あなたという冬を抱きしめて
1‘
あなたを初めて、見たのは雪が降る日
公園のベンチで、ただ座っていた
周りは変な目で彼を見てはその場を後にしていた。
私もそうするはずだった。
2‘
飛鳥「ねぇ…?」
?「あんた…だれ?」
気がつくと、声をかけていた。
飛鳥「私は飛鳥、あなたは?」
3‘
⚪︎「〇〇…」
飛鳥「どうして、ベンチに座ってるの?」
⚪︎「ベンチは座るものだろ?」
飛鳥「そうじゃない、雪が降ってる中で座ってるのかを聞いてるの」
4‘
⚪︎「あぁ…家がないんだ…」
飛鳥「どうして?」
⚪︎「………」
飛鳥「お金は?」
⚪︎「ない」
5‘
飛鳥「それなら…」
私は何を言おうとしてるの?
飛鳥「うちにくる?」
⚪︎「……」
6‘
その時…あなたが顔をあげて、
私を見る。
飛鳥「っ…」
彼の目はすごく、透き通った。
綺麗な白銀の目をしていた。
7‘
〜〜〜〜〜
8‘
飛鳥「まずはお風呂に入ってください」
⚪︎「着いてきてなんだけど、本当にいいのか?」
飛鳥「えぇ」
⚪︎「すまない…」
脱衣場に入る〇〇。
9‘
飛鳥「はぁ…どうして…連れて帰ってきちゃったんだろ…」
コートをハンガーにかけて、冷蔵庫からビール缶を取り出す。
“プシュッ”
飛鳥「ゴクゴクゴクゴク…はぁ〜、うまい…」
10‘
これからどうしよ…
そもそも、どうして連れて帰ってきたのかも
自分でわかってないのに…
ここに住ますのも、部屋は一つ
11‘
人1人を養うぐらいの稼ぎはあると思う。
でも、私がそれをする義理も義務もない
“ガチャ”
飛鳥「私はどうしたら…」
⚪︎「飛鳥さん…?」
12‘
飛鳥「っ!…上がっていたんですね?」
⚪︎「あぁ、ありがとう」
飛鳥「い、いえ!私も入ってきます」
⚪︎「わかった」
13‘
〜〜〜〜〜
14‘
飛鳥「あがりました…それで、お話したいことがあります」
⚪︎「なんだ…」
飛鳥「これからのことです」
⚪︎「それなら、明日にでも出ていくよ」
15‘
飛鳥「あなたがそうしたいならそれもいいです…私から提案です」
⚪︎「提案?」
飛鳥「私はあなたを養うだけの稼ぎはあります」
⚪︎「それは君に得がないだろ?」
飛鳥「そうですね、なので家事をしてもらいます」
16‘
⚪︎「家事?」
飛鳥「そうです」
⚪︎「そんなことでいいのか?」
飛鳥「はい」
⚪︎「そうか…飛鳥さん…」
17‘
飛鳥「飛鳥でいいです」
⚪︎「飛鳥、俺の話を聞いてくれるか?」
飛鳥「はい」
⚪︎「俺は少し前まで、普通に働いて暮らしていた」
18‘
それから、〇〇さんは話してくれた。
付き合っていた彼女さんが病気で亡くなったこと
働いていた上司が自身の不正を〇〇さんに
押し付けたこと…
19‘
飛鳥「そんな…」
⚪︎「だから…俺は…」
“ぎゅっ”
⚪︎「っ…」
〇〇を抱きしめる飛鳥。
20‘’
飛鳥「大丈夫です…大丈夫」
どうして、あなたの瞳が
冬のように冷たい目をしてたのか…
どうして、あなたを
連れてきたのかわかりました
21‘
私は…母を思い出したのだ…
〇〇さんの瞳は母に似ている
一見冷たい目をしてるのに、
瞳の奥底は優しい目をしてる。
22‘
彼の瞳の奥には春のような暖かい
陽の光が見えた。
あなたは絶望したからあの場所にいたんじゃない
誰かと関わりたくて、あそこにいたんだ。
23‘
飛鳥「私はここにいます、いつでも頼ってください」
⚪︎「いいのか…?こんな見ず知らずの男を…」
飛鳥「あなたなら信じれます…」
⚪︎「ありがと…」
冬みたいなあなたを抱きしめて、温めたら
いつか春が来るかな…?
24‘‘
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品内での表現・行動なので実際に行っても、
一切の責任は取りかねますのでご了承ください。
ありがとう!