日本のテックではデザイン思考は浸透しない…?
こんにちは名無しのPD (プロダクトデザイナー)です。普段は外資のテックで働いてます。
最近、知り合いのデザイナーと話しててデザイン思考は日本のテックで浸透してないと聞きました。なんだったら嫌われてると。なんてこった。と衝撃を受けたのでNoteに思いの丈を投稿してみようとなりました。
結論から言うと、僕の中ではデザイン思考はプロダクト開発の探索フェーズをユーザー視点で行い効率化するフレームワーク。現場でバリバリ使います。
数年前バズワードだったので、手を動かすタイプのデザイナーからは特にアレルギーワードになってしまった感はややあり、残念ですね。
あんまり歴史を書いても仕方ないので、ここで言うデザイン思考は何のことを言っているのか、どんなメリットがあり、現場で実際どの様に活用され、どのような成果につながってるのか。この辺りをここから書いてみます。
ここで言うデザイン思考
基本的にユーザー中心設計(UCD)とほぼ同じと捉えてます。ただ僕自身は人間中心設計の資格は取ってないので、やや違う部分はあるかも?
知っている方も多いでしょうけど、このフレームワークのキモは以下の5つのステージを何回も回すことです。
観察・発見
ユーザーリサーチ・インタビューなど定性による深掘り
課題設定
HMW・ユーザーモデリング・ジャーニーマップ・ユーザー課題の言語化・優先度など
アイディア出し
個人による案出し、ブレインストーミングワークショップなどで方向性の異なるアイディアを出す。最低4方向。
プロトタイピング
ローファイ〜ハイファイまでケースバイケース
ユーザーテスト
対面、リモート、プラットフォーム利用など
これはどこから初めてもいいし、戻ってもいい。ただ進み始めたらスキップしない。もう一つ大事な点にクロスファンクションで進めるというのがあるんですけど、後述します。
さて、よくある誤解としては、デザイン思考を使えば誰でもクリエイティブにすぐなれる。誰でもすぐデザインできる。誰でもどんなプロダクトでも絶対成功する。みたいなトコですかね。そういう銀の弾丸はないですね。なお、ノンデザイナーだけによるデザイン思考の活用は有用性はあると思ってますけど、今回の話のポイントじゃないです。
今回のポイントは、これをテックのプロダクト開発において活用すると、どんなメリットがあるか。次のセクションいきましょう。
デザイン思考のメリット
特にゼロイチにおける不確定要素が大きい場合にプロジェクトの打率を比較的低コストで上げることができます。逆に言えば作ったのに大外れするリスクを下げられる。
なぜか。5つのステージを通して以下を行うから。
ユーザーが本当に解決したい課題の発見
ユーザーが本当に欲しいと思う解決の発見
プロトタイプを使って、目の前でユーザーの反応を観察し、それを受け入れることができると、「俺すげぇ最強のアイディア思いついちゃったもんねー」から「このアイディアのココは良いけど、そもそもニーズはコッチにあるのかぁ」みたいな話になります。
観察から入る場合は「俺すげぇ最強のアイディア思いついちゃったもんねー」が「なるほどー実際はこう言うところ困ってるんかー」になるイメージ。
デザイン思考のデメリット
デザイン思考は統計的なアプローチではないので確実に外すリスクがなくなるわけではないです。そして市場規模の計算は別途する必要があります。ニーズの規模を計算するプロセスは入ってない。なので良い課題と良いソリューションが見つかってもスケールしないパターンがあります。
またデザイン思考は技術アイディアを生み出す手法ではないし、人が欲しているモノにフォーカスします。なので、技術的に不可能な話が出てきてしまうこともあります。
ここにクロスファンクションで行う意味があります。プロダクトマネージャー、エンジニアが一緒に入ることで、ユーザーの求めるモノ、ビジネスとしてスケールするモノ、技術的に可能なモノ。これらを一気に考える座組を作れます。
エンジニアを巻き込む点についてはこちらの記事でもう少し書いています。
現場でどう使われているか
僕は外資に入る前は日本のメガベンチャーにいました。日本企業でも外資でも活用できてますので、いくつか事例を、特定されない程度にボカシてお送りします。(今勤めてる外資は守秘義務が厳しいので、そちらは非公開です…)
人力で行っていた国内BtoB広告サービスをECプラットフォーム化
ユーザーインタビューでどの様なことにいつ困っているのか(顧客課題)。どの様な知識を持っていて、現状の代替手段は何か。どう言ったことは伝わり・伝わらないのかを明確化。
ブレストワークショップでアイディアを量出し。全く方向性の違う四つに絞り込み、プロトタイプ化。(スケッチで作るペーパープロト)
ユーザーテストとして既存顧客・潜在顧客にそれらを当てフィードバックを得た後、効果的だった案をデジタルプロトタイプに起こし再度ユーザーテスト。顧客側にもオペレーション側にもプロダクトを用意してリリース後はオペレーションコストの圧縮と売上増を実現。
国内B2B SaaSツールPMF
ターゲットにした業界でインタビューを通じて中小企業のペインを発見。ブレストワークショップの後Figmaプロトタイプを作成しユーザーテスト。4、5回ほどユーザーテストとプロトタイピングを素早く繰り返した後、MVPにスコープダウンしリリース。ニッチな業界用ツールでありながら、初年度から2桁の顧客獲得。
最後に
デザイン思考はかつてバズワードでしたが、実際の中身としてはユーザ視点から使いたいものを作るためのフレームワークです。もしゴールが「自分が思う最高のデザイン(プロダクト)を世の中にリリースする」ではなく「ユーザーの課題を解決し、やりたいことを、やりたい様にできるようにする。」だった場合にはオススメ。
またプロダクトデザイナーのキャリア戦略として各ステップのどれかに強みを持ってるみたいな捉え方をしたりもグッドです。
なおデザイン思考プロセスだけでプロダクト開発が成り立つはずもなく、実際にはデザインスプリント、リーンUX、アジャイルデザインといったものと組み合わせつつ、プロダクトのフェーズを進んでいくことになります。リサーチやブレストなども手法やコツが多くあるし、それぞれの組み合わせ方やどのタイミングで実施するのかなど、より実戦での活かし方も色々あります。
またデザインプロセスを誰かに説明したいときは、UKのデザインカウンシルのダブルダイアモンドも使いやすいですよね。その辺りはまた機会があれば。
では。