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41歳2児の母、いざ、花嫁修行せん!

花嫁修行で料理教室に通う。
そういうのに、憧れていた。結婚前にお料理教室に通って、料理の基礎からさまざまなレシピを学んで、これからつくる大切な家族のために腕を磨く。
それ、楽し過ぎやせんか?

お料理教室で料理を学ぶ。
そういえばそれは、諦めることに慣れていたわたしが、やりたいと思っていたことのひとつ。

1. ジョブズなぶちょーの話

noteをはじめる少し前、仕事上のストレスに押し潰されそうになりながら、闇の中でもがいていた時のこと。
息子の中学受験伴走のはじめの一歩として、某私立中学校の学校説明会に参加した。

息子にとってもわたしにとっても、はじめての学校説明会。
偏差値がどうとか、息子の成績がどうとか、そういう知識ゼロで、心の赴くままに気になる学校をいくつか選んで見て回る、そんな気楽な四年生の受験伴走の第一歩は慶應義塾普通部だった。

ほんっとうに初心者すぎてまず悩んだのは、服装。
わかってます。どうでもいいんでしょう。Tシャツにジーンズとサンダルだって良いんでしょう。
でもなんだかドキドキしてしまって、緊張というよりは期待や希望という部分が大きかったかな。服装だけでもいつもよりキチンとすることで、自分の中にあるなんだかキラキラしたものに釣り合わせようとした。

息子には普段着だけどラフすぎないように、GUで購入した新しいTシャツとチノパン。
私は突然の対面ミーティング用に購入してあった新品のジャケットを羽織り、3センチヒールの低いパンプスを履いて、期待に胸を膨らませ家を出た。
コツコツとヒールがなる音で、背筋が伸びる。
のは初めだけだった。

普段PCの前に座りっぱなし。家からほとんど出ずに、たまに出かける時もスニーカーしか履かない引きこもりが、パンプスなんかいきなり履いたらどうなるか。
絶対あかん。

案の定、学校に着く前に靴擦れ発生。在宅勤務で足の皮が弱っていた。
なんでこんな靴履いてきたんや。
軽率すぎて息子にも言えず、ひとり足の痛みに堪えながら学校へ向かった。

慶應普通部は全体的に緑が多くて、校舎もとても素敵。なんというか、こういうのを荘厳な雰囲気と表現するのか。ようわからんけど。
SPY×FAMILYのイーデン校さながらの雰囲気を感じた。

めっちゃ素敵やなぁ。なんて息子につぶやく。
ノットエレガント。そんな語彙力しかない自分が恥ずかしくなる。
イーデン校の雰囲気にやられそうになりながら、会場の席についた。

まずは部長からご挨拶。慶應普通部では、学校長ではなく普通部の部長、と呼ぶらしい。部長といえば、ホタルノヒカリのぶちょーしか思い浮かばないわたし。

ぶちょー、いや、部長はまるで、スティーブ・ジョブズのように、手に持ったリモコンで器用にスライドを進めながら話し始めた。

「皆さん、夏休みが終わってこんなことを考えているんじゃないですか?」

そうすると前方のスクリーンにこんな文字が。
【早く夏休みにならないかなぁ】

「もしくは、こんなこと?」
【早く日曜日になってほしいなぁ】

「じゃぁ、今は?」
【今】

ドッキーン!
息子のために来た学校説明会のはずが、突然自分ごとに変わった。

えっ、今ですか?

「今は楽しくないんですか?」

え?それは、楽しくない、です。ていうかつらいし。

戸惑うわたしにジョブズは畳みかけるように問いかける。(わたしには問いかけていない。)

「今は楽しくなくて、じゃぁずっと日曜日が続けばいいの?」

ええ、そうですよ。毎日が土日だったらいいのに。週休7日になればいいのにと思ってすごしていますよ。慢性サザエさん症候群ですよ。

なんならわたしは長年、正月休みを楽しみに1年を消化している。

「今が楽しくないんだったら、じゃぁずっと先のことばかり考え続けるの?
今、じゃなくて、ずっとずっと、先のこと?」

がががーん。
ずっとずっと先になったら、わたし、死んじまうよ、ぶちょー。

これらの問いかけはもちろん、説明会に集まった児童たちに対して投げかけられたもの。
なのに、他の誰でもない、わたしの心にクリティカルヒットした。

じわりじわり。
うかつにも涙が込み上げてきた。ここで親が泣いてたら明らかにおかしい。おかしすぎるから必死でこらえた。暑かったから汗を拭うふりして、涙もチョンチョン拭き取った。

ほんとうに大真面目に、次の休みの日を希望に生きていた。それがあたりまえで、それが普通の世界を生きてきた。
何なら近頃は、金曜の夜ですら「ハナキンとかいうけど、土日なんて一瞬で過ぎ去って、日曜の夜はブルーなんやから実際は2日もないやん。そしたらまた5日始まるやん。チッ」なんて思いで缶ビール開けてた。ぷしゅっ。

まだ始まってもない翌週へのブルーな気持ちをハナキンの夜に前どりしちゃうって、どういうこと。

思ってもみない場所で、病みきったタイミングで、受験生に投げかけられたぶちょーの話が、心の真ん中ぶっ刺さってきて、あたりまえの沼が崩壊した。
これは、どげんかせんといかんのやないか。帰宅してから悶々と考え始めた。

そんなこともあって、9月いっぱいはなんとか働いて、年内は休業することにした。

2. いざ、花嫁修行せん!

お正月休みを楽しみに日々を消化していた人間が、いろいろな本を読み、自分の中にあるものをnoteに吐き出し、気持ちが揺れ動くものに触れて過ごしている。
思ってたのと違って、これがなかなかに、忙しい。
あっという間に1ヶ月がすぎた。

ちょっと、時が過ぎるのが早すぎて困る。
「ちょっと待ってよ」
大黒摩季のチョットが、頭の中で鳴り響いてる。お正月までの期間を無の境地で消化してた自分、まじでバッキャロー。人生無駄にする気かっての。

最近は洗濯物もプロ主婦並みにこなすし、片手間で年末の大掃除にも手をつけ始めた。
10月中に年末の大掃除が始まるという珍事に、夫も驚き大喜びしている。
「いいねぇ!」なんて凄い笑顔でリアクションしていたから、わたしには掃除部門での伸び代が相当あるようで、なんか得した。
これは夫婦円満のための小道具としてうまく使おう。

主婦の過ごし方がわかってきて余裕も出てきて、こないだゆったりとInstagramを眺めていたら、ひときわ光る、美しすぎるリゾットの写真が目に入った。
明らかに米の状態がおいしいやつ。これぞ、わたしが求めていたリゾットな写真は、料理家SHIORIさんの投稿だった。

SHIORIさんのことは半年ほど前に姉に教えてもらって、素敵だなと思っていた。オンライン料理教室をされているらしく、いいなぁと思ったけれど、やっぱり忙しくて。
お料理教室に通うわたしの夢、いつまでも叶いそうにないな。と、また時間がないことを言い訳にして、アカウントフォローだけして記憶のかなたに追いやっていた。

突然現れたリゾットの投稿に釘付けになり、スクロールしてみる。おいしそうすぎる、2種類のリゾットと、柿の生ハムサラダ。
なんちゅうツボなリゾットや。しかも柿に生ハム合わせるて。天才か。
わたしもこれをつくりたい!と思った。

キャプションの「只今49期生募集中」の文字が目に留まる。
そして思い出した。料理教室で料理を学ぶのが夢だったこと。

今や。今しかない。
その手で、SHIORIさんのお料理教室49期生に申し込んだ。

憧れの、はじめての、お料理教室へ。
脱公認会計士、41歳2児の母、いざ花嫁修行せん!
大掃除しながらお料理勉強させてもらう、そんな年末の花嫁修行が始まる。

その時ちょうど、家にある柿を何かしら料理に使いたくて、どう使おうかずっと考えていた。
柿の白和え?バルサミコで柿サラダ?「柿、柿、柿。他においしい柿のたべかた誰かしらんかぇ〜」と検索するも、これと思えるものに出会えずにいた。
その間、追熟を許し続けて、ひとつは勝手に無添加完熟柿ゼリーに変化している。
もう、これ以上は、待てそうにないな。
「諦めて朝ごはんに出すか。」

そんなとき、突然インスタサーフィン中にウェーブに乗ってやってきた、柿に生ハムというアイデア。
生ハムにはいちじくを合わせることが多かったけど、柿は思い浮かばなかった。
生ハムメロン、生ハムいちじく、生ハム柿。絶対、合いそうな気がする。

SHIORIさん、すごい。

夕食のメニューに生ハム柿をドンと出してみたら、夫にも息子にも大好評だった。
これからおいしいごはん増えるで。と期待させておいた。
先に自分でハードル上げまくるタイプなのだ。

3. はじめてのひとしな

11月1日、晴れてSHIORIさんのお料理教室の第49期生となった。

生徒はまさかの、過去のレッスン動画見放題という出血大サービスすぎることになっていて、驚き。早速、1番気になっていたあのリゾットの動画を見てみてみた。
「最高すぎる。これは、やばい。楽しすぎる。」
動画見ながら、ひとりごとがとまらなかった。
興奮。楽しい。おいしそう。

これまでも何度かクックパッドのリゾットを作ったことはあったけど、本格的なリゾットの作りかたが新鮮でおもしろくて、ぐいぐい引き込まれた。
材料、作り方、調理器具はどういうタイプを選ぶのがいいか、などなど、すべての結論に、なぜそうなのかという理由を説明してくれるから、すっと頭に入ってくる。
ときおり入ってくる旦那さんの合いの手、愛の手、つぶやきと、SHIORIさんの返しもまた好き。

記念すべきひとしな目は、このキノコのクリームリゾットに決定。
浮き足だった気持ちでスーパーにキノコを買いに出かけて、もう一度、お料理教室の動画を再生しながら一緒に作ってみた。

作りながらもう一度教えてもらえるから、新しい知識が脳みそにビビビビーって深く伝達されて、自分のものになっていく。
忘れっぽくて、人見知りで出不精なわたしに、めちゃくちゃフィットするお料理教室やん。

そしてまた、きのこのクリームリゾット、絶品でござる。
きのこの使い方がぐぐぐぐーんと広がった。

え、まだ見たことのないレッスン動画が、48回分あるってこと?!
もう、鼻血でそう。
好きなことをやるって、こんな感じなんやね。わくわくが止まらんわ。
わくわくって言葉嫌いやったけど。
わくわくってなんやねんって思っていたけど。
自分がわくわく出来てなかったからね。

この先に、何か新しい世界が広がっているのか、そんなものあるのかないのかなんて、今の時点ではわからない。好きを仕事にするなんて、どう考えても難しそうやし無理そうやし、諦めそうになるくらいその道は果てしなく遠く感じる。
でも、これまで20年好きでもない会計士やってきて、なんとなく形になってきたんだから、これからの20年好きなことやり続けたらそれはホンモノに変わるはず。

何も確かなものは見えないけれど、今はだたやってみよう。
心がYES!って答えることを。
だってそれが人生や。たぶん。

きっと、きっと、今のすべての行動が、あたらしい世界をわたしのもとに連れてきてくれると信じて、これからわたしは花嫁修行に勤しむのです。

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