ひとりぼっちにしてくれた、映画館での時間
初めてひとりで映画館で映画を観たのは、確か中学2年生の時。観たのは「黄泉がえり」だったと思う。
小学生までは、バスなんて1時間に1本あるかどうかの田舎に住んでいたので、おとなの運転する車でしか映画を観に行けなかった。
中学生になり引っ越した海の見える街には、バスも1時間に2本以上は当たり前にあり、バスが向かう駅前には、当時3つも映画館があった。
ひとりでも映画を観に行けることがうれしかった。
その3つあった映画館も、わたしが学生の間にすべてなくなったけれど。
わたしは、ひとりで映画を観ることがすきだ。
上映中は、暗闇のなかで作品と自分の1対1の世界だし、すきなだけ余韻に浸っていられる。
さらに、ひとりだと終わったあとに、映画の感想を無理に話したりしなくていいし、自分のタイミングで現実に戻ってくればいい。
中学生の頃、わたしはクラスの中心的な男の子に、「なんでいつもつまんなそうなの」っていわれるような子だった。クラスの中心からちょっと離れて、冷めた目でみんなを見ていた。そんなわたしにとって、だれかを気にせずに楽しむことができるのが、映画を観るという行為だったのだと思う。
今なら映画館に行かずに、NetflixやAmazonプライムでいくらでも観られるけれど、今でも印象に残っているのは、映画館で観たアルマゲドンやもののけ姫だったりする。
映画館はさみしくないのに、ひとりぼっちにしてくれる最高の場所だった。
わたしにとって、今もこれから先もずっとそうなのだと思う。