明日は明るいに違いない Ⅳ
病の話
夏子はアメリカに来る事は、これから先ずっと可能ではないと思っている。
たとえ、財布事情が許したとしても。
海外へ行く時は、沢山の常用薬💊を持ち歩くし、
機内でも服用種類と数が多いので、
尋ねられたら、薬の説明をしなければならない
なので、医師の診断書と薬の処方内容の書類(英文訳)を携行している。
夏子がインターネットで調べたところ、これから急激に病気が進行した時に
服用する薬は、アメリカ入国の許可が下りないモノもあるようだ。
入国管理のゲートをくぐる時、いつも機械で指紋認証する所で、引っかかってしまう。
静止出来ない手の指紋が機械でスキャン出来ない為だ。
今のところ、何回かトライすると出来た。
大きな観光名所のセキュリティーチェックで鞄の中を調べられると、
沢山の薬を見て、これは何だ?と質問される。
一応説明して、先程の証明書を出す。
思わぬところで、エネルギーが要るものだと、夏子は毎回思う。
未だ、外見的には、何とも無いようにしか見えないので、
ある意味困ったもんだ。
五体満足に対して、五体不満足
その域にはないかもしれないが、手を使ってする仕事に付くはずと思って生きてきて、
それを全く絶たれるのは、
自身の人生の不満足と共に、
拭うことの出来ない未練か。
つづく