お腹の中のお魚
私は3年前からお魚を飼っている。
一人暮らしもいいけれど、
何か生き物と一緒に
暮らしたいなと思ったから。
毎年、お魚は子供を産んで、
またその子供が子供を産んで・・・
もう、5代目くらいになった。
私とお魚たち、
どちらが長く生きるだろうかと
すこし心配になってきた。
そうしているうちに、
わたしにも赤ちゃんができた。
妊婦検診で、
はじめてお腹の中の赤ちゃんを見た日。
赤ちゃんは、ビー玉のような
きれいなきれいなマルだった。
これからどうやって
人間になるのだろう。
次に病院へ行ったときには、
そら豆のような形になっていた。
まだまだ、とっても小さな赤ちゃん。
とても人間になるなんて
想像がつかない。
その次病院へ行ったときには
驚いた。
赤ちゃんは、お魚みたいに
元気いっぱいお腹の中を泳ぎ回っていた。
左右に行ったり来たり。
驚くほどのスピードで。
赤ちゃんは生きているんだ、と
ようやく実感した瞬間だった。
それから赤ちゃんは、
グングン人間の形に近づいて。
しばらくすると、
お腹の中で
ポコポコ・・・
ポコポコ・・・
空気が動いているみたい。
それがだんだん、“胎動”だと
ハッキリわかるくらいに
動きが強く強く、なってゆく。
今ではすっかり、
人間の赤ちゃん、そのもの。
かわいらしい鼻も、ちょんとした口も、
ちゃんと曲げられる肘と膝も、指の1本1本まで。
全部きれいにできあがっている。
私はなんにも
赤ちゃんのつくり方を知らないのに。
私の身体は、
どうして上手に作れるのだろう。
精密機械のような人体構造を
こんなに短期間で作り上げてしまうなんて
不思議だ。
そして、
神様はなぜ、
妊娠する権利を、女性だけに与えたのだろう。
こんなにも神秘的で
ステキな人生の贈りものを
女性だけにくれたのだろう。
赤ちゃんが産まれた日に思った。
私は女性に産まれてきてよかった。
女性として、妊娠や出産を経験できて、
本当によかった、と。