叶うなら僕の音楽を奏でるのは君であってほしい
1‘
僕はストレス性難聴だ。
中学生の時にいじめられたのが原因
まぁ…そんなことはどうでもよくて
とにかく僕はほとんど音が聞こえない。
2‘
でも、そんな僕でもはっきりと聞こえる音がある
それは音楽室から聞こえてくる
初めて、聞いたのは大学1年の時…
中庭で昼寝をしてた。
3‘
最初は驚いた…
それは綺麗な音色だったからだけではない。
こんなにもクリアに聞こえたことが久々だった。
不思議と心が躍った。
4‘
必然的に僕は音の発信源に向かった。
そこには…女性がピアノを弾いていた。
⚪︎「綺麗…」
気がつくと言葉が漏れていた。
5‘
?「だれ?」
女性がこちらを向く。
何かを言っているが聞こえない。
?「ん?」
不思議そうな顔をする女性。
6‘
⚪︎「ご、ごめんなさい…僕は耳が聞こえにくいんだ」
そう伝えると、不思議そうな顔していた彼女は
笑顔になって、近くに寄ってきて
目の前で喋りかけてくる。
7‘
絵梨花「私は生田絵梨花!1年生!あなたは?」
⚪︎「僕は秋元〇〇です、学年は生田さんと同じ1年」
絵梨花「そうなんだ!よろしくね!それより秋元くんはなんでここに?」
⚪︎「ぁ…中庭で昼寝してたんだけど…ここから綺麗な音がしたから…」
8‘
絵梨花「本当〜!嬉しい!」
それから仲良くなるのに時間は掛からなかった。
君は社交的でこんな僕にも普通に接してくれた。
僕は君のピアノを聴くために音楽室に通った。
9‘
〜〜〜〜〜
10‘
絵梨花「耳が聞こえにくいのにピアノは聞こえるの?」
⚪︎「ん〜…そうだね…ピアノっていうより絵梨花が弾いてるから聞こえるんだ」
絵梨花「え…」
⚪︎「なんでかはわからないけどね」
絵梨花「そ、そっか…」モジモジ
11‘
⚪︎「どうしたの?」
絵梨花「なんでもない!」
そっぽを向いてしまう絵梨花。
⚪︎「??」
12‘
〜〜〜〜〜
13‘
絵梨花「そろそろ…卒業だね」
⚪︎「うん…」
絵梨花「私ね…結婚するんだ…」
⚪︎「え…」
絵梨花「親に決められた結婚なの…」
14‘
⚪︎「そうなんだ…」
絵梨花「うん…」
絵梨花はお嬢様だからそういうこともあるんだな…
もう…このピアノの音色は聴けないのか…
また…僕の世界からクリアな音がなくなるのか…
15‘
いやだな…ん?いやだ?
なんで…モヤモヤするんだろ…
そうか…僕は絵梨花が好きなんだ…
好きだから胸の奥がモヤモヤするんだ。
16‘
⚪︎「絵梨花…」
絵梨花「なに?」
⚪︎「僕は君が好きだ」
絵梨花「…え?」
⚪︎「結婚するって聞いて…胸がモヤモヤしたんだ…それで気づいた…僕は君が好き」
17‘
絵梨花「〇〇くん…」
⚪︎「僕の世界はノイズのようにクリアには音が聞こえない…君のピアノを聴くと僕はその時だけみんなと同じになれる…」
絵梨花の手を握る。
⚪︎「僕は君の奏でる音色を隣で聴いていたい…だから僕を隣で歩かせてくれないかな?」
絵梨花「はいっ!」
18‘
僕と絵梨花は付き合った。
もちろん、絵梨花のお父さんに挨拶をして
許可をもらった。
最初は反対されたけどね…
19‘
_____
20‘
“たらららっらら…らららら…らららっらら”
絵梨花「ぁ…お腹蹴った」
⚪︎「美月は絵梨花のピアノが好きなんだね」
絵梨花「あなたと同じね?」
⚪︎「そうだね」
21‘
絵梨花のお腹を撫でる〇〇。
絵梨花「元気に生まれてね〜」
⚪︎「そうだね」
僕は今でも聞こえづらい…
でも…絵梨花の声はクリアに聞こえるようになった。
22‘
絵梨花の声はピアノの音色と同じで
透き通った…綺麗な声
美月の声もちゃんと聞こえるといいな…
23‘
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品内での表現・行動なので実際に行っても、
一切の責任は取りかねますのでご了承ください。
ありがとう!