已己巳己な父娘

父は名前に巳の字を含む。
あれ？己だったかな。いや、巳で合ってるか。
いつも、どっちだったっけと悩んでしまう。実の父の名前なのにな。

「お父さん似だね」と言われるがまま、自分はお父さん似なんだと思っていた幼少期。僅かな反発心を抱くようになったのはいつの頃だろうか。

高3の冬、両親の離婚が決まった。
「お父さんは自分で決めたことはちゃんとする人やけん」という母の言葉通り、父は一通りの家事をこなし、私と弟を育て上げた。
決めたことはやり遂げようとする、頑固なところ。そういうところ、私は父似なんだな。

旅立ちの日、父は車で片道9時間かけて私を大阪まで送ってくれた。
「いつでも帰れる」
そう思っていたのに、10年以上実家に帰れないまま私は2児の母となった。
いつか、写真だけでも花嫁姿を見せられたらと思う。孫の顔も、見せに行けたらと思う。
それまではまだ、大阪で頑張るから。
元気でいてほしい。