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勝手に1日1推し 171日目 「十次と亞一」

「十次と亞一」コドモペーパー     漫画

大大大大好きー!!!めっちゃ可愛いー。大切過ぎて、一気に読むのがもったいなさ過ぎて、ゆっくり丁寧にページを捲ってゆきました。
なのに、週末に何回も読んじゃいました。十次と亞一漬けの週末。なんと甘美でありましたことか。フクシュウのお菓子みたいに(←ぜひ本編にてご確認下さい)。

まず、なんて素敵なの。うっとりっ。てなるでしょう?
「意匠が独創的」って、作中、十次と亞一がお花について話すシーンがあるんですが、まーさーにー!!装丁の意匠が独創的。芸術~。めっちゃ可愛くないですか?!
2人を丸窓から覗き見、って本編の奇譚な雰囲気と乱歩オマージュな内容を連想させつつ、大正ロマンをがっつり抑えた乙女なデザイン。むきゃー、めちゃくちゃ可愛くて好きだー。あえてくすみカラーで仕上寝ているのが現代的で、またそれもいいっ!痺れたー。デザインだけで痺れたー!!!素敵だーー。

「あなたを殺して僕も死にます」
売れない漫画家・小林十次は、ひょんなことから売れっ子の幻想小説家・大江亞一と出会う。
しかしこの男、浮世離れしていて手が掛かる。それにときたま、向けられる視線に妙な気迫があるような……。
大正期の架空の下宿「緑館」を舞台に、複数の文学作品を下敷きにして描く、奇妙な縁が絡み合った二人の男をめぐるミステリー。

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本作は、noteで知りました。
明治~大正、昭和初期っていいよな。って話を以前どこかでしたと思うのですが、ほんと、この頃を舞台に描いた作品に対するアンテナがビンビンなんですよ、私。
この時代の持つ混沌。西洋化が進む中、それもまだまだ和文化のベース上にあり、教育にしろ生活にしろ格差もあって、発展途上な雑多感。何もかもが未知で、でもその未知性に余白と広がりがある気がして、たまらなく魅力的だなって思うのです。
ってことで、見つけた瞬間好きでした。瞬殺でオチました!しかーも、これまた大好きな文学作品を下敷きにしているなんて、好きにならない訳がないし、好きでしかないし、好きだし、好きだし、大好きだし。「お伊勢登場」も「屋根裏の散歩者」も好きだー。乱歩好きには溜まらんですなあ。

この度めでたく書籍化、ばんざーい!
でで、この美しい書影を見た時泣いちゃった。素敵過ぎるよ、ほんと・・・。

コドモペーパー先生は切り絵作家さんでもいらっしゃいまして、その美しい作品の数々にも魅せられます。
そんな繊細な図案さながらに作画しておられる背景やトーン、構図などが本当に美しいんです!十次と亞一を繋ぐことになる「どこにもない庭」の幻想的な風景なんて、んもー、好き。としかなりませんでしたよ。
実際、切り絵のコマが存在しているのも素敵過ぎます!裏表紙の丸窓から除くのも切り絵(だと思います)。レトロな大正ムードが味わえます。まるで当時の乙女ロマン、小林かいちや加藤まさをのデザインのようなんです。
ですので、是非とも実物を手にして頂きたいです!口絵と遊び紙も粋なんですよお。

内容もかの時代を反映しており、実際、作中には乱歩、ポー、谷崎の小説が登場したり、怪しい殺人をほのめかしたりで、レトロチックです。
しっかりミステリでありつつ、そこに終始せず、十次と亞一、2人の数奇な運命を巡るドラマとして描かれております。赤ちゃん?幼児?みたいな亞一と彼を放っておけず、せっせと世話する十次の関係がSF(少し不思議)で、つかみどころがなく奇妙で愉快なんですよねえ。こちらも時代にあった独特なキャラ設定、特に亞一の境遇を含め、とことん時代リスペクトが伝わってきます。先生もこの時代がお好きとおっしゃっていました~。

亞一の創造性や、一番星を捕まえたり千鳥を夢見たり、という浮世離れした言動は、彼自身が紡ぐ幻想小説さながらで、私たちを耽美な世界にいざなってくれます。
そんな本編内での幻想と現実の境目の曖昧さが最高に不思議で最高に素敵なんです!
そして、それを橋渡す存在として千鳥というモチーフが描かれているのも、はあ、いいなあ。ってなりました!やっぱり鳥ってファンタジーとリアルを繋ぐ生き物なんですよね。「君たちはどう生きるか」・・・。

とにかく!

昼は夢、夜ぞ現(うつつ)

って、乱歩のお言葉通りの寓話的で幻想的な作品ってことでございます。と言いつつ、あくまでオマージュとしている(たぶん)のみで、奇怪で猟奇的という訳ではありません。淡泊で柔らかな線描には、穏やかさと温かさが宿っております。ミステリ要素のある不穏さとアンバランスなあっけらかんとした明るさが共存しているのも面白いなって思いました!

随所にコドモぺーパー先生の、先達の様々な文化や芸術に対する愛と敬意を感じました!岡本太郎氏の手の椅子(たぶん)とかもー、んもー。好き。

いい意味でなんですけど、本作って、なくても困らないけど、あったら嬉しいし、幸せだし、癒されるし、って感じの作品だと思うんです。だからこそ何ものにも代えがたい宝物になるんだよなって思うんですよ。理由とか意味とかを求めるんじゃなくて、心からいいなって感じられるそんな特別感があるって思うんです。だから本当に大切だし、丁寧に読みたいし、何度も読み返したいしってなるんだろうなあって。

あぁ、この大きすぎる感情をどう伝えたらいいか分からない。この良さを言語化するのって本当に難しいです。言葉では全く語れる気がしないので、実際お手に取って感じていただきたいなあって思います。是非ご一読下さい!!厚さ3㎝の幸福を、是非!

先生の新連載「ブブとミシェル~雨上がりの天使~」も本作同様、世界観がとても素晴らしいので、こちらも併せてどうぞ。
切り絵作品も素敵だよなあ・・・。

ということで、推します。

おまけ(どうしてもお見せしたい書影全貌!)

美しい書影


しおりも素敵

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