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【アニメ感想】映画 聲の形

金ローでやるというので、6歳の娘にはまだ早いかもと思いつつも、芸術作品とも言えるこの映画を観てどんな反応をするのか気になったので一緒に鑑賞。
Blu-ray持ってるからCM無しのノーカットでも観せられるけど。

この作品は観る度に新しい気づきがあったり、人物への印象が変わることもあるし、観る人によっても感想が異なるから面白い。
自分も久しぶりに観たので今の感想を書き残しておく。


何度観てもしんどい西宮へのいじめの描写。
何がしんどいって、将也の気持ちが分かってしまうからなんだよな。
彼はただ珍しい異物に興味を示して反応してるだけ。子どもの無垢な残酷さが現れている。
転入生が発した方言のおかしさを指摘し、教師にたしなめられた自分の過去を思い出す。
変なものは変だと口に出し、面白いと思ったことは周りに関係なく実行する。自分中心に世界が動いているというか、周りを見る余裕がないもしくはその方法を知らなかったように思う。
だから相手の気持ちを思いやれとか相手がどう感じるか考えろとか言われても、結局自分で経験しないとわかんないんだよ。少なくとも小学生の自分には無理だったと思う。
幸い自分がいじめられることは無かったけど、周りが見えていない自分の中学以降の立ち位置は明らかに変わった。この辺も将也に共感してしまう。


植野の言い分については理解できるところもある。
付き合いたくないから拒否反応を示したのに、西宮がそれを無視したことで結果人間関係を掻き乱した、と。
障害者だからと無条件で受け入れなきゃいけないってのは確かにおかしい。
「話が合わないから付き合わない」って健常者に対しては普通にやってることだし。
英語が喋れない、手話ができないから付き合わないってのも同じことなのでは。関わりを持つかは本人の自由意志でいいだろ。

入院中の将也を独り占めするのは自分勝手すぎ。
西宮への批判も「自分の頭で考えられない」ってのは的外れ。西宮は自分で考えた上での決断であり「周りの人間のことを考えていない」という批判が相応しい。

終盤に手話の「バカ」を西宮に直されるシーンは大好き。
ツンデレ爆発で印象が好転する。


西宮の生きづらさ。自分のせいで将也の人間関係を壊してしまい、死にたくなる気持ちはわからなくもない。
周りとの隔たりを上手く取り繕うために身につけた愛想笑い。それでも家族を始め周りに迷惑をかけてしまう辛い人生。
彼女の場合は聾唖という明確な障害があるけど、健常者も大なり小なり生きづらさを抱えている。コミュニケーションに難があるほど社会での生きづらさは大きい。

永束くんは終始良い奴すぎて大好き。
ただ、ぼっちな彼もコミュ力に問題のある人間ではある。
原作だと嘘つきな描写があったなぁ。

川井の印象は将也目線で描かれることから生じるミスリードであることを、Xでの投稿で初めて知った。
将也が無意識に記憶の捏造をしたことで、川井が自己愛の強い棚上げ人間にみえるらしい。
とはいえそもそも学級委員長タイプはあまり好きじゃないし、原作では永束くんへの「汚い」発言もあるから印象好転ってほどではない。


将也の母親が西宮母に謝罪の際、耳から血を流しているのは見間違いじゃなかった。硝子の痛みを体現した上での謝罪だったのか。

将也が「好き」を聴き取れず「月」と勘違いし、「月がきれい」(=夏目漱石の愛してる)になる流れがたまらん。
すごく美しい言葉の繋ぎ方。伝わってるようで伝わっていないのがもどかしい。

障害に限らずコミュニケーションの難しさというものを改めて考えさせられる作品。


改めて観ると、声優キャストも制作陣も超豪華。
この制作陣での作品が二度と見れないと思うと…。

原作を読むことで山田尚子監督の凄さを初めて認識した作品。
原作のエピソードを削りつつ、完成度の高い一つの映画作品へと再構築する手腕。

原作があるものを映像化するということは、タイトルが持っている魅力をきちんとプロデュースすることだと考えています。作品への愛情と敬意を持った上で、一度全部を解体して一本の映画として再構築しないと胸を張って映画を作ったとは言えないと思いました。

映画 聲の形 メイキングブックより

この監督のお言葉。
こんな意志を持って制作してくださっていると知ったらもう頭が上がらない。

娘は遅い時間まで起きてて眠そうで、内容を理解できてたかは怪しいけど、手話を知って少し興味を持ってくれたのでまぁ良し。
もう少し成長したらまた一緒に観たい。

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