寒桜…咲く頃に…私は思い出す
1‘
さくら「寒いね」
○「そうか?」
隣で不思議そうに笑う〇〇。
さくら「〇〇は北海道生まれだからそう思うんだよ」
2‘
○「そんな事ないと思うけど、ふふっ」
楽しそうに口元を隠しながら笑う〇〇は男性なのに
女性のような艶やかさがある。
さすが橋本先輩の弟なだけある。
3‘
そんな事を考えて歩いてたらいつの間にか
隣を歩いてたはずの〇〇がいなかった。
後ろを振り向くとしゃがんで何かをしている。
私は今来た道を少し引き返す。
4‘
さくら「何してるの?」
○「かまくら作ってた!」
小さいかまくらを作って、こちらを見て
楽しそうな顔で報告してくる〇〇。
5‘
その顔は先ほどの艶やかな顔とは違い
子供のような顔をする。
そんな〇〇にキュンキュンしちゃう。
6‘
さくら「綺麗に作ったね?」
○「だろ?ふふっ」
さくら「手が真っ赤だよ?」
○「本当だ〜」
7‘
私は〇〇の真っ赤な手を見るだけで
寒く感じてしまう私をよそに〇〇は
楽しそうに笑っている。
〇「少し待ってて!」
8‘
そういうと〇〇はどこかに走って行ってしまった。
私は〇〇にラインして、すぐ近くの公園で待つことにした。
さくら「あ、寒桜だ…綺麗…」
私は少し、咲くには早い桜を見上げた。
9‘
少しばかし、桜を気を取られていると
頬に温かい何かが当たる。
さくら「きゃ!」
○「ふふっ…温かいの買ってきたよ」
10‘
驚いて後ろをみると、缶を持った〇〇が立っていた。
○「ココアと紅茶、どっちがいい?」
さくら「じゃあ…ココア!」
○「はい、どうぞ」
11‘
私は受け取ったココアを開けて、一口飲む。
さくら「温かい…美味しい」
○「よかった」
さくら「ありがとね」
○「どういたしまして」
12‘
“あちち”って言いながら舌を出す〇〇。
舌を出しながらこちらを見る〇〇は子供ぽい
なのになぜだか、妖艶さを感じる。
さくら「っ……」
13‘
○「さくら?どうした?」
さくら「なんでもないっ!」
不思議そうな顔する〇〇。
色々な表情を見せてくれる。
14‘
そんな〇〇に私は恋をしてる。
〇〇はどうなんだろう?
中学の時に北海道から転校してきた。
大学も一緒でいつの間にか恋してた。
15‘
さくら「〇〇っ!」
○「ん?どうした?」
下を向いていた私とは違い
上を向いて寒桜を見ていた〇〇
呼びかけるとこちらに振り向く。
16‘
さくら「〇〇は…好きな人とかいないの?」
○「…どうして?」
さくら「少し気になっただけ」
○「どう思う…?」
〇〇はまた桜の方に顔を向ける。
17‘
さくら「いるんだ…」
○「どうしてそう思うの?」
さくら「〇〇は何かを隠した時は上を向く癖がある」
○「そっか」
18‘
〇〇は桜から視線を外し、下を向く。
○「僕はさくらが好きなんだ…」
さくら「っ…」
〇〇からの突然の告白
19‘
嬉しいはずなのに…素直に喜べないのは…
地面を見ていた顔を上げて私を見る目は
なぜだか、寂しそうな目をしている。
20‘
その表情の意味を考えてると
強い風が吹き荒れて、桜巻き込み
私の視界を遮る。
21‘
風が止み…視界があけると
そこに〇〇はいなかった…
そう…〇〇は2年前に死んだ…
病気だった…
22‘
あの時…〇〇は自分の病気を知っていたんだと思う。
だからあんな目をしていたんだ
私は気づいてあげられなかった…
23‘
あれから私はこの時期になると
この公園にくる…
そして、私は〇〇を想い、涙する…
さくら「〇〇…会いたいよっ…!」
ありがとう!