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野生
海のない町で育った。
もっと正確に言えば、山のある町で育った。
家の前には田んぼが広がっていて、ちょっと行けばすぐに山があった。
名もない神社がたくさんあって、秘密基地を作っては怒られた。
ドラえもんに出てくるような”空き地”がまだ存在して、私を含めた子どもたちは、「なにもない」ところで遊ぶのが得意だった。
おにごっこの種類には地域性が出るらしいので詳細は伏せるが、集まった人数と年齢構成によってちょうどいい遊びを持ち寄っては改良し、広めることが得意だった。
食べられる植物についても教わった。
つつじの花は小学校時代の全員が蜜を吸ったことがあるんじゃないだろうか。
最近の小学生は、つつじはともかく、ホトケノザの蜜は吸わないらしい。
ヘビイチゴは食べられない。グミの実は見た目と名前から期待するほどじゃない。桑の実は完全に黒くなるまで待つ。
のびるを掘り返しては味噌汁に入れてもらい、むかごを取ってきてはご飯に入れてもらい、タケノコだけは所有者のものだから絶対に手を付けるなと教わった。
春になると、三世代で山菜採りに行くのが恒例だった。
難しいこともなければ危険なこともない、つくしを採るのが一番好きだった。
採りすぎて、袴を取るのが大変だった。そして大人の味なので子どもたちは食べない。採るだけだ。
よもぎはお菓子になるので、味も含めて好きだった。
あけびの芽、イタドリ、コゴミ、フキノトウ、タラの芽、コシアブラ。
大人になってからスーパーで10個200円とかで売られているのを見ると、需要と供給…ってなる。育種してるものもあるんだろうけど。
一度、弟と二人だけで、自転車に乗って、つくし採りに行ったことがある。
つくしを採るより先に木に登ってしまうのは仕方がない。
高いところが好きなのだ。
いまだに、木を見ると、どうやったら登れるかシミュレーションしてしまうんだが、友達で木に登ったことがある人はあんまりいないようだ。
親に教わった「食べ物の採り方」を、子どもだけで採りに行く、というのが、なんとなく野生っぽいなーと思った思い出。
持ち帰った獲物は、もちろんみんなで食べるんだけど。
6月10日、1時間半、900字
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