恋人その1

あなたと出会ったのは友達の紹介。
その日私は仲のいい同級生の家に泊まりに来ていた。夜になってその同級生の部屋で話をしていると、小学校のときの同級生を紹介してもらえるという話になり、その場で電話をかけた。
電話口に紹介を受けて適当に話していたら盛り上がり、友達の家の電話だというのに何時間も電話していた。

その翌日もまた友達の家に泊まることになり、やっぱり友達の家の電話を使って何時間も電話していた。そのまま盛り上がり、一度も会ったこともないのに付き合うことになった。お互い初めての恋人。2人ともすごく気持ちが盛り上がっていたと思う。

さらにその翌日。私の気持ちは盛り下がった。なぜかは覚えていないけど、ふと冷静になったのだろう。会ったこともない、よくわからない人と付き合うなんてやっぱりおかしい。やめよう。
そのまま私は電話口に別れを告げた。

こうして初めての恋人との出会いは友達の家の電話ではじまり、電話で終わった。

それから何ヶ月かして、学校の文化祭があった。私の元恋人は、私に会いたかったらしく、わざわざ文化祭に来たのだ。でも、相手は私に会ったことがなく、写真も送っていなかったので、私と会ってもそれが私だとはわからない。
だから、元恋人は私達を引き合わせてくれた同級生に元恋人(私のこと)はどこにいるのか何度も聞いていたけど、同級生はバツの悪そうな顔をして適当に話をはぐらかしていた。隣に私がいたからだろう。
文化祭も終わりの時間に近づき、とりあえず学校を出ようかという流れになったところ、またしつこく元恋人が同級生に私の居所を尋ねた。見かねた同級生は私のことを指差して元恋人であることを知らせると、元恋人はひと目私を見てひどくがっかりした顔をして帰っていた。今思えば一番最低の別れ方かもしれない。

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