nanbokucho

産湯の記憶を保持しているものの、極めてフツーの人となった。 努力せずとも語学を覚えるという異能ぶりを見せつつも、努力しても鼻毛の伸びは止められないという、やはり、フツーの人。 近頃は歴史を中心とした読書、街散策、クルマ道楽にご執心。 好きな言葉は「食う寝る働く」。

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産湯の記憶を保持しているものの、極めてフツーの人となった。 努力せずとも語学を覚えるという異能ぶりを見せつつも、努力しても鼻毛の伸びは止められないという、やはり、フツーの人。 近頃は歴史を中心とした読書、街散策、クルマ道楽にご執心。 好きな言葉は「食う寝る働く」。

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「キ」へのこだわり 茨城ワンダーランド

茨城という地域は異界である。 独特のだっぺ言葉というものがある。しかし、言葉のちょっとした訛りやイントネーションの違いであれば、私も福島浜通りに縁があった人間ゆえに驚くに値しない。 そういう表層的な問題ではないのだ。 例えば、茨城のことを「イバラギ」と標準語や江戸弁で発音しよう。 これはかなり命の危険を冒さねばならない試みであることをまず最初に断っておく。 大阪の茨木市では、「イバラキ」を「イバラギ」と発音しても、たこ焼きにされるくらいで済むが、茨城では「イバラギ」というこ

    • 「昭和の教祖 安岡正篤」

      当節の政界でのご意見番やフィクサー的な存在を寡聞にして知らない。さて、本書は昭和の保守政界に影響を及ぼしていたとされる「政界のご意見番」こと安岡正篤の来歴やエピソードが、豊富な文献渉猟及び取材を基礎として多数掲載された名著。 かつて安岡の本を書店で多く見かけたことをふと思い出す。 安岡的なる人物が少なくとも、政界で仄聞しなくなったのは、時代ゆえであろうか。或いは、政治システムの変容によるものであろうか。 それらに対する解答は明瞭にはできないものの、安岡の様々な仕事(終戦の詔勅

      • 「ねぼけ人生」悲劇の喜劇者水木しげる

        水木氏の楽天的な生き方に驚嘆。あれだけ色々なことがあれば悲嘆にくれてもおかしくないとは思うのだが。当人も意識はしていなかったであろうが、悲劇を喜劇に変容させてしまう不思議な霊力をお持ちだったのだと思われる。そのことは彼の幼年期と無縁ではないのだか、その論拠となる事柄は本書にて。 筆致もまた水木の苦しいはずなのだけれど楽観している様、すなわち、悲劇を喜劇化させる彼の霊力をを見事に表している。あとがきは果たしてかの呉智英。ああ、私も南方で土○と交流したい。軽妙で読みやすい好著。

        • 世界史の中の六日間 なぜユダヤとキリストは屈託する?

          六日間戦争と称された第三次中東戦争の折にレバノンに駐在していた著者によるノンフィクションレポであるとともに、当時の中東情勢の仕組みを体験的な視点から演繹的に解き明かす良著で、私自身、近頃は時事に疎いのだけれども、基本的な枠組みは今も変わらないように思える。イギリスの二枚舌外交の禍根の深さを思い知らされるような気がする。 なお、六日間戦争に連続するものとして、エジプトのサダトが第四次中東戦争を引き起こし、それをエジプトイスラエルとの和平へのプロセスを戦略的に考案したという視座が

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        「キ」へのこだわり 茨城ワンダーランド

          松本清張 朝鮮を題材に取る

          実在した朝鮮の詩人林和を主人公とした松本清張の作品。清張は、そのときは些細とすら思えないような出来事が、強大なボタンの掛け違いとなって、後々に、当人や周囲、社会を翻弄させていく展開を記述するのが非常にうまい。 人間の主体的な決断を悲劇的な結果として裁断してしまい、決断した人物を翻弄して、逃げ道を与えない清張の筆致は人間精神や社会というものの襞をよく捉えているともいえるし、清張自身がどこかルサンチマン的で、人間の運命をそのように描いてしまうのかなとも思う。清張自身は非常に遅咲き

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          名前が概念を作る 東日本最大の前方後円墳とドイツ人Tom

          午後14時半頃稲城インターから中央道に乗る。 甲府盆地の曽根という場所の近くに地元の人しか来ていない高台の公園を見つけ、山を駆け下りると、山を含めて大小の古墳が軒を連ねる場所であった。うち、銚子山古墳は前方後円墳としては東日本一の規模を誇る。古来、富士から甲府盆地に至る道は要衝であったから、余程の権力者が蟠踞していたものと思われる。 銚子山古墳から眺める八ヶ岳をはじめとするアルプス山脈はまことに美しく、権力者が死という異界に巣立つことには相応しい景観のように思われた。 太

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          ロシア美女にお世話になっていても、ロシアを悪と決めちゃうのん?

          税務署の帰りに久方ぶりに地元の中華料理屋さんに入った時に、久しぶりにテレビジョンを観てみた。すでに我が家のリビングにはテレヴィジョンは撤去されている。 さて、映像では、民間個人からのウクライナへの無償の援助物資が届いている模様などが報道されていた。また、千円を寄付するとおにぎりがもらえるというボランティアなども紹介されていた。 まあ、いい宣伝機会にもなるし、そういうのはアリだとは思うけれど、あからさまな「ウクライナが善でロシアが悪」という構図はどうよと思ったのだ。不気味だ

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          【歴史豆知識】ありがたかった参勤交代 「お礼をする」ことの制度化

          参勤交代といえば、江戸時代に多大な費用を掛けて、諸国の大名が国元と江戸との間を往復しなければならないものだった。しかも、武士は名分を重んじるから、お金もないのに借金をしてまで、格式に見合った服装や行列をして、この一大行事を藩主在世中に行わなければならなかった。 うん、まあ、たしかにその通りなのだけれど、実際はバイトを雇ってまで格式にあった人数を揃えたともいうし、宿泊費用を浮かすために、行列の速度はものすごい速度であったともいわれている。大変ですな。 参勤交代の源流となるもの

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          静まりかえった流山の不思議 沈黙する新選組の霊

          落日の新選組が勝沼で大敗戦を喫して、這う這うの体で逃げてきたのが、流山。千葉県民の方ならわかるだろうし、関東では名前くらいは聞いたことがある程度に有名だと思う。近年は若年層を含めて人口増加も著しく、いわゆる旬の街であるともいえる。もともと水運が盛んで大いに繁栄していた街ではあったが、明治期あるあるで鉄道敷設に反対して以来、長らく流山は東京23区のほぼ隣でありながら、あか抜けない地味な印象が続いた時代が非常に長かった。物流の流れが水運から鉄道に移行したことを理解した人々は地域の

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          求めないときに私は与えられた

          横浜の駅前を降りると郵便局が見えました。普段はあまり歩かないところです。クルマのポスターが目に付いたので、近づいてみると、30スカイライン(日産の代表的な車種)の40周年のオリジナルフレーム切手セットの販売案内のポスターでした。 ここにおいて、大いに縁を感じたわけですが、さて、縁とはなんなのでしょう。 「求めよ、さらば与えられん」というアフォリズムについては、イエスの深い含蓄が込められているのだと思うのですが、私のように、30スカイラインといえば、シルエットフォーミュラ(市

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          (ご返信)「感染者数が下回ることを喜ばれない」ことについて

          maychan0512様がご執筆された という記事内にある そして、東京都の感染者数が今年初めて前週を下回ったそうです。これを単純に喜んでいいのか、どうか。だめですよね。 まったく喜べる話ではありません。数値が下がったのは、PCR検査を受けない人が多いからでしょう。検査を受けて陽性が判明してしまったら、周りの人に大迷惑をかけることになりますから。症状が出ていないなら感染していてもいいと考える人は多いと思います。もう、道行く人たちは普通に感染していると考えるほうがよいのかも

          (ご返信)「感染者数が下回ることを喜ばれない」ことについて

          もはや昭和はブームではない

          いったい昭和時代に生まれ育った世代が、いまさらのように昭和に懐かしみを覚え始めたのは、昭和30年代に焦点を当てた十年ほど前のことだと思う。「ALWAYS 三丁目の夕日」がヒットした頃である。実際、昭和は64年もあるし、人それぞれに印象に残る昭和はまったく異なる。私自身、昭和30年代にはまだ生まれてはいない。ただ、なんとなく懐かしみを感じてしまったことは覚えている。昭和50年代からの昭和については記憶もあるので、昭和30年代といえば、その20年前のことである。その間、高度経済成

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          星新一作品感想「はじまり」「くさび」「はい」

          デニーズからスマホ入力で書いています(笑) 写真は原宿の紅茶の美味しい喫茶店(♪)ですが(笑) 面白おかしくて読みやすいショートショートを多数書き上げながら、星新一作品を包括的に検討するという試みは極めて少なかったように思えます。 この度、浅羽通明氏がこの数少ない試みに挑みました。星氏の恐るべき予見力はある程度当然のこととして私たちにも了解できるものの、星新一は実は「アレ」だったのではないかということや、星新一の作品に小説さが感じられない理由などが書かれており、読了してい

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          副作用自慢をする残酷な大衆 下降期における受容と批判

          岩槻城址公園(埼玉県)脇にある1976年創業の駄菓子屋が今月末で閉業する。もう時代は変わったのだそうだ。若いときは昼夜を問わず働いたけれども、今は景況も良くないし、子供たちが可愛くて仕方がないけれども、例えば、「一人一個って言ったでしょ!」といった親の叱り方一つに対してさえ、節目を感じてしまう老婆であった。対する旦那さんは自販機の金を回収し、こちらはいきいきとして快活そうだし、たんまりと溜まった小銭をレジの中に無骨に収める。対称的であり、印象的な光景である。 私は大げさにい

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          三島由紀夫と司馬遼太郎 なんのなんの、まだ令和の今でも彼らは蠢いている

          成田空港と同調圧力を書いてみたあと、三島由紀夫のことが思い出されたけれども、遊び惚けた旅に行っていたので、しばらく放置していた(笑)しかし不思議なことに、浅羽・星・松本健一・三島・司馬 パンの耳だけで生活している私より(笑)に記した通り、新興ブルジョワ(いまどき使います?笑)の象徴のようなフタコ(地元の人はあまりニコタマとはいいません)にあるリニューアルオープンしたての文教堂で面白い本を発見した。これにより、また積読が増えてしまったわけだが、今はさておこう。本を盛んに買うのは

          三島由紀夫と司馬遼太郎 なんのなんの、まだ令和の今でも彼らは蠢いている

          浅羽・星・松本健一・三島・司馬 パンの耳だけで生活している私より(笑)

          人生にもしもがあるとすれば、浅羽通明さんの著書と出会わなければ、私は大学に行っていなかったかもしれないし、行っていたとしても、割合とフツーの学生になっていたかもしれません(笑) 面白いもので浅羽氏とは時折、セミナーやら古本屋やらで対面する機会を得ることができています。そんな浅羽氏から久方ぶりに新刊が出るというので、二子玉川というブルジョワ感満載な街の本屋さんに行ってきたのですが、発売前日のようで、おそらく、取次経由で書店には届いているのでしょう。ただ、私はアマゾンプライム会

          浅羽・星・松本健一・三島・司馬 パンの耳だけで生活している私より(笑)