春に咲くこの花の名前を僕は知らない
1‘
〇「綺麗だな〜」
僕は観察するのが好きだ。
人、花、景色、生き物
一つ一つ、個性があって楽しい。
こんな僕は周りから浮いてる。
2‘
まぁ側から見たら変人だ。
珠美「また観察してるし」
〇「珠美か」
珠美「その反応、失礼だし!」
〇「ごめんごめん」
3‘
この子は坂口珠美
4歳の頃からずっと一緒だ。
いわゆる幼馴染っていうやつ
僕が1番、観察してる対象。
4‘
珠美「今度は何を観察していたの?」
こんな僕の性格をわかった上で僕といてくれる。
〇「今はこれだよ」
地面に咲いている花を指差す。
5‘
珠美「へぇ〜、綺麗じゃん」
〇「あぁ…僕はずっと見てきたけどいつでも綺麗だ」
珠美「いつも見てるの?」
〇「うん、そうだね」
6‘
珠美「へぇ〜、意外!」
〇「そうかい?」
珠美「だって、一度観察したらそれ以降は観察しないじゃん」
〇「この花は特別だよ」
坂口を見つめながらそう呟く、〇〇。
7‘
珠美「そうなんだ〜」
〇「そろそろ帰ろっか」
珠美「そうだね〜!」
2人は学校を出て、いつも通りの道を歩く。
8‘
珠美「ねぇねぇ!」
〇「どうしたの?」
珠美「珠美ね?髪を切ろうと思ってるんだけど、どうかな?」
〇「どんくらい切るの?」
9‘
珠美「ん〜、肩くらい!」
〇「…いいんじゃない?」
珠美「そっか!わかった!それで話変わるけど、さっきの花の話をしてよ!」
〇「…どうして?」
10‘
珠美「だって、〇〇がずっと興味を持ってるなんて、珍しいから!いつから見てるの?」
〇「う〜ん、いつからだったかな〜…かなり昔で覚えてないくらい」
珠美「そんなに?」
〇「うん、気がついたら観察してた」
珠美「そうなんだ〜、あの花の特徴は」
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〇「そうだな、すごく元気なんだ、いつでも元気で、凛とまっすぐに立っている」
珠美「強い花なんだね?」
〇「うん、強い」
珠美「あの花を好き?」
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〇「う〜ん、どうだろ?」
珠美「嫌い?」
〇「嫌い…じゃないかな」
珠美「わからないの?」
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〇「うん」
珠美「そっかぁ〜」
〇「うん」
それから2人は何も話さずに帰路についた。
14‘
〜〜〜〜〜
15‘
今日は日曜日だから休み。
僕は暇だから近くの公園に行き、観察対象を探していた。
どうやら今日は興味を惹かれる観察対象はいないみたいだ…
とりあえず、ベンチに座り空を眺めていた。
16‘
珠美「今日は空を観察してるの?」
〇「っ…」
空を眺めてると僕の顔を覗き込んでくる珠美。
〇「急に覗き込んできたらびっくりするよ」
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珠美「すまんw」
僕は体勢を戻す。
〇「…っ」
珠美「どうかな?」
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すぐに声が出なかった。
なんでかわからないけど、胸の奥がざわついた。
〇「…綺麗だよ」
珠美「本当?嬉しいな///」
〇「それに可愛いよ」
19‘
珠美「どうしたの?今日はやけに褒めてくれるね?」
〇「うん、言わなきゃって思ったんだ」
珠美「ありがとう、嬉しいよ」
〇「うん」
僕は突如として訪れた春に咲く花の名前を知りたいと思った。
20‘
この作品はフィクションです。
実際の団体とは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品としてなので、実際に行っても、
責任は取りかねますのでご了承ください。
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