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キラキラ

電車に揺られて帰る、制服姿のイケメン君。
「あー。 あんな素敵な子と、恋する世界線もあったのかなぁ」……なんて、ふわふわと妄想してしまう帰り道の日常は、もはや恒例行事だ。

私はもう20歳を颯爽と華麗に過ぎた。せっかくお酒も飲めるようになったが、そんな楽しみも謳歌していないことを気付いていないフリも、大人「だから」してみる。きっと今頃、同級生たちはサークルの飲み会などに勤しんでいるんだろうか。あ、これはまったくもって美談でもなく、むしろ駄目な大人への階段を駆け上がっているのは重々承知の上だ。

ところで、イケメン君は部活の帰りだろうか。いや、それにしては身軽な格好だ。ん? 通学カバンを持っていない? 近くにカバンを置いている気配は…ない。もしや、忘れたのか? まぁそんなことはどうだっていい。その、携帯をいじっているだけで、それだけで絵になるんですから。もう、ごちそうさまです。とにかく眼福過ぎるんだよな……

わたしは言うまでもなく、真面目を極めすぎてもはや師範代クラス。何をしたらちょいワルなのか、いまいち定義が分からない。とりあえず、次の駅で降りてみるか。さて、降りて何をしよう…… 独り寂しく着たことない奇抜ブランドをみて回るショッピング? いや、どっかのオシャレカフェで花の香りがする謎のアイスティーでも飲むか? うーん、もはや正解不正解なんてわからない、、これをなんと数年続けた。バカでしょうな、でも、これこそが、わたしに出来るちょいワル。そして、わたしの寄り道限界なのだと、ふと気付いたことは内緒だ。

本日なんやかんやで降り立った駅はそれなりに活気のある感じ。家族とふらっと寄るにはもってこいなのかもしれないが。ぶらーり……いやいや違う。 あ、一応? 一応、母に連絡しておこう……

パッと顔を上げると、「イケメン君……?」 こりゃまさかの奇跡が起きた。この展開、恋愛映画だったらめちゃ急接近のくだりじゃん。そんなこともまぁ無いのはわかっているが、これって寄り道の限界を突破した私の新たなフィールドなのか? これって、何か始まっちゃうのか? なんて悠長なことを語っている場合では無い。目の前の光景を、しかとこの目で見なければ。

なんてキラキラしているんでしょう。ここはどこか? わたしが脳内で創造しすぎたアブナイ世界でしょうか、、
なんと、あのイケメン君にはとてつもなく可愛い彼女が居た。「わー可愛い!」と、「わーリア充爆発しろー!」が交錯するのは事実。でも、真面目師範代のわたくしはソレモクではない。むしろ! このまったく無縁の素敵カップルの日常を! フィルムカメラシャッターのごとく!! 日頃絶え間ない夜更かしで培った! この充血で濁った目でみるのが!!……なんとも言えない幸せなのだ。

「あー、寂しいヤツの嘆きだなぁ」と思ったそこのリア充さま。いやいや良いんです。もう重々分かってます。そういえば、すんごいヘンな目でみてる女が居たな……? なんてことがあったらわたしかもしれません。はい、ごめんなさい。危害は加えません。その分、指をくわえているやもしれませんが……(こわいですねぇ)

最近「推し」という言葉を見聞きしておりますが、わたしにも「推し」は存在します。特に芸能の方は居すぎて大渋滞起こしてます。でも、これは良いと思います。誰かをみて感動するっていうのは、お互いにとってwinーwinだと思っているので。まぁわたしみたいなのに推される気持ちにもなればちょっと……という想いもあるかもです。はい、すいません。でも、いくつもの困難のたびに、それはたくさん救われてきました。

芸能の世界とかそういうところ以外にも、日常にいる素敵な人たちは居るんですよね。そんな人たちをわたしは変わらず、完全にデジタル社会により視力低下した目……いや、推しを寝る前に真っ暗な部屋で幾度もみてきたダメ人間のせいです、が、そんなわたしをキラキラさせてくれる人々に、日々感謝をいたしながら、今日もひっそり生きていきます。

今これをみているこの瞬間、あの瞬間、どこかでじーっとシャッターチャンスをしている女が居たら……あ、実際に撮るわけではありません。目に焼き付けるだけで…あと妄想も…いや、いや、いや。先に謝っておきます、すいません。
……でも、これが楽しいのです。

#2000字のドラマ

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