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新・田舎暮らしの教科書 「コロナ移住の終焉 都心回帰が始まった 結局、潤ったのは…」

 コロナ禍による地方移住も結局は地方の土地相場、不動産相場のバブル化によって庶民には高嶺の花となった。
 
 コロナ移住ブームは、つつましくほどほどの田舎暮らしを一気に破壊したのだ。そんな新・バブルの地に移り住むのは、足元がギラギラするゲレンデバーゲンで疾駆するテレワーク可能なIT長者か、ブランディング指南で稼ぎまくるカリスマコンサルばかり。
 
 しかし、過去数年のコロナ禍は、すでに指摘されて久しいが、都心不動産の「ドーナツ化現象」を生んだとも言われる。
 
 下宿需要を含め、都心の賃貸マンションはガラガラ、だ。
 
 需給バランスが崩壊した今、手頃になった都心マンションに帰るべき好機到来とばかりに、高齢化した初期田舎暮らし生活者らの都心回帰が始まっている。
 
 移住してきた頃には考えていなかった病院通いも買い物も「歩いていける」のも都心ならでは。
 超高齢者に訪れた「再びの都心回帰」絶好期の到来と言える。

 コロナ禍の山村回帰で、過去数年、不動産業界はあの、1980 年代以来の大バブルを迎えた。とりわけ、都心から 2 時間以内の射程 150 キロ圏内は建築需要も高まり、不動産と建設業だけはウハウハの状態が続いてきた。


 A さん夫婦がコロナ移住に突き動かされるように、 清里の高級別荘地に移り住んだのは コロナ禍が始まってまもなく。まるまる 2 回の冬越しをしたこの春、都会のマンションへと戻ることに決めた。

「最初は周囲も木々に囲まれて、ああ来てよかったなと思っていたんですが、あれよあれよと、移住して半年もする頃には、周囲の木々はすべて伐採され、すべて分譲住宅になってしまいました。 今では都会の住宅団地と変わらない風景です。都会と同じ住宅環境ならば、車でしか動けない上に、冬もべらぼうに寒い場所にいてもなんの意味もない」

 さらに、「またコロナ移住でくる人くる人が、すぐに私有地だから入るな、とこれみよがしな看板を立て始めたり、 住宅ではなくキャンプ道具をおいて週末キャンプにきたりで、 自宅のすぐそばで焚き火をしたりで、住んでいるこちらは落ち着かない環境になってしまいました」

 奥さんも悩む。

「無知で、 勢いだけで移住してきたといえばそうなんですが、まさか都会以下の環境に変貌するとは予測していなかったんです」
 
 確かに A さん宅周辺は木々がすべて伐採され、 森の家から「砂漠の家」 へと環境は一変してしまった。

「これならばね、 都会の方がよっぽど便利で、 下手をすればよほどプライバシーもありますね。山での生活がこんなにギスギスするとは思わなかった」

 さらには、周囲の移住者は「新富裕層」なのか、コンサルタント業と称する者ばかり。

「移住者同士のコミュニティといえば、マウントばかりでこれが豊かな生活なのかと疑問に思う」ことが重なり、ついにの都心回帰となった。

 都会は今、 コロナ禍での学生などの下宿需要の減退や、 テレワークなどの普及による郊外生活の拡大で、まさにすっぽりと穴が空いた「ドーナツ」状態だ。

 マンションも新築は高額化しているが、中古物件は低廉下しており、二極化している。

「むしろ、 中古物件は豊富になったので、うまく探せば、 以前では手がでなかった物件が降りてきている状況」だという。

 一方、下火になったとはいえ、 コロナ移住先の山の物件はまだ需要が大きい状態に変わりはなく、売り時ではある。売れる時に売って、都心に戻って行く。
 これまでの郊外への流れ一辺倒はひと息つき、 今は、 ドーナツ化した都心へ、 今のうちにと回帰する流れも太くなってきた。

 地元不動産業者はいう。

「もう、半々じゃないでしょうかね。出ていく方も多いです。そういう意味では不動産そのものは代謝してますから、商売としてはありがたいですよ」
 
 結局、潤ったのは地元ではなく、不動産業者だけ、なのかもしれない。

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