枕の出発点
枕はどのようなことをきっかけに生み出されたのだろう。
字と語
【字源】
枕という漢字は、「木」と「冘」の組み合わさった文字で、甲骨文字で、「冘」は神への祭りの犠牲として「水中に牛を沈める」ことを意味したといわれています。
周王朝時代の金文字では、「冘」は罪に対する罰であり、「人が首の付け根に重い枠をはめられて上から押さえられる」ことを意味したそうです。
つまり、枕は頭を下に沈めるものとしての意味の表れであるとされています。
また『古事記』や『万葉集』では、万久良・麻久良・摩倶羅という漢字で示されています。
【語源】
さまざまな説があり、定説になっているものはないようです。
白崎繁仁氏が矢野憲一氏の著書『枕文化史』(講談社・昭和60年刊)で諸説について記述されているものをこう要約しています。
1 頭のすきまを支えるので、マクラ(間座)『大言海』大槻文彦説
2 マはアタマの略でアタマクラ(頭座)『日本訳名、和漢三才図会、茅窓漫録』貝原益軒説
3 目を置いて休むのでマクラ(目座)『和訓栞・類聚名物考、俚言集覧』谷川士清説
4 マはカミ(首)「東雅」新井白石説
5 袖を巻いて枕としたものでマク(巻)『古事記伝、俚言集覧』
6 マキクラ(纏座)キとクを縮めた『古事記伝、和訓集説、雅言考』
7 マクとクラ(座)の合成語『国語の語根とその分類』大島正健
8 神霊を呼ぶ手段として枕を使用するためマクラ(真座)『文学以前』高崎正秀」2
どれも本当のようで答えは出ないですが、どの説もクラを「座」と解釈しているところが共通点です。
他に魂倉(たまくら)という説もある。枕を頭にあてると魂が肉体から離れて枕の中に宿る。
これを睡眠というので、魂の倉とする説明がもっとも妥当であると『平凡社大百科事典』で記されています。
また、『日本枕考』の中で、小川光晹氏の『上古、上代の寝所と寝具』の中で述べられたことを紹介しています。
「『……クラということばは、座のほかに、蔵、倉を意味する場合も多いが、マクラのクラもじつはそれからきているものではないかと考える。もっとはっきりいうならば、マクラというものは魂の倉(魂魄の容器)という機能をもっていた。つまり、タマ・クラであったものが、これがつづまってマクラになったと思うのである。……』と。」
諸説いろいろあって面白いですね。
恋愛の出発点
ひとつの恋愛における始まりはどこからなのだろうか。
出会った時から始まっているとも言えるし、どちらかがアクションを起こした時からいきなり始まるとも言える。
運命と縁が回り始めた瞬間が出発点なのだろうか。
どちらかが良いと思っていても誘えなければ始まらない。
またその誘い方次第ではさらに始まらない。
ダメ元で行く勇気がなければもっと始まらない。
「どうしても!」と思うその衝動と絶対の期待が人をファーストアクションへと突き動かし、そこからやっと回り始めるのだと思う。
枕も同じ
最初に使ってみようと思わなければ、その出発点がなければ辿り着くことはない。
理由は様々で首や肩が痛いからとか、ぐっすり快適に眠りたいからとか、どうしても!と思った時、やっと出発点に立つ。
人は何かを絶対得たいと思った時、それが叶うに違いない。
枕探しの出発点に、立つところから始めよう!
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