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【アニメ感想】夜のクラゲは泳げない

『響け!ユーフォニアム』にどっぷり浸かっていたのでリアタイはできず。
あらすじには"輝きたい"とか”何者かになってみたい”など、青春ものが大好物の自分に刺さるワードがあって気になってた。

その期待に違わず、1話で好きを確信。
何者かになりたいけど一歩踏み出せない光月まひるが、花音と出会うことで動き出す。何かが始まるワクワク感。
仲間が増えていき、一つの作品に青春を賭ける。
衝突や解散の危機、それぞれの葛藤を乗り越えて成長していく。
物語としては王道だけど、王道だからこそ盛り上がる。
そして王道の中で、物語の起伏(エピソード)をいかに整合性を保って描くかが作品の質を分ける。
現代ならではのもの(VtuberやSNSなど)を使うことで目新しさはあるけど、描いている人間の心情は普遍的で共感ができるものだった。


キウイを引きこもりから解放する時に「天岩戸」を使うのが上手い。アマテラスをまひるにとってのヒーローであるキウイになぞらえてメッセージを伝える。
花音が教習所で教わる一本橋のコツが、人生の目標を見失った花音へのメッセージでもあるという演出も好き。
ラブホ合宿での雨。たいていのアニメでは悲しい心情を表すのに使われる雨が、彼女たちにとってはライブ演出のヒントになるというのが新鮮。その後のライブは思うようにはいかなかったものの、JELEEとしての結束が固まり、逆境を跳ね除け、彼女達らしいライブになった。

コミカル要素もちょうど良くて面白い。ときどき絵のタッチが変わったり。
徹夜で仕上げてアップした作品に変な声が入っちゃってて、呪いの歌としてバズるのは笑えた。

登場人物も魅力的。

光月まひる/海月ヨル

普通を求めて彷徨っていた彼女が花音という光に出会って、自らも光り始めるという、この物語の象徴であるクラゲのような子。
絵を描くことをやめた彼女が、自分の絵とどう向き合うかが描かれていく。

JELEEとして活動を始めたはいいものの、二次創作やアンチコメに自信を失くす。花音が気づいてフォローするけど、本音までは言えないってのがリアル。
他者からの評価だけでは納得できず、基礎から本気で勉強する姿が胸を打つ。『響け!ユーフォニアム』の「上手くなりたい」を彷彿とさせる。
その努力を認めることでまひるを取り込む雪音Pは敏腕だった。

でも雪音Pが求めるものとまひるが足りないと感じていることに齟齬があって、さらに彼女は傷ついていく。
ここで疑問に思ったのは、オリジナリティがあるのになぜ基礎的なことに意識がいってしまうのか?
創作活動を実際にやっていた友人に聞くと、オリジナリティだけでは限界があって、基礎とオリジナリティを掛け合わせることで創作のレベルが上がるらしい。
なるほど。『ルックバック』にも同じような展開があるし、そういうものなんだな。

山ノ内花音/橘ののか

明るくてまっすぐな性格で、人を惹きつける魅力がある。
メロが「見ろバカ」だと知った時のグーパンは痺れた。メロもグループ、ひいては雪音のことを思ってやったことで別に犯罪でもないんだけど、あの表情と言葉はね…。園田海未でもグーで殴るレベル。

行動派の割には母親やまひるを失うと途端に萎れてしまい、意外と他人に依存している。
母親やまひるとの訣別を経て、この先何があっても変わらない「歌う理由」を見つけ、母親への複雑な感情も最後には報われて本当に良かった。

高梨・キム・アヌーク・めい/木村ちゃん

推し活経験者として共感する部分が多かった。
橘ののかと花音をひっくるめて箱推しという解釈にたどり着いたのには感心。

みー子のことで悩んでいた亜璃恵瑠に

誰かを好きであることがおかしいなんて、絶対にありません。
(中略)私は大切な言葉をもらったから、救ってもらったから。信じたんです。私がその人のことを好きな気持ちだけは、絶対に間違いなんかじゃないって。
だから亜璃恵瑠さんも大丈夫です。胸を張って最後まで推して下さい。

第6話「31(サーティワン)」より

こんな素敵な言葉を授ける。
亜璃恵瑠を救えるのは彼女しかいない。

終始、推しに対する真っ直ぐな気持ちが素晴らしい。
「ひとりぼっちを救ってくれるのはいつだって推しなんですよね」「推しの夢は私の夢です」という名言や、花音スランプ時の生配信での叫びは心が震えた。

最終話で推される側になり、ののかにかけられた言葉を繋いでいく姿が素敵。

渡瀬キウイ/龍ヶ崎ノクス

好き嫌いがはっきりしていて、将来の目標をすでに見据えている彼女は、自分の過去との向き合い方を見つけていく姿が描かれる。

中学に入学した途端、小学生までの価値観が通用しなくなるのは共感やばい。
なぜか中学生になると色気づいてきて、女子とコミュニケーションが上手くとれるやつがヒエラルキーの頂点に。去年まで女子と敵対してたくせに。
変わらない人間が"変"になってしまう。
この都落ちは『あの花』のじんたんとか『聲の形』の将也を観た時もそうだったけど、古傷をえぐられるよう。

普通のヤツらは「普通の中学生像」に敏感だから、その価値観が多数派になり、少数派より優れていると勘違いしてバカにする。
キウイのかつての同級生のゲーセンでのあの態度は反吐が出る。
そんなクソどもに

普通のヤツにはなぁ、わかんないんだよ。
好きなものを好きっていうだけでバカにされて、勝手に体が成長して、自分の好きな服を着たら変な目で見られて。そういうヤツの気持ちが。
けど私は、世界に負けて学校に行けなくなった自分のことが大っ嫌いで。もう一回渡瀬キウイのことを好きになりたいのに、ずっとずっと好きになれなくて。
だから見た目も声も体型も性格も居場所もエピソードも、全部全部自分を好きになれるように自分だけで作ったんだよ。
だから俺を否定するな。俺が作った大好きな自分のことを誰にも否定させるもんか。
俺は天下無双の最強Vtuber龍ヶ崎ノクス。なんか文句あるかぁ!!

第11話「好きなもの」より

本当にかっこよかった。
圧倒されて、心が震えて、自然と涙が出てくるシーン。


そつなくこなして最初は上手いけど、夢中になれるやつや地道にやるヤツには敵わない。だからその前に辞めるってのもめっちゃ分かる。
物事を継続できるってのも才能。

花音の過去を姉から聞いたことを知って戸惑う花音に、すかさず自分の黒歴史を披露する優しさ。引きこもりとはいえ、相手の気持ちを察して行動できるからコミュ力は高い。


小春さんは強キャラっぽい登場だったのに、終盤の活躍が無くて肩透かしをくらった感じ。
謎の美女は終盤のピンチに現れると勝手に期待してたのに、なんか勿体無い。

最終話でメロが声を上げることで、花音が前を向いて歌い出す。
まひるでも雪音でもなくメロ。
この行動を起こす理由がイマイチはっきりしない。
雪音の養分という同士であったが、花音と雪音を引き離してしまったことへの贖罪か。
単にサンドー主催のイベントを成功に導くため(雪音のため)の行動だったのか。
イベント後に2人でいたから和解したと考えられるけど、もう少し詳しく描いて欲しかった。

1番好きなのはみー子の回。
お互いへの愛に溢れた親子の関係性が素敵。
好きなことを好きでい続けることの難しさ、それに年齢は関係ない。ありのままでも受け入れてくれる場所があることを教えてくれる。
開き直って全てをさらけ出し、それでもアイドルを続ける馬場静江はすごくかっこいい。

この作品全体を通してだけど、好きを貫くことの難しさとそれが肯定されるのが描かれると弱い。他作品でも優木せつ菜や華満らんなどのエピソードが心に刺さる。

渋谷を水族館にするとか、花音が母親の夢を叶える親孝行とか、粋な伏線回収もたくさんあってすごくいい作品だった。
一番粋だったのはこのアカウント。

見つけた時は嬉しかったけど、リアタイしてたらもっと楽しめたんだろうなという悔しさも残る。
複数作品にハマる器用さは持っていないからしょうがないので、とりあえずまた一ついい作品に出会えたことに感謝。

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