AI翻訳アカデミー受講生登場⑤
AI翻訳家の塩貝香織氏の主催するAI翻訳アカデミーの受講生を名乗る人物による記事が、この一週間でまたいくつか確認されている。今回はその中でも特に気になるものを見ていく。
特に気になったのは以下4つの記事。
2023/12/14
内容は、高校生の娘を持つ著者がAI翻訳アカデミーの受講を通して成長し、家族との関係も改善したというもの。媒体はペライチ。WIX.comなどでの提灯記事と同様、著者は特に名前を明かしていない。現在は本業に加え、翻訳で10万円の副収入があるという。「AI翻訳アカデミーが今なら無料で受講できるとのこと!」と無料を強調している点、「AI翻訳を取り組みたい方はこちら>」「AI翻訳アカデミーはこちら>」から何故か自分の公式LINEのリンクを添付している点が特徴。公式LINEについては後述する。
※無料なのは「AI翻訳者短期集中養成講座/プログラム」であって、AI翻訳アカデミー全般が無料という訳ではなく、寧ろメインコンテンツの価格は30~50万円
2023/12/19
内容は、妊娠と出産を機に8年務めたアパレル関係の仕事ができなくなってきた著者のかなこ@OL翻訳家氏が、AI翻訳アカデミーと出会ったことで、退職後は仕事と子育てを上手く両立できるようなになったというもの。媒体はNote。アパレル関係の仕事をしていた際の給料は手取り20万円程だったが、現在は在宅業だけで毎月50万円を稼げているという。「今年9月から始まった、最短3ヶ月で翻訳で稼げるようになるAI翻訳アカデミーを受講したお陰で毎月50万円を稼いでいる」という書き方は、現在が12月であることを考えると些か不自然さがあるが、特に無料を強調する内容ではなく、如何にスキルを持つことが重要か、如何に簡単にAI翻訳家になって稼げるかに焦点を当て、最後に何故か自分の公式LINEのリンクを添付しているのが特徴。公式LINEでは、悩みを解決してくれるという。公式LINEについては後述する。
2023/12/20
内容は、著者のノア@コロナで変化氏が経験したブログの立ち上げや運営、アフィリエイト広告の利用などといった副業に関するもので、現在はブログが安定し、月に10万円の収益を上げるようになったという。そして次なる挑戦としてAI翻訳アカデミーに参加し、環境の力や実績ある人から学ぶ重要性を強調しているが、実際に収益を得るのはまだ先とのこと。媒体はMINKABU。ブログ末尾には自身の公式LINEのリンクを添付している。公式LINEについては後述する。
なお本記事は2日後、MINKABU運営により何故か削除されている。
2023/12/21
内容は、著者のヒカル氏が子供3人を育てながらのパート生活に限界を感じていた時に出会ったAI翻訳アカデミーのおかげで、現在は物販とAI翻訳で毎月50万円を稼いでいるというもの。媒体はHatenaブログ。本記事が本アカウント唯一の記事。
「9月に始まった最短3ヶ月で翻訳者デビューできる講座を受けたことで、同年12月時点で毎月50万稼ぐことができている」という表現には、凄まじく違和感がある。本アカデミーに「怪しい評判はあるのか」という観点で語り゙始めてこそいるが、外部サイトを一切参照することなく、何故か「怪しくない稼げる副業」だと結論付けている。最近では翻訳4団体及びYarakuZenが本講座に対して注意喚起の声明を出しているのだが、それを踏まえて「怪しくない」と結論付けているのだとしたら、著者のネットリテラシーには疑念を抱かざるを得ない。ブログ内には、AI翻訳アカデミー公式の広告以外にも、ヒカル氏自身の公式LINEのリンクを添付している。公式LINEについては後述する。
公式LINE
今回見てきた、受講生によるAI翻訳アカデミーを紹介する4つの記事は、公式LINEへの登録を促している点で共通している。これらの公式LINEは、どちらも新規開拓を目的に作られたLINEアカウントではないかと思われ、AI翻訳アカデミーの受講生、もしくは入会を検討している人を対象に質問を募っている。気になる方は友達登録してみてほしいところだが、筆者は責任を負いかねる。
そして奇妙なことに、時を同じくしてAI翻訳アカデミーを実施している株式会社ファイブアイズ・イングリッシュは、複業クラウドにて、受講生からのLINE問い合わせに対応するカスタマーサポートの求人を出している。
上記2つの記事と、今回のファイブアイズ・イングリッシュの求人との関連は不明だが、AI翻訳アカデミーのカリキュラムには、受講生に新規開拓をさせるプログラムでもあるのだろうか(そんな訳ないか)。
また、これら4つの記事のうち前2つの公式LINEでは、友達登録時にかなり似通った文面のメッセージが送られてくることが確認されている。
少なくとも、複数名の似たような目的のアカウントが登場し、似たような文面を送ってくる以上、受講生がアカデミー側に依頼されることなく、勝手に作成したアカウントとは考えづらい。しかし受講生同士で挨拶の文面がほぼ同じであることを考えると、アカデミーの関与を完全に否定することも難しい。
実際このLINEアカウント運営にアカデミーがどこまで関わっているかは不明だが、今回の場合、関わっていようと関わっていまいと、それぞれ別の問題に発展する可能性がある。
アカデミーがLINEアカウントに関わっている場合
受講生による本アカウント運営にアカデミーが関わっている場合について考えてみる(これは可能性としては低いと思われるが)。これらの受講生のブログにはプロモーション表記が見られないことから、これは消費者庁が令和5年10月から禁止している、ステルスマーケティングの禁止、景品表示法違反に該当する可能性がある(あくまで可能性の話)。
アカデミーがLINEアカウントに関わっていない場合
続いて、受講生による本アカウント運営にアカデミーが関わっていない場合について考えてみると、これはAI翻訳アカデミーが定める第10条の禁止行為(13)に該当する可能性がある(あくまで可能性の話)。
勿論これは、質問への回答内容によっては規約違反になり得るという程度のもので、LINEアカウントを運営しているだけで即アウトとなる訳ではないと思われる。が、それでも一定のリスクを負うことになるのは間違いないし、一受講生がそんなリスクを負う必要が何処にあるのかは甚だ疑問である。
ところで、今回のカスタマーサポートの報酬が時給1,500円なのに対して、専門知識が求められる添削者の報酬は時給1,200~1,500円であった。この報酬の差は、果たして何に基づくものなのだろう。
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