そうだ、免許を取ろう。3章
『シュミレーションの鬼』
朝6:00、アラームが鳴る4分前に起きた。
前日の疲れもあったので起きれるか心配していたが、難なくクリア。ラジオ体操第一第二(ここ3ヶ月で習慣となった)と朝勉を終え、7:30に登校した。
朝食のおにぎりと共に手渡される本日のスケジュール。朝一から2限連続で技能教習*か。やばい、30分後にハンドルを握る私が……
それまでにこのお寝ぼけナナオロウのエンジンをかけるべく、いつもより多めの咀嚼でおにぎりを完食した。
1限目、藤原弘似の野太い声と確かな指導のもと、右左折、後退を習う。何とか昨日よりスムーズに運転できている気がする。が、藤原弘の助言を聞く耳、運転する手と足、外を見る目、息をする鼻と口、で私の五感はパンク寸前。合宿生に課す進行スピードは鬼のようだ。そして最後に「合宿生だから頑張ってね」と悟られる。
そのまま2限目に突入、次の教官は何やらG−shock好きらしい。速攻私のG-shock腕時計をコツコツ叩いてきたし、教習中ブレーキペダルを私の腕時計に喩えるという飛躍的な比喩も披露された。生まれて初めてG-shockを付けていることを後悔した。そんな珍教官のもと1限目でパンク寸前な私に降って来た2限目の急加速、踏切、坂道、後退。これまた次々と飛んでくる飴と鞭に息が切れる私。何だか息がしにくいぞ。
それでもイイ感じにできてきたかなーと思ったら、「まだかなり不安定ね」「進み具合、遅れてるよ」「合宿生なんだから頑張ってもらわなくちゃ」と散々言葉を浴びせられ、私の心に火がついた。
「時間は限られている、腕がないなら努力で勝負してやる」
その日を界に、
登校の行き帰り:国道沿いを歩いてシュミレーション
朝:教習内の車が走る前にコースを歩いてシュミレーション
昼:コース横のベンチに座ってシュミレーション
夕方:学校内にある仮想運転席に座ってシュミレーション
と、3度の飯よりシュミレーションみたいな生活を送ることとなった。
(あの時、教官に反論しなかった私を少し褒めてやろう。)
座学の方は、まあ着実に勉強していれば大丈夫そうだ。問題は運転。
これから仮免試験までの3日間、シュミレーションの鬼となろう。今までも初めから上手くできた事なんてなかった。予想はできないが、私には地味な努力が味方だ。あれ、そう言えば今夢に向かって人一倍努力していることってあったけ……
決心とモヤモヤを交互に移ろいながら胸の前の見えないハンドルを握りしめる帰り道であった。
私の人生トゥービーコンティニュー
ナナオロウ(2020/7/29 19:30手記)
つづく
*教習コースを使っての1日2回(1回50分)の自動車運転教習を6日間12回続けると仮免試験を受けることが許されるのだ。