文目(あやめ) / 人格紹介
□文目(あやめ) 女性
前世記憶から成る人格さん。
おそらく、前世記憶「みやび」のその後。
解離したのだと思われる。
遊女。
文目は遊女としての名。
透けるほどに白い肌。
赤く薄い唇。
ほっそりとした腕に、艶っぽい眼。
客のいない時は煙管を嗜む。
部屋(座敷)持ちであること、客の質が良いことなどから、昼三と呼ばれる花魁と思われる。
呼び出しであったかは不明。
以下、代筆しつつ、断片的ではあるものの記憶を記録しておきます。
*
女衒に買われて、遊郭に連れていかれた。
これからはここで生きるのだなと、どうでもいいなと思った。
もともと器量を買われてどこぞの屋敷へ売られるところだった様だし、場所が変わっただけなのだろうなと思った。
学ぶのは意外と性に合った。
知らない世界が広がるということの楽しさを覚えた。
なんであれ上手くなればなるだけ、女郎としての今後を期待されたし、そうすれば多少のわがままも利く、面倒事をする間があれば学ぶことに時間を割けた。
気がつけば回りの評価は勝手に上がっていた。
理知的で、何処か遠くをみるような様子に男が気を引きたくなるのだろうと思った。
実際、なじみの客(現実での元友人)に、「ただの一度も俺を見なかった」と言われた。
私は遠くをみていたのだろう。
広がるはずの世界はいつの間にか狭く閉じた世界へと変わっていった。
私は何処かへ行きたかったのだろうか。
昼見世。
なじみの客に膝を貸しながら、店の二階にある自室から外をみる。
店の前には掃除をする女郎(現在の友人/彼女はその後足抜けしている)が見えた。
いつもの自由な遊び人が歩いている背中が見えた。
何故かこの人に私は弱い。
焦がれていたと言っても良いかもしれない。
この小さな檻の中のしきたりなぞ知らぬとばかりに、遊び歩く姿に惹かれたのだろうかと思う。
ただそれももう、私の立場からして彼が来ることはないだろう。
私には金がかかる。
到底彼に払えるものではない。
"仕事"中、いつかの誰かのあの眼が、意識の端から現れる。
どうしても忘れることができない、扇情的な眼をして私を見下ろしていた。
何故だかは知らないし、私には関係がない。
ただそれでも、彼が何を想いあの出来事が起きたのかを知りたかった。
何故、あんな眼をしていたのかを。
年期が明けた。
私は自由になった。
なじみの客のひとりと一緒になった。
何て事のない、他愛のない人だった。
それでもその何でもない所が気に入って、一緒になった。
町で店を開くことになり、私は食事どころの女将になった。
子供もできた。
毎日の繰り返し。
それでもそれが愛おしいと思えるくらいには幸せだったように思う。
ある日、背後の店の扉が突然開いたかと思うと、振り返った瞬間に私は斬られた。
昔のなじみの客か誰かだろうか、死にゆく私には定かではなかったけれど、ああこれで終いか、そう思った。
*
人格さんとして形になってから、心情の変化があったようにみられます。
私の中でのハツハルとの再会が、彼女のトラウマや解離していたと思われる感情等がない交ぜになりひどく混乱するように。
私の解離の症状として、左耳から悲鳴が聞こえてくるのですが、彼女のものと思われます。
本来はとても理知的で落ち着いた女性です。
いつも煙管を吹かしています。
女の私もドキッとするくらい、所作がとても美しい。
記憶として特に鮮明なのが、二間ある部屋の窓から外を眺めている場面。
最期に袈裟懸けに斬られる場面。
彼女の人生は決して楽なものではなかったと思いますが、それでも生き抜いたと、そう言える彼女の強さはとても尊いものだと思います。
今に持ち越してしまった心、辛いと言えなかった辛さが少しでも軽くなることを願います。