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ロマンチックが離さない
改札をくぐって右、「右側通行にご協力ください」、地上へ出て右へまっすぐ。坂をのぼっていくほど気持ちが高鳴るのは、この坂のせい?それとも、今から行くお気に入りの店が、わたしのすきな“右” をくり返して、やっぱり右側に見えることが分かっているからだろうか。
右が好き、というとほとんどのひとが不思議そうな顔をする。右側に好きなひとをみながら歩くのが好き、というとさらに不思議そうな顔をする。理由なんてない。落ち着く、ただそれだけのこと。
でも多分、本当は理由があるんだとも思う。大事なものは右側にある、そんなことがわたしの人生において繰り返されているということに気付いているからだ。
「一日はみんな平等に24時間しかないのよ」という言葉だって、立て続けに言われた。えがお顔だねってことも、意外と抜けてるのねってことも。
「覚えておいて、大事なことだから何回も聞かせておくわ!」なんていう、だれかの導きだなんて思ってしまうのだ。
わたしは日記をつけている。毎日じゃない、気が向いたときだけすこしずつ。3年書ける分厚いそれを買って、2年目になる。繰り返される大事なことでさえ、忘れてしまいがちなわたしが始めたちいさな習慣。今日のページをひらくと、去年のわたしがブルーブラックの万年筆で語りかけてくる。
1年前のわたしは、当時の好きなひとと美術館に行っていた。そしてその日を境に関係は崩れていった。だからその芸術の世界に戻るのがこわくて、ずっと離れていた。
そして今日、1年越しに友人に誘われて美術館に行ったのだ。おなじものを分かちあったはずなのにあまりにも心地よく、安心してしまった。帰ってひらいた1年前の日記にはこう書かれてあった。
彼と分け合った芸術の世界に、ふたりの未来はなかった。「あなたは、ひとりで生きていけるでしょう」という言葉をこぼした彼の顔は多分、わたしの顔よりもさみしくて、切なかった。
ちょうど1年前にうまくいかなくなったことが、1年越しの今日はじまったという現実。これだから日記はやめられない。起こることにいちいちときめいて、「運命だ」なんて浮かれることをやめたくない。今日という日に自分の力でいろどりを与えることができるのは、浮かれるほど軽快なステップと突き抜けるほどの青い空だと知っている。
メニューの右側、いつものコーヒー。頼んだ瞬間に友人から連絡が来たから、今日も日記を書こう。このあたらしいはじまりを、大事にするって決めた。ループする運命にひたることも前進材料だと信じることを、わたしはぜったいにやめない。運命は、きっとわたしに味方する。右側に運命を握りしめている限り、ロマンチックがわたしを離さない。
p.s. いつも素敵なロマンチックをくれる大事な友人たちへ。書くたびにショートストーリーの友人Aになれている気分が、たまらなく好きです。
The best people in life are free.
追記:書き上げて投稿しようとしたら、いつも読むのを楽しみにしている 西平 麻依 /まいも さんが ロマンチックはつづく/Romantic Bites. というタイトルでnoteを更新されていた…!ほら、やっぱり運命ってあると思うのです。
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