良し悪しがわかるか否かって話

大学生だったある年。
その年の一年での目標を
「コーヒーの良し悪し=美味いマズいがわかるようになりたい」
と設定した。

缶コーヒーなんてほとんど飲んだこともなく、ましてや喫茶店なんて行ったこともない。
苦いものがダメってわけじゃないけど、美味しいと感じるコーヒーには出会ったことが無かったからだ。
その一年間、時折それを思い出してはコーヒーを飲んだりもした。月一未満だったと思うが。

結果、美味しいコーヒーはわからなかった。
しかし、あるエナドリメーカーの出した新作のコーヒーに驚いた。
薄い。水っぽい。酸味がある。
これは美味しくはないという感情。

美味しいコーヒーはわからなかったが、マズいコーヒーを知ることができた。

それからというものの、コーヒーを口にするたび、そのマズいコーヒーを飲んだことを思い出す。
今飲んでいる一杯も、その時のものよりはまあ美味しいと感じる。
水っぽさだったり、浅い酸味を感じなかったり。

モノの良し悪しって結局そういうことなのではなかろうか。

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