2023年のメディア状況
自己紹介
皆さん、初めまして。七尾えるもと申します。
しがないメディア研究者を自称しております。
昼間はこれでもかというくらい論文や書籍とにらめっこしている毎日を過ごしています。
皆さん、サムネイル画像を見て「あ、ディープステートだ・・・」と思って見に来たのではないでしょうか?
タイトルも「2023年のメディア状況」というもので、
これだけではこの記事を開くまで、
「七尾という人物は何を言うつもりなのか」
がわからないと思います。
この記事を読もうと思った人は、どのような方々でしょうか?
つまり、
「あなたは、どんな人でしょうか?」
男性?女性?
年齢は?
職業は?
政党支持はありますか?
普段、どんなメディアを利用していますか?
家族と一緒に暮らしていますか?
対面で会えるような友人知人はどのくらいいますか?
多様性のある社会と個人の特性
この記事を読んだ人は、恐らくいろいろな社会的な属性を持っていると思います。男性か、女性かというのは基本的な社会的属性です。あるいは「無性別」と名乗る人もいるかもしれません。
世の中には色々な人がいて、色々な人を尊重しようというのが「ダイバーシティ」という概念です。
いわゆる「多様性」ですね。
インターネットでは色々な人がいると思います。
しかし、大勢の人を一人一人評価することは難しいです。
だからこそ、皆さんは「特定のグループにひとくくりにしよう」と考えると思います。
例えば「ネトウヨ」とか「パヨク」というワードがその典型的な例ですよね。
「何となく、右翼的なことを言っているけど、インターネットだけの発言で、実際に行動を取らない人」がいれば、皆さんはその人のことを「ネトウヨ」というのではないでしょうか?
逆に、保守的なイデオロギーを持つ人は、自分の意見から非常に遠かったり、政権批判をしたりする人たちを「パヨク」とカテゴライズするのだと思います。
このように、大勢いる個人ひとりひとりを評価することが難しい場合、皆さんは個人を「とあるグループにカテゴライズする」という作業を行うと思います。
それが悪いということではありません。
むしろ、大量の情報が氾濫している現代社会を生きる人々にとっては、非常に重要な情報選択作業です。
脳が疲れますし、時間もかかりますからね。
エコーチェンバーに浸かった人々の正義と悪の戦い
問題は私たちはいつの間にか、「個人」のことを「グループの一員」とみなして評価してしまうということです。
この人はネトウヨ/パヨクだ、だから信用ならない。
この人はある政党/政治家の支持者だ、敵だ。
つまり、個人には個人の事情や背景というものがあるのですが、集団の一部としてみなしてしまうことで敵対的な存在と認識してしまうのです。
これは非常によくないことです。
なぜなら、一度、「敵対組織の一員」とみなしてしまうと「正義の側」の自分たちはその敵に対して慈悲も、赦しも、与えないからです。
もし、あなたたちが「正義の側」と確信しているグループに所属しているとします。
しかし、それは「裸の王様」でもあります。
あなたを味方とする人たちは、あなたが好きそうな情報や言葉を送ってくれると思います。
そして、その情報や言葉に反対する人間は、全て「敵対集団」ですよね?
敵の言うことは聞く必要がない
あなたは、そう思うはずです。
つまり、あなたは非常に閉鎖的な集団の中に引きこもって、自分の都合の良い情報だけを探索するようになります。
それは「エコーチェンバー(Echo Chamber)」といいます。
これを真っ先に唱えた人は、キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)というリスク・経済学者です。
総務省は、インターネットやメディアの状況についてサンスティーンを度々引用しています。
詰まる話、
インターネットは、あなたにとって、都合の良いことばかりが書かれた内容が届くようになります。
それが、なぜ、いけないことなのでしょうか?
エコーチェンバーに騙された男
2ちゃんねるのおもしろスレに「おまいらのせいで美容院で恥じかいた」という伝説のスレがあります。
この書き出しから始まる伝説の爆笑スレですが、これはエコーチェンバーの要素が隠されています。
スレ主は人生初の美容院デビューのために、2ちゃんねるでスレを立てることで、何が必要かを尋ねました。
そこで、スレ民は
というように、何も知らないスレ主に対して、シャンプーの持参が必要ということを教えました。
そして、スレ主は自信を持って美容院デビュー当日にマイシャンプーを持っていこうとしていたわけです。
これは私も個人的に好きなスレですし、笑い話ですので、まだ真剣に取り合う必要はありません
しかし、これが災害やパンデミックであればどうでしょうか?
3.11の時、原発事故が発生したとき、「ヨウ素剤を飲めばいい」という漠然とした知識を持っていた人たちが「市販のうがい薬にも、ヨウ素があるからそれを飲めばいい」というとんでもないデマを発信しました。
ヨウ素剤というのは医師が処方する「安定ヨウ素剤」のことを意味するのですが、代わりにうがい薬を飲んで体調が悪くなったりすることがあります。
このスレ主の場合は、情報源を2ちゃんねるという特定のソースに限定しており、その中でもスレ主に対して「だましてやろう」という意図を持った人たちに囲まれて、情報を信じ込んで、美容院に凸しました。
これがエコーチェンバーです。
自分の好みの情報源は信用できると考えて、疑うことをせずに情報を鵜呑みにする。
こうした現象は、このスレ主だけではなく、様々な場面で起きています。
私にも、あなたにも。
私は、noteを通して「メディアとの付き合い方」を皆さんに紹介できればいいなと思っています。
短いおつきあいかもしれませんし、長いおつきあいになるかもしれません。
これからもよしなに。
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