No English No Future
【英語の動詞には現在形、過去形はありますが、未来を表わすためのはっきりとした形はありません】
はじめてそれを本で読んだ時は、たしか――英語を本格的に勉強し始めた20歳を過ぎてからのことでした。
目からうろこというか、灯台下暗しと云いますか……なんとも言えない腑に落ちた感覚を、私は今でも昨日のことのようにおぼえています。
そうなんです、あらためて考えてみると、じつは英語の動詞には未来形がないんですよ。
そのため、英語で未来の時間を表現するためには、必然的に助動詞などの他の表現を借りてくることになります。
さて受験英語では、この表現とこの表現は書き換え可能、などパズル的要素がかなり高い教え方をされたことでしょう。
例えば、未来表現『will』は『be going to...』をそっくりそのまま入れ替えても同じですよ〜、だとか。
近い予定だったら、進行形『~ing』も未来を表しますよ〜とか。
正直、なんのこっちゃ……という気持ちでした。
「カタチがちがうのに、気持ちもそっくりそのままのワケがないじゃないか!」と学生ながらに不満をあらわにしていたと思います。
ななびは、怒っていました(笑)
ですが学んでいくにつれ、実は一つ一つの言い回しにおいて、少しずつ話し手の気持ちは異なることが分かってきました。
今回は英語の未来表現にスポットをあて、それぞれの比較を交えながら、シンプルに説明していきたいと思います。
『英語は並べる言葉』だと私はいつも言っていますが、それと同じくらい、『形がちがえば、意味はちがう』のも英語の大きな特徴のひとつです。
「そんな細かいこと特に気にしなくたって、通じればいいよ!」と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫。
読めば読むほど英語という言葉に親しみが湧き「もっと言葉を大切に使いたいなあ」と思うようになるでしょうし、あなたの細やかな英語力に、きっと英語を母国語としている人達も驚くようになります。
それでは、今回も楽しんで学んでいきましょう。
【もともと英語の動詞には未来形がない】
みなさんは学校で英語を習ったとき、「不思議だなあ」と思いませんでしたか。
「どうして、英語の動詞には未来形はないのだろう?」と。
たとえば、『have』や『had』、『study』や『studied』のペアを見てみても、現在形と過去形はあるのに、未来を表わす決まった形はないですよね。
私は言語学者でもないですし、人類文化学者でもないので、この話におけるみなさんの何故?には、残念ですがはっきりとは答えられません。
ですが、超個人的な考えを言わせていただけるのなら、次のようになります。
過去に起こったこと、今まさに現在に起こっている物事は、事実だったり観察が可能で、しっかりとした形があります。
一方、未来の出来事というのは人の想像だったり、個人の予想、予測だったりするわけで、事実でもないし確定的に起こるかどうかも分からないですよね。
単なる語呂合わせに聞こえるかもしれませんが、英語の動詞に『未来形』という決まった形がないのは、先のことは人にとって、未来永劫『決まっていないもの』という感覚があるからなのかなあと思います。
次のsectionからは、実際に未来を表現するために必要な道具を一つ一つ紹介していきます。
『will(意志)』を借りてくる話し手の気持ち
『will』という助動詞を使って未来を表現するのは、一番ポピュラーな方法なので、みなさんお手のものだと思います。
きっと中学校でも、未来を表現するときは『助動詞"will"+動詞の原形』なんて習った覚えがあることでしょう。
しかし、もしかすると皆さんは『will』という言葉を、動詞の前に挟み込めば未来を表わすただの記号、として扱っていませんか。
使い慣れているからこそ、よく分からない、ということは往々にしてあります。
ここでは、何故話し手が他の未来表現でなく『will』を借りてきたのか、もう少し詳しくお話ししていきましょう。
もともと『will』という単語には、名詞で『意志』という意味があります。
なので『will』を使って未来をあらわす場合、どうしても話し手の個人的な意志や確信が混ざってくるのです。
そのため必然と、主観的な響きになってきます。
例をあげましょう。
①He will be a well-known doctor.
彼は(私の中では)有名な医者になるよ。(確信、予測)
②I will have a party tonight.
今夜(絶対)パーティを開くんだ。(意志)
③It will rain tomorrow.
明日は雨だよ。(そうじゃなかったら、予想外だな。)(確信、予測)
④I will help you with your assignment.
きみの課題(本気で)手伝うからね。(意志)
*〜なりそう、しそう(確信) 〜するよ(意志)
未来表現は基本的に確定していないもの、という話はすでにしましたね。
そう、これら①〜④の出来事というのは、話し手の心の中で繰り広げられているのです。
あらためてもう一度上の文章を読んでみると、確かに、ずいぶん主観的に聞こえてこないですか。
未来を表現するときに『will』を使うのは、話し手の『確信や予測』それから『意志』というものが、結果的に未来を表現してしまうからなんですね。
本当に極端な話をすれば、『will』使った未来表現は『話し手の勝手な妄想』でもOKということです。
①の例では『彼は有名な医者になるだろう』と言っていますが、そこに確かな根拠があってもなくても構いません。
周りからみて、医者になる才能なんてなさそうでも、全然勉強しない人間でも、いつも鼻水が垂れていても『話し手が強い確信をもってそう思っていれさえすれば、それでいい』という感覚が『will』には付き纏うんですよ。
②の例では『今夜パーティーを開くんだ』と言っていますが、もし私が話し手にそう言われたとしたら、『出来る出来ないとかは関係なく、とりあえず今夜パーティーを開く意志は固いのね』と思います。
③では、誰がなんと言おうが、話し手は明日雨だと思っていますし、④では確固たる決意で友達の課題を手伝う意志が垣間見え、宣言のように聞こえますね。
ここまでの話をまとめましょう。
未来の出来事を話すとき、助動詞『will』を借りてくると『〜なりそう、しそう(確信)』、『〜するよ(意志)』など、話し手の主観的な目線から語られた未来を表現することが出来ます。
【『I will』と『I’ll』を使い分ける英語話者】
話が少しずれますが、実はネイティブスピーカーは『I will...』と『I'll...』を使い分けています。
早速並べてみて、そのニュアンスの違いを見てみましょう。
①I will come down to answer the phone.
俺が電話取るんだから。(意志)
②I'll come down to answer the phone.
俺が電話取ろうか。(思いつき)
例えば、私なら①番ではこのような状況を想像します。
あなたの部屋は二階にあって、ベッドの上でごろごろしています。
あなたの気になってる女のコが帰り際に「今日の夜電話かけるね」と言ってきました。
あなたはそれを心待ちにしているとしましょう。
突然電話が鳴り、飛び起きるあなた。
「マズイ……このままでは階下にいる母親に電話が取られてしまう。」
焦ったあなたは、大声で言います。
あなた『母さん、取らなくっていいよ!俺が電話取るんだから!』
(英訳 "I WILL come down to answer the phone!")
母『ええっ!?なんで?』
あなた『なんでも!!!(ヤケクソ)』
こんなふうに「他の誰でもない、俺がやるんだ!」と話し手の意志を感じますね。
これが、『will』の省略なしバージョンの時の話し手のきもちです。
では②の省略バージョンはどんな状況でしょうか、ちょっと想像してみてください。
①と同じで、あなたは二階の部屋でくつろいでいます。
電話が鳴っているのに、どういうわけか一階にいる母親は応答しようとしません。
あなた「母さん!?電話鳴ってるよ!」
母「今ちょっとお料理してて、手が離せないの!どうしよう。」
あなた「そうなの?じゃあ俺が電話とろうか!」
(英訳 "I'll come down to answer the phone!")
母「ありがとう。お願いね〜。」
こんな風に①とは違って、力強い意志ではなく、思いつきでカチッと行動のスイッチが入るような感じがします。
大きな違いではないですが、このちょっとした違いを知るだけで、あなたの英語でのコミュニケーション能力は数倍に跳ね上がります。
このシリーズを通して読んだとき、『will』を『be going to』で書き換え可能ですだなんて、口が裂けても言えない人になって貰いますから、覚悟しておいてください(笑)
それではまた、次回『未来の英語にはカタチがない?②』までのお楽しみ☻
See you very soon! またね!
―――ななびのちっちゃなあとがき―――
新シリーズ『未来編』を始めてみました。
現在形、過去形と順序良く説明していくのもつまらないので、お先に未来のことについて書こうと思いました。
どうです?私って結構前向きじゃありません?
話はまるっきり変わりますが、最近はフレンチトーストにハマっていて、フランスパンをフレンチトーストにしたものに惚れてしまいました。
食パンじゃなく、フランスパンに変えるだけで、あんなにも味わいが違うんですね!
あ、ちなみにクリームパンをフレンチトーストにするお店も知っていますので、興味がある方はコメントいただければお教えします(笑)
フレンチトースト以外にも、なにか英語に関してのご質問があると、自分の説明にも新しい課題が見つかるので、本当に助かります。感謝です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事は投げ銭制です。もしもこの記事を読んで、何か1つでも得るものがあったとしたら、心ばかりのお気持ちを。