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ピーマン栽培 2023の猛暑を振り返って2024はどうする

2023の農作業シーズン終盤戦からアテな惣菜すずめさんの惣菜屋事業を並行してやってきて、確定申告やら消費税申告やら事務作業こなしていたら、いつの間にかもう3月になろうとしている💦

今冬は雪が少ないので、周りでは早くも畑の耕運を始めていると聞いて、別に焦る必要もないのに何故か遅れてしまっている気がして焦りを感じてしまう今日この頃。

やっとnoteを書こうという気持ちの余裕が生まれたので、2023の反省とそれを踏まえた2024の対策について書いていきましょう。


暑すぎた2023

北東北に位置する八戸の夏は最高気温は例年であれば30℃に届かないこともしばしば。やませというオホーツク海高気圧からの冷風が吹く年は最高気温が25℃にも届かない冷夏になることもある。しかし2023は7月の後半から30℃超えを連発し9月前半まで35℃を超えることも珍しくなかった。全国天気予報を見ていると何故か八戸の気温が西日本より暑くなっていることもあり、冷涼な気候はどこへ行ってしまったのだろうかと嘆いていたのを思い出す。青森県は北海道と共に冷涼な気候を生かして夏野菜の産地となっている。それなのにここまで暑くなってしまうと北国のアドバンテージが無くなってしまうではないか。

ピーマンの生育適温は25〜30℃。30℃を超えると生育停滞が起こり35℃以上だと生育停止するらしい。

ピーマンは花が咲き、そこに実がなるのだが、暑すぎると花が着かなくなる。要するに実がならなくなるのである。植物は実を作るために大きなエネルギーを使うわけだが、実がならないのでエネルギーの使い所がなくなり、茎葉ばかりが茂るようになってしまった。生育のバランスが崩れてしまったのである。一度崩れたバランスを戻すことは自分の経験値では難しい。おそらく窒素を絞ってやる必要があるが、そのときに根域にどれだけの窒素量があるのかを測ることはできないので、それを露地栽培でコントロールするのは至難の業だなと思うのである。

また8月後半になると、八戸圏域のピーマン農家から赤ピーマンが大量に出荷されるようになった。通常赤ピーマンは収穫取り遅れの場合になったり、秋の涼しくなってきた頃に増えてくるものだ。先輩農家のところに話を聞きに行くと、ピーマンをもう少し大きくしてから取ろうと思っていると、大きくなる手前で赤くなってしまうのだとか。どうやら高温でピーマンの生育が狂ってしまったらしい。色々調べると高温障害で根の生育や樹勢低下が関係して早く赤くなってしまうのだとか。一時期市場に赤ピーマンがあふれ、緑ピーマンはものが無くて高値なのに、赤ピーマンは超安値で取引されるという異常事態になっていた。

雨も降らず

7月20日から8月10日にかけてまとまった雨は1日だけ。
8月20日から月末いっぱいまでも雨は全く降らず。
気温が30℃超える中、雨が全く降らない。
久しぶりにほんのわずかでも雨が降ると恵みの雨だーと歓喜したのを覚えている。

地温が常に高いし、水がないので肥料も吸えず日に日にピーマンの葉色が薄くなっていく。
さすがにこれはまずいと思い、タンクに水を入れて朝と夕に畑にばら撒くが焼け石に水であったろう。意味があったのかなかったのかよくわからない。やらないよりは良かったのかもしれないが、劇的に何かよくなったわけではない。

理想を言うと3日に一回、夕方日暮れどきに2時間くらい5mm〜10mmの雨が降ってくれると、地温も下がるし、次の日ピーマンが濡れてなくて収穫出荷が捗るし、すごい良いんだけど、近年の傾向として降らないときは10日くらい全く降らないし、降る時は1日で100mm降ったりと差が激しい。ちょうど良いと言う状態を望むことは贅沢なんだなーと自然相手の仕事をしていると常々感じるわけだ。

自分のミス

2023に自分がどんな準備や考えでピーマン栽培に臨んだのかというと…
まず基本的に自分は県や農協の施肥設計の標準量に対し減肥の方向で組み立てている。それは畑に無駄な肥料を投入し畑を肥料過多の状態にしたくないからという意識と肥料代を少しでもケチりたいからだ。だから肥料は全面散布ではなく、畝を作る列にしかまかない。有機質肥料やミネラルなど8種類くらいの肥料を混ぜて人力で撒いていくわけだが、やはり多少のまきむらが出て、計算通りにまけないことが多い。ほとんどは肥料を余してしまい、要するに設計時点で減肥している上に肥料を十分にまけていない状態なわけである。それでも自分の中ではその誤差も許容範囲でそれで良いと思っていた。生育の状態を見ながら追肥をしていけば肥料も無駄にならないし、対応できると考えたからだ。

しかし天気はそれを許さなかった。

この自分の計画の前提としてあるのは雨が定期的に降った上でのことだ。
2023は7月8月のピーマンの収穫の前半から最盛期に向かう時期に定期的な雨が全くなかった。それは追肥をしても肥料をピーマンが吸えないことを意味する。肥料は水分があって初めて根から吸収される。有機質肥料の場合は土中微生物に分解してもらう必要があるので、微生物の活性化のためにもある程度の水分が必要だ。しかし、雨は降らないし気温は高いので土はカラカラに乾いている。
ピーマンは猛暑の中で枯れずに耐えてはいたが、徐々に肥料欠乏の様子になり、樹勢も衰えていった。

こんな時は5日おきくらいに栄養分の葉面散布をすれば良いと言うことは頭ではわかっている。しかし取れないと言っても毎日数百キロは収穫するわけで、さらに他の作業の兼ね合いもあり葉面散布に時間を割くことができなかった。結局半月に一度の定期的な葉面散布しかできなかったのである。

地力が低く肥料の入りが薄い左の列の背丈が低く生育が悪い

雨がほとんど降らない間に生育が弱ったピーマンだが、雨が降らない間も少しでも肥料を吸ってほしいと追肥だけは定期的にしていた。それが実はあまり良くなかったのかもしれない。雨がないから吸収もされずに土の表面に肥料が蓄積していく状態になったわけだが、雨が降り始めると今度は一気にピーマンが養分を吸収しだしたのである。一度生育が止まったところから再生育が開始されると通常の新梢が伸びるのとはまた違う形態で茎を伸ばし始めた。もちろん初めての経験なので、その時はそれがどういう状態でどういう経過を辿るものなのか全くわからなかったが、結果的にその枝に花や実をつけるようになったのはシーズンの終盤だった。この現象を自分なりに分析すると、一度生育が止まるほど枯渇していたところに、降雨と共に一気に大量の肥料分を吸収できる状態になり常に高濃度の窒素成分に触れるので実をつけるよりも自分の体を大きくするためにエネルギーを使い生育バランスが栄養生長の方に傾いた状態になってしまったのだと思う。一度流れが途絶えたものが元の流れに戻るまでには月単位のタイムラグが発生することを経験した。それはすなわち収量において致命的な減収をもたらす結果になったのである。

結果2023はどうだったのか

40a約4000本のピーマンを栽培し収量は16400kg
平均反収は4100kg。散々たる結果だ。
2022は平均反収が5800kgだったので3割ほど減収したことになる。
地域の平均的な減収が2割くらいと聞くので自分のところはさらに大きなダメージを喰ったことになる。

肥料のやり方をミスったのは前述のとおりだが、その前段階の土づくりがまだまだ足りていないと思っている。自分が新規就農してから今年で5年目。緑肥を試行錯誤で使い始めてから4年目。次年度作付するエリアには必ず緑肥を植えるようにしているが、緑肥の生育にもばらつきがあることを認識している。

緑肥のひまわり他

緑肥の生育にばらつきがあるということは畑の中にも地力のばらつきがあることを示している。そしてその地力のばらつきは単年でどうにかできるものでないこともわかっている。毎年その場所を観察しながら少しずつ良くなっていることを感じているがまだまだ理想の状態には時間がかかりそうだ。でも間違いなく良くなっている。土中の有機物含有量が増え、微生物が活性化していけばもっと良いピーマンを、安定して、収量も増えるのだろう。

自分が参考にして勉強しながらやっているのは、カーボンファーミング、リジェネラタティブ農業といった類のものだ。完全な形で実践できているわけではないが、自分ができる範囲で植生を豊かにし、根域の微生物の多様性、活性化を図っている。余談だけどオーガニックとか自然栽培とか炭循農法だとか菌ちゃん農法だとかいろんなやり方が巷に溢れているが、手法は違えど最終的に目指している状態というのはみんな同じだと思うよ。

2024どうするか

2024も猛暑らしい。
雨はどうなるのだろうか?
大雨になるのか、雨乞いが必要になるのか。

気候環境はどうにもできないので自分が人為的にやれることのベストを尽くすしかない。

昨年の反省から今年は施肥設計を変えた。
まず元肥で減肥するのをやめ、一般的な指標通りの窒素量を全量有機質肥料で投入する区画を作ることにした。畝のマルチの中はある程度水分量が保たれる。そして有機肥料だと徐々に分解されて長期的に肥効をもたらしてくれると思うので、生育途中に多少の期間雨が降らなくても、肥料切れを起こすことは少ないだろうと考えたからだ。今までは地温が低い時期の肥効を期待して一部化成成分の窒素を使用していたが、だいぶ土づくりも進み、土のバランスも取れてきたので、有機肥料のみでどんな反応するのかを見てみようと思う。
そして元肥を増やす代わりに追肥を減らすことにした。今までは月に2回投入していたが、月に1回にして様子をみようと思う。有機質肥料だから量さえ間違えなければ切れることなくジワリと効いてくれると思う。まあ追肥だと調整ができるのでどちらにせよ問題ないでしょう。

去年の反省からの今年どうするか
こんな感じで施肥を中心にまとめてみた。
今年も青森県に特別栽培(節減対象農薬5割減、化学肥料5割減)で申請している。実際には節減対象農薬は種苗業者が苗作りの際に使う2剤のみで畑に定植してからは0、化成肥料も0の区画もある。うまくいけばまたひとつステップを踏める。

まあ反収7000kgは取らないと成功とは言えないんですがね。

最後にレアな生き物の写真を

クチブトカメムシ(益虫)がタバコガの幼虫を捕食
昆虫寄生菌に寄生されたタバコガ幼虫


カマキリモドキ(益虫)


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