2001年9月11日 ワシントンの空は快晴だった
ニューヨークでビルが崩れ落ちたそのとき
ペンタゴンと呼ばれる国防総省のビルにも一機が突っ込んだ
黒煙のあがる方向へ ポトマック川にかかるその橋を、懸命に走った
モトローラ製の国際携帯電話がけたたましい
上空をF15が幾度も低く飛び 道路は次々に封鎖されていく
ジェット燃料か
嗅いだことのない臭いが川を渡ってくる
ペンタゴン裏手の芝一面には、搬送された人々と救急キットが散乱する
川からの低い風が、絶え間なくキットの紙屑を空に吹き上げる
その脇を駆け抜けた
黒煙の空に小雪の舞うような不気味さに身ぶるい する
ペンタゴンの堅牢な建物も怪物が食らいついたように真っ黒い穴が開いていた
夢中でシャッターを押し 気がつけば真下に立ち そこで連行された
2時間ほど抵抗して そしてカメラを渡した
ポケットのなかに残っていたのは、この一枚を収めたフィルムだけだった