4 実音で吹く
G管の笛を使って、ト音記号の五線譜を見て、笛の方もドレミと思って吹いているのに、本当のドレミ、絶対ドレミが鳴っていない!これは、先ほども述べたように、G管の笛は常にC管よりも3音半高い相対ドレミで吹いているからなのです。それでは、このG管では実音を吹けないのか?
吹けます。先程から、このG管の笛は下から指を開けていけば、ドレミファソラシドと鳴ると言っているのは、相対ドレミで読んでいるからで、そうではなく、これを絶対ドレミでソラシドレミファ#ソと読むと実音吹きになります。しかしこれは大変なことです。下から順にドレミファと思っていたら、そうじゃなくてソラシドに代わると言われれば、覚えた運指は使えずに新たに覚える必要があるのですから。
実際には、このG管サイズの笛はケーナがそうですが、運指は実音吹きのソラシドレミファ#で吹きます。リコーダーのアルト管(F管)も、下からファソラシ♭ドレミと覚えます。ティンホイッスル(D管)も下からレミファ#ソラシド#と覚えます。こうして実音で吹くと楽譜の音高通りに鳴ります。この時の笛は実音管と呼ばれます。管の長さが変われば、運指が変わる。これはかなりの努力が必要です。
―閑話ー
実音楽器と移調楽器
先述のケーナ、リコーダーアルト管、ティンホイッスルは、もともと相対ドレミ吹きの移調楽器なのです。下から閉じた指を開けていけばどれも相対ドレミで、ドレミファソラシと鳴ります。ケーナはG(ト)調音階、リコーダーアルト管はF(ヘ)調音階、ティンホイッスルはD(ニ)調音階です。
笛製作者は、移調楽器として相対ドレミ吹きに作るのですが、楽器演奏者は新たな運指を覚える努力をしてでも、実音で吹く方が都合がよいと考えているのだと思います。
また、ケーナは一番上の指穴のファ#をファにするために穴を小さくするカバーをつけたりすることがありますが、これはG(ト)調音階ではなく、C(ハ)調音階に変えているのです。
カバーすれば実音楽器。カバーを外せば移調楽器。1本の笛が実音楽器にも移調楽器にもなるのです。