ロボットも接客する時代に、人間はどのように「おもてなし」すべきか
東谷:最近なんぼーくん、よく海外行ってるよね。Twitterでのレポート見てるよ。
なんぼー:ありがとうございます。仕事で行くことが多いんですけどね。どちらかというと、ここ数年行けていなかっただけで、元々旅行は好きなんですよ。
東谷:そうなんだ。でも羨ましいよ〜。それで、行ってみてなにか面白かったことってある?
なんぼー:そうですね……。結構Twitterに載せちゃってますが、それ以外だと、サービスについて考える機会になったかもしれないな……!
東谷:やっぱり、日本の「お・も・て・な・し」はすごかったって話?
なんぼー:いや、そうでもないっていうか……。
東谷:ええ!どんな話?
なんぼー:まず、海外に行ってみて、そもそも「人間にしてほしいサービスってなんだっけ」って考えたんですよね。
東谷:ほう。
なんぼー:というのも、ストックホルムに行ったときに、コンビニがほとんどセルフレジだったんです。だけど、自分がそこまで英語を流暢に喋るわけではなかったこともあって、手間もかかるしサービスレベルとしては落ちているんだけど、気楽でありがたかったんですよね。
その時に、日本人ってレベルの高いサービスを求めがちだけど、丁寧であることだけを求めているわけではないよな、と思ったんです。それから、猫型配膳ロボのことを思い出して。
東谷:ああ!ガストに俺も会いに行ったよ。
なんぼー:会いに行ったんですか! 猫型配膳ロボって、なんかちゃんとしてなくても可愛いっていうか、ちゃんとしてない方が可愛いじゃないですか。
東谷:確かにね。なんかむしろめちゃくちゃ完璧だったら面白くないかもな〜
なんぼー:猫型配膳ロボって、サービスレベルは下がっているはずなのに、期待値が低いから、失敗が許容出来る状態になっているんですよね。期待値調整が上手っていうか。
東谷:ただのロボだと「やっぱロボットの接客、だめだな〜やっぱり人間だよ」ってなりそうだもんなあ。猫なのがうまいね。
なんぼー:そうなんです。なので、サービスのデザインってすごく面白いなと思って。もう1つ海外でサービスについて思いを馳せる経験をしたんです。ハワイに行ったときの話なんですけど……
東谷:ハワイ!!!いいねえ〜〜!!!
なんぼー:ハワイ最高でしたね。接客も日本とは違うスタイルでしたよ。もちろん、基本的に丁寧ではあるんですけど、ディナーを食べていた時に、ワインのペアリングをしてくれていたお兄さんが毎回サーブする時にワインの説明してから「enjoy!」って声をかけてくれたりしたんです。それがすごく気持ちよかったですね。
東谷:わかるわかる。海外の接客って、コミュニケーションが多いし、カジュアルで人と人との会話って感じするよね。
なんぼー:そうなんです。友達まで気安くはないけれど、少し親密な感じがある。距離感の近さの演出がうまく出来ているというか。逆に日本はすごくマニュアル的ですよね。「ここでは必ずこうします」というのが決まりきっているというか。
東谷:わかる。決まったサービスを提供する、って感じだよね。お客さんとサービス提供側の距離感も遠いし。だからこそ、ある程度安い宿でも全員のレベルが高いとも言えるんだけど。丁寧だけど味気ない感じがするんだよなあ。
なんぼー:海外のサービスは不定形だけど、心地よいですよね。もちろんチップの文化があるから、ってのは大きいとは思うんですが、それだけじゃない気もする。特別な思い出になるというか。インバウンドで海外のお客さんが入ってきた時には、そういったマニュアル的な接客のひとつ上のクオリティのコミュニケーションをしなければならないんじゃないかと思うんですよね……。
東谷:それこそマニュアル的なものならロボットの方が得意かもしれないしね。
なんぼー:そうですね。今後、そういう「どこを機械化して、どこに人間を置くか」という議論はサービス業で行われていくような感じがします。
東谷:なんぼーくんの言う通り、人間が接客すると期待値が上がるから、中途半端な接客なら、ロボットのほうがマシかもしれないしね。
なんぼー:かといって猫ロボットに感動のサービスはできない。
東谷:確かに。これからのサービスの設計ってたしかに面白いわ。
なんぼー:そうなんです。
東谷:人がやらなくていいサービスをロボットにさせられるようになったら、人に求めるサービスはむしろもっと高くなるかもね。その時に、求められるのは、完璧なクオリティのマニュアルをこなせる人材、じゃなくて、もっと別のものなのかもしれない。
なんぼー:猫型ロボットを配置したところが配膳なのも上手ですよね。実は配膳って、商品を厨房から受け取って、それを運んで、お客様に渡すという一連の動作の中で、最後の「お客様に渡す」というところにしか僕たち興味ないじゃないですか。
東谷:確かにね。
なんぼー:最後の商品説明くらいしか、満足度が変わるところなんてほとんどないし。
東谷:なるほど。配膳はロボットに変換しやすい仕事だったわけだ。
なんぼー:接客の期待値が低くて、満足度に影響度が低い仕事って結構沢山あると思うんです。例えば、オフィスの清掃も掃除に関してはクオリティを気にしても、接客を気にすることはないし。
東谷:むしろ要らない気遣いとかもありそうだよね。俺さ、毎回移動がスムーズになるようにタクシー配車しておくんだけど、そうしたら運転手さんが車の外でドアを開けてくれようと待ってくださってるんだよね。
なんぼー:わかります!寒いのに……。でも別に、ドアを開けるくらい、両手に大きな荷物でも持っていない限り自分でできますし、外で待っててくれなくても良いですよね。
東谷:むしろ、早く乗り込んで、早く出発したいわけだから、運転手さんには車の中にいてほしいよ。
なんぼー:ああ、確かに。丁寧なはずなのに結果的にUXが損なわれてますよね。目的から考えたら。まあそういう扱いが好きな人もいるのかもしれないですけど…
東谷:とにかく何も考えず丁寧にしてるサービスって結構ありそうだよなあ。
なんぼー:期待値の低いタスクはロボットが担当。人間への期待値が高まる分、その店のスタイルに合わせた接客を求めるとか、接客の設計はどんどん考え甲斐があるものになりそう。
東谷:サービスを受ける側としては面白い時代かもね。目を肥やすために、俺も海外行くか〜!
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