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【アニメ感想】【推しの子】第1話〜第24話

昨年1期を視聴したときは、正直あまり良い印象を抱かなかった本作。
シナリオは面白いし、キャラも魅力的だし、映像もクオリティ高いんだけどね。
なんとなく「アイドル業界の裏側はこんなもんだ。こんな嘘だらけの世界にお前たちは夢を見ていたんだぞ」って誇示されてるように感じてしまい、「いやいや、ドルヲタだって嘘だってわかってるし。虚構だと分かっていながらもあえて考えないようにして楽しむのがアイドルだし」と、元ドルヲタの謎の反発心が生まれてしまう始末。

それでもね、シナリオは面白いから続きが気になるし、有馬かながめっちゃ好きって記憶はあったので、2期を最終話放映直前くらいに一気見。
これがまた面白い。
ストーリーに引きこまれるし、映像にも魅せられるし、そしてやはり有馬かなに惹かれる。
終盤にアクア達の出生の核心に迫る展開になって「1期の記憶が曖昧なままでは楽しめない」と思い、1話から見返して24話(2期最終話)へ突入。


初見の際は嫌悪感があった1期。今回は驚くほどそんな感情は湧かず。
業界の内情をリアルに(リアルかどうかは実際のところ不明だが、そう思わせる説得力を持って)描きながら、その中を濃ゆいキャラクター達が動き回り、魅力的なシナリオが展開されていく優れた作品。

1話はシンプルにアイやミヤコさんの母性愛に共感して泣かされたし。
アクアが『今日あま』でかなちゃんの本来の演技を引っ張り出したり、黒川あかねの炎上騒動では出演者で一致団結する胸熱展開があったり。あの炎上騒動は誹謗中傷する人間に心底ムカついてたのもあってスカッとした。アクアの「大人がガキ守んなくてどうすんだよ」ってセリフに痺れる。
黒川あかねがアイを憑依させるシーンはゾクゾクする。

新生B小町始動。
ステージで覚醒する有馬かなを観て涙が溢れる。
元天才子役の苦悩と苦労。業界で生き抜くために身につけた演技や自虐的な発言。どこか達観して冷めたように見える彼女がアイドルとして輝く。
1期は有馬かな物語と言っても過言ではないような…。
アクアがピエよんのフリしてサポートして、それにかなちゃんが気づく展開も好き。

2期での東京ブレイド。
待ちに待った黒川あかねと有馬かなの因縁の直接対決。
楽屋シーンでのコミカルさと舞台上でのシリアスさの対比で否が応でも惹き込まれる。そしてアクアの役回り。動きで会話する演者達がかっこいい…。

父親の件がひと段落したアクアがかなちゃんを完璧にエスコート。
有馬かな可愛すぎる。
恋する乙女は何故かくも可愛いのか。

B小町のMV撮影で訪れた地でまた展開がガラリと変わる。
真相に近づいたルビーの両眼に黒い星が宿る。完成したMVでもきちんと描き分けられているのが良い。
黒川あかねを選んだアクア。有馬かながアイドルという理由もあるだろうけど、一気にかなちゃんが外野に回った感があって寂しい。


そして疑問がいくつか残る。

・アイのケータイのパスワードの番号って何か意味があるのか。
あえて具体的な数字を出してるから、何か真相に関係ありそう。

・ルビーの父親を名乗る人物の存在。
そもそもまだ生きてるってことは、姫川の母親もアイもこいつに孕まされたってことか。
24話のラストシーンで瞳に浮かぶ黒い星。アクアとルビーは父親から殺意を表す黒い星、アイからはスター性を表す白い星を受け継いでいたのかな。

・アクアがあかねに雨宮の死体を発見させようと仕向けていたこと。
あかねに発見してもらうことを期待していたみたいだけど、何故あかね?
役作りの際に発揮する高い洞察力で死体も発見できると思ったのかな。あかねが転生のことまで勘づいていそうな反応だったけど、それもハッキリしないしよくわからない。

・ルビーとアクアに転生したのは何かの意思によるものなのか。
突然現れたツクヨミという少女が全て知っていそうな口ぶり。

気になって原作に手を伸ばしたくなる。
ちなみに友人は原作には手を出さなかったものの、美容師さんにせがんでネタバレを聞いたらしく、奥さんに軽蔑されてた(笑)
でも聞きたくなる気持ちは分かる。


舞台設定はリアリティがあるけど、キャラが濃すぎて現実感が薄まる。この業界だとその方が逆にリアルなのかもしれんが。
メインキャラの感情を瞳で表すのが印象的で、京アニの『響け!ユーフォニアム』などは瞳の繊細な動きで感情を表現するけど、本作は瞳の輝きや色で感情を表現する。それがよりキャラの現実感を希薄にしている気がする。
ただ、この現実感の薄い"Theキャラ"感が本作をエンタメとして楽しませてくれていると思う。

ただ、心情の動きは繊細に描かれていて、そこに共感できるのもまた魅力。
特に印象的だったのが脚本家のGOAさんの心情。
原作者から罵倒され意気消沈。この時に語られた心情は聞いていて心が抉られるようで辛かった。
多くの感動を与えてくれた脚本家という職業の実情を知って凹む。

原作を元に舞台や映画、アニメなど媒体に適した内容になるように再構成するお仕事。
「なんのために映像化したんだよ」と言いたくなるような駄作もあるかもしれないけど、見事な作品もたくさんある。
内情を知ったことで改めて脚本家を始めとする制作スタッフに感謝の気持ちが湧いてきた。

奇しくも原作改変で原作者が亡くなるという事件もあった折。
事件の概要を聞くとどうしても原作者に肩入れしたくなるが、内情を知りもせずに脚本家を糾弾するのは違うよな。
詳しい経緯は自分も知らないので深い言及は避けておく。

予言とまでは言わないけど、エンタメ業界で起こりうる問題を取り上げたら、たまたま実際に起きてしまったんだろうなぁ。それほどこの作品の描く世界が現実に近いんだな。
この作品も実際に原作漫画からのアニメ化、そして実写化と展開されていくのも面白い。
原作改変のとことか田中仁氏はどんな想いで脚本を書いたんだろう。


未知の業界を知れるお仕事系要素。
真相に迫るミステリ要素。
魅力的なキャラによる推し活要素。
起伏のあるシナリオによるエンタメ要素。
他にもあるかもしれないけど、まぁとにかく面白い。
ごちゃごちゃ書いたけど「面白い」の一言に尽きる。

あと、1期のOP曲が良すぎた。
あんなに完成度の高い楽曲ずるい。
高橋李依さんのカバーも鳥肌もんだった。

っていうか、声優さんの技量もすごい。
特に東京ブレイドは俳優達の熱量や技量に合わせた声があったからこそ没入できた。

様々なスタッフが一つの作品を作り上げるために一流の仕事をする。
アニメ制作って本当にいいなぁ。『ハケンアニメ!』読んだ時も思ったけど。
「自分の担当する作品を悪くしようというクリエイターは存在しない」ってことですね。

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