないとせっかく張った不織布が風で剥がされてしまいます。
強風対策として不織布の端に
・土を乗せる
・土嚢を乗せる
のどちらかを行うことが多いです。
土を乗せる場合
・メリット
不織布の裾全体に土を乗せるため隙間ができず、風が中に入りづらい。
そのため強風に剥がされる可能性が低くなる。
資材コストがかからない
・デメリット
土を端全体に乗せる労力がかかる。
温度調整のため不織布の開け閉めがしづらい。
土嚢を乗せる場合
・メリット
土嚢をどかすことで不織布の開け閉めができる
土嚢を置く間隔を自分で調整できる(風の強さとの兼ね合い)
・デメリット
土嚢と土嚢の間には隙間ができるので設置の仕方によっては風が入る
個数が多い場合、土嚢袋のコスト、土嚢を作る労力、土嚢を運ぶ労力がかかる
春の気温は高い時は30℃近くになり、寒い日の最低気温は0℃近くになります。
気温が高く、日光がある場合、不織布トンネルの中の温度は40℃近くになるため不織布を開閉し温度調整する必要があります。
このため私はこれまで不織布の片側を土で固定、片側を土嚢を置いて開け閉めできるように設計しており、土嚢は30m畝で16個使っていました。
ところでピーマン栽培では支柱を立て、フラワーネットを張ります。
通常支柱を立てるのは不織布を撤去する前後なのですが、今年はとある試みをしまして、不織布を設置する前に支柱を立てました。
結果的にこのことが偶然にも今回の風に強い不織布トンネル設置という農業技術発見に繋がっております。
栽培期間中の労力分散を計るために、農閑期の前作終わりごろに次シーズンの畝、支柱たてまでやってしまおうと考えたのが発端です。
当初、この支柱がある状態でのダンポールと不織布トンネル設置はやりづらいのではないかとの懸念もありました。実際、ダンポールを刺す位置を支柱とずらすべきか、支柱と同じ位置にするべきか迷いましたが、支柱とダンポールの位置がずれていると定植作業時に邪魔になることが懸念されたため、同じ位置に刺すことにした結果、不織布を挟めて留めることができることに気づきました。
どうやったら、より強く不織布を挟むことができるか考えた結果がこの動画です。
温度調節のために裾を開ける際も、このように挟めることができるので便利です。何よりも良いのは、土嚢の数を30m畝あたり8個(両端に1個ずつと両端の両サイドに2個ずつ、中央の両サイドに2個、保健のために置いてます)しか置かなくて済むということです。開閉の時間も挟めた裾を持ち上げるか下ろすかだけなので、かなり短縮できます。
今回はピーマンの露地栽培での技術でしたが、同様に支柱を使う作物で不織布トンネルを使う場合は応用で来ると思いますのでご検討してみてください。
《追記》
今年瞬間最大風速28m/sと32m/sの台風並み暴風警報の日が2回ありました。さすがにその日は不織布トンネルもめちゃくちゃにされました。苗も風や動く不織布に叩かれてダメージを受けます。
この時周囲のピーマン農家の畑を見に行きましたが、風対策で両サイドに土を乗せている不織布トンネルは暴風に耐えていました。やはり暴風には不織布が動かないように全面の裾に土を乗せるしかないようです。でもこれをしてしまうと温度調節の開け閉めが大変です。暴風対策を取るか温度調節を取るか悩ましいです。今の時点では私は温度調節のしやすさを優先します。
そして更なる閃きが降りてきます。
不織布トンネルの上にフラワーネットを被せてしまえば、押さえになって強風でも捲られる可能性が少ないことがわかりました。
私が今回やっているのは、通常だと後にやる作業を前倒ししてやっているだけです。それが結果的に風対策に繋がるため、新しく作業が増えることもなく、無駄がありません。むしろ後の作業をやってしまっているため、後が楽になります。今年の経験では風速10m/sくらいの通常の強風程度なら、ここまでやってきた対策で十分通用すると思います。温度管理も楽です。もしかするとフラワーネット押さえを使えば暴風クラスにも耐えれるかもしれません。
試してはみたいですが、暴風はほんともう懲り懲りです。