「もう正義のヒロインなんて願い下げ!」第17話
〇大法廷
リリー、ソフィアナ、アンナ「(声を合わせて)お待たせエレナ!」
驚くエレナ。
エレナ「(小声で)え、どうして?ここに……」
3人、裁判長の前まで歩く。
その姿は堂々としている。
リリー「裁判長、エレナに代わって私どもを証言台に立たせてください」
弁護士「いきなり来て何事だ!証言台に立たせられるわけないだろう!」
誰も弁護士の発言を意に介さない。
アンナ「私どもは聖騎士団の団員でした。エレナのこともミザリーのこともよく知っております」
裁判長、3人を見て考え込む。
傍聴人たち「聖騎士団だったのなら、証言する資格があるんじゃ」
「何を言う気なんだろうね」
「見て、あの弁護士。明らかに苛立ってる」
「裁判長がどう判断するのか」
裁判長「……許可しよう」
喜ぶ3人。
1人ずつ証言台に立つことになった。
裁判官「名前を」
リリー「はい。リリーと申します」
リリー、エレナを真っすぐ見つめて、
リリー「私はエレナによって聖騎士団を辞めさせられました。エレナが勲章を受けたことで人事権を発動する権利を手に入れ、それで聖騎士団を追われたのです」
エレナ、表情を変えずリリーを見つめる。
傍聴人たちからは驚きの声が聞こえてくる。
リリー「しかし」「それは当然です」
「私は魔獣が出た舞踏会で、戦わず真っ先に逃げ出したのですから」
「それだけではありません。エレナの友人であるフェデリック・ド・フーシェのことも脅迫しようとしました」
その場にいるほとんどの人は、リリーのこの発言に驚いている。
裁判長「そ、それは事実なのかね?」
リリー「はい。事実です。聖騎士団でという魔獣から人々を守る立場にあったにもかかわらず、私は真っ先に魔獣から逃げ、人の弱みを握って脅迫しようとする……どうしようもない愚か者でした」
裁判長「事実であるならば、何故そのようなことを?自分が不利になるだけじゃないのかね?」
リリー「この神聖な大法廷で事実を打ち明け、真人間として証言したいからです。私は自分の大嫌いな部分、人として間違った行動を正直に打ち明けました」
「ですので、」
リリー、深く息を吸って、
リリー「これから私の証言する内容に嘘など一つもない。そのことをお分かり頂けたかと」
静まる大法廷。
検事が沈黙を破った。
検事「ではリリーさんにお尋ねします」
検事、証言台に近づく。
検事「被告 ルドルフ・ポラストロンとミザリーの関係は?」
回想シーン
× × ×
〇お城
ミザリーの去り際、首筋に赤いキスマークがあった。
カツカツカツ……とハイヒールの足音が遠ざかる。
リリー、無言で立ちつくす。
× × ×
リリー「ルドルフとミザリーは」
「恋人関係にありました」
ルドルフ、(何故知っている?)という表情。
ミザリー、どこを見ているのか分からない真っ黒な瞳。
検事「恋人関係?」
リリー「そうです」「ミザリーは団長であるにもかかわらず、魔獣が出現した場に赴かないことがありました。その晩は首筋に大きなキスマークをつけていました」
検事「ミザリーの首筋にキスマークがあったとして、ルドルフがつけたものとは限らないのでは」
リリー「いいえ。あれは確かにルドルフがつけたものです。ルドルフは……」
「女を抱く時、必ずハート型のキスマークをつけます」
驚いて目を見開くミザリー。
リリー、ミザリーの方を向いて、
リリー「驚いた?」
ルドルフ、気まずそうな表情。
リリー「ルドルフに抱かれていたのはあなただけじゃないの、ミザリー」
「確か私にこう言ってたわよね。『風見鶏みたいにあっちこっち向いて、強そうな方につくけど、いつも詰めが甘いのよね』って」
風見鶏のイメージ画
リリー「そう。私は優秀な風見鶏だった。ルドルフかミザリー、どちらにつこうかいつも風を読んでいたの。でもね、」
「そんな偽物の正義のヒロインなんてもう願い下げ!」
ミザリー、悔しそうな表情。
リリー、余裕の表情。
リリー「風見鶏は卒業したの。言ったでしょ?『真人間として証言したい』って」
リリー、裁判長の方を向いて、
リリー「裁判長」
「ルドルフとミザリーは対等な恋人関係にありました。、セナ―トゥス殺害計画は、ルドルフと魔獣使い、そしてミザリーの三者で企てたことに疑いの余地はありません」
沈黙が流れる。
リリー「これで私の証言を終わります」
リリーが席へつく。
続いてソフィアナが証言台に立った。
ソフィアナ「私の証言を始めます」
ソフィアナを真っすぐ見るエレナとフェデリック。
悔しさで唇を噛むミザリー。
(続く)
第18話↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?