正しいのはいつもお客様です
お店でパートナーとその知人が言い合っていました。知人は「正しいのはいつもお客様だ」と諭し、パートナーは「そんなことない!」と主張していて面白いなと思いました。
自分でビジネスをしている知人にとって「お客様が正しい」というのが彼のビジネスモットーなのであれば、それは尊重されるべきものです。なんだか正しいビジネスマンっぽくもあります。
ただ私もパートナーと同じく「お客様がいつも正しい」とは思いません。
お客様がいつも正しいということは、お金を払う側がいつも正しいということ。ということは正しさとはお金で買えるものになってしまいます。
でも正しさとはお金で買えるものではありません。
お客様は神様だという言葉もありますが、サービスや品物を提供する側も、お金を払ってそれを受け取る側も同じ対等な人間です。そしてどちらの側にもあらゆる趣味思考思想の人がいます。どちらか一方が常に正しいなんて言えるのでしょうか。
全ての声に耳を傾けることはできても、全ての主張に迎合することはできません。
そもそも正しいってなんでしょう。
もしかしたら、知人の語る「正しさ」とは「利益が出ること」とイコールだったのかも知れません。私の言う「正しさ」とはもっと人間の尊厳に関わるもののこと。言葉の定義って人それぞれ少しづつズレているから、有効な議論をするのって難しいなと感じます。
思えばお金を稼ぐようになってからの人生はずっと、自分の美意識に合わないことを強要されずに生きて行くための試行錯誤と模索と挑戦の連続で、それは今も続いています。
アルバイト先で、皆と一緒であることに流されて正しいと思わないことをしてしまったこと。フリーランスで働きながら、お金をいただけることにかまけて、ビジョンに全く賛同できない会社のために仕事をしたこと。
自分の美意識に反することを、そうせねばならないことなのだと言い聞かせ、毎日少しづつ目を閉じて歩いていると、心にも頭にも滓がたまっていきます。
その滓を見てみぬフリをするのが嫌だから、なんとか自分の美意識に沿って生きていけるようにと試行錯誤をしながら、失敗しながら歩いています。
いま現在の挑戦は、パートナーと飲食店と古本屋さんをやることです。
2人とも幸か不幸か「お客様はいつも正しいのです」とは信じないタイプです。果たしてこのビジネス、うまく行くのでしょうか?先のことはだれにも分かりません。でも自分たちの美意識を持って世界に打って出て、うまく行ってもうまく行かなくても、自分の責任にしかならないところが、自営業やフリーランスの良いところで好きなところです。
だからこそ、お店をやる毎日は面白いです。