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「もう正義のヒロインなんて願い下げ!」第14話

〇元老院の議場(朝)

   セナ―トゥスの登場に驚くルドルフ、国王、元老院議員たち、そしてエレナ。
   セナ―トゥスの立ち姿は凛としている。
   セナ―トゥスの斜め後ろにはフェデリックが立っている。

セナ―トゥス「もう一度言おう。私もルドルフ司令官の元老院入りには断固反対する」

   議会は騒然とする。

議場「静粛に!国王の御前です」

   議長、セナ―トゥスの方を向いて、

議長「セナ―トゥス様、どういうことでしょうか」
セナ―トゥス「ルドルフは元老院の議員として相応しくない」
議長「しかしですね、もうルドルフの……」

   国王、立ち上がって、

国王「議長」

   国王、議長を制止した。

国王「セナ―トゥス、続けてみよ」

  ルドルフ、驚いた表情。

セナ―トゥス「そこにいる聖騎士団の司令官・ルドルフこそが、魔獣使いと共謀して元老院を襲わせた張本人である」

  国王、驚いた表情。

元老院議員①「何を仰っているのですか。議会が襲撃された時、ルドルフはミザリーと戦い、魔獣を追い払ってくれたのですよ」
元老院議員②「そうですよ」
元老院議員③「何を根拠にそんなことを仰るのです?」

   フェデリック、セナ―トゥスの横に並ぶ。

フェデリック「証拠ならあります」

   フェデリック、魔獣使いとルドルフが交わした契約書を議長へ渡す。
   議長、契約書に目を凝らして、

議長「これは……」

   ルドルフ、焦る。

ルドルフ「議長、そんなものは奴がでっち上げたに違いありません!この聖騎士団の司令官である私めが魔獣使いと共謀するはずありません!」

   契約書には魔獣使いとルドルフの血判が押してある。

元老院議員たち「そうです。偽造に決まっています」
       「ルドルフを信じましょう」

   元老院議員たちは、ルドルフの立場が悪くなり、自分たちが賄賂を受け取っていたことが発覚するとまずいので、必死にルドルフをかばう。

   セナ―トゥスはそのような議員たちの様子を見て、ため息をつく。

セナ―トゥス「仕方あるまい」
フェデリック「え?」

   セナ―トゥス、手を合わせて呪文を唱え始める。

   カッ!
   議場が青白い光に包まれる。

元老院議員たち「これは……」

   議員たちは頭を抑えている。
   議場・国王もまた同様の仕草で何かを感じ取っている。

セナ―トゥス「これは魔獣が襲撃する前日と当日の記憶である」

回想シーン
×    ×    ×
〇襲撃前日
魔獣が襲ってくると必死に訴えるエレナ
エレナのことを嘲笑う元老院議員たち

〇襲撃当日
魔獣によって記憶が消される元老院議員たち
魔獣使いとルドルフ、ミザリーが何か話している様子
×    ×    ×

国王「これは……」
議長「今見たものは……」

セナ―トゥス「今のは私の記憶である。皆、これを見てもまだルドルフが元老院に相応しいと思うかね」

   国王、議長を見て、

国王「……ルドルフを元老院議員に任命することはできそうにない」

   数分間の沈黙。

国王「それと、衛兵を」
議場「え、衛兵ですか?」

   国王、静かに怒りが滲みだした様子で、

国王「ルドルフを魔獣を使った襲撃の罪で緊急逮捕せよ」

   焦るルドルフ。

ルドルフ「なっ……!」

   ざわつく元老院議員たち。
   屈強な複数人の衛兵が到着し、ルドルフを捕らえた。

ルドルフ「やめろ、離せ!おい、お前ら、散々賄賂を受け取っておきながら何だこの仕打ちは」
議長「賄賂とは!?」

   ルドルフは連行された。
   さっきまでとは打って変わって静まり返る元老院議員たち。

国王「議長よ」
議長「は、はいっ」

   国王、深呼吸した後、

国王「ルドルフ及び元老院議員たちの取り調べを。その後、裁判にかける」

   エレナとフェデリック、安堵の表情。
   セナ―トゥスの顔には安堵の色が見える。

セナ―トゥス「国王陛下……」

   衛兵たちにより連行される元老院議員たち。
   一列でぞろぞろと議場を後にする。

   国王、ゆっくりとエレナに近づく。

国王「エレナよ」
エレナ「……」
国王「きみは必死に元老院を守ろうとしてくれたのだな。礼を言おう」
エレナ「そんな」
   「(キリっと)人として当然のことをしたまでです」

   国王、フッと笑う。

エレナ「それはそうと、セナ―トゥス様も魔法をお使いになるのですね」
セナ―トゥス「もちろんだ。国王軍の初代元帥はこの私だからね」
エレナ「……!?」

   国王とセナ―トゥス、顔を見合わせて笑う。

国王「先代の父が国王だった頃から、このセナ―トゥスとは付き合いがあるのだよ」

   ワハハハ
   童心に帰ったように笑う国王とセナ―トゥス。

   セナ―トゥス、急に真面目な表情になり、

セナ―トゥス「それはそうと……。すまなかったエレナくん。最初からきみを信じるべきだった」

   セナ―トゥス、エレナに対して深々と頭を下げる。

エレナ「(慌てて)やめてください」

   国王、セナ―トゥスの横に並び、一緒に頭を下げる。

国王「友として私も謝罪しよう」
エレナ「そんな……。頭をお上げください」

フェデリック、慌てるエレナを愛おしそうに見つめる。

〇軍警察、取り調べ室

   ルドルフ、かなりやつれた様子。
   軍警察による取り調べが行われている。

軍警察①「では、賄賂を贈ったことについては認めるのか!?」
ルドルフ「はい」
軍警察①「何の目的だ?」
ルドルフ「元老院に入るために」
軍警察①「そこまでして元老院に入りたい理由は?」
ルドルフ「あの女……」
    「あの女、ミザリーにそそのかされたんだぁぁぁぁぁ」

   ルドルフ、頭を抱えて喚き散らす。
   軍警察①、取り調べ室から退出する。

軍警察②「かなり錯乱してるな」
軍警察①「ああ。もうありゃ、ほとんど廃人だ」
軍警察②「元老院議員たちの取り調べもあるし、勘弁してくれよ」

N「取り調べを受けた元老院議員たちのほとんどが賄賂を受け取ったことを認め、この事件は国を大きく騒がすものとなった」

〇フェデリックの邸宅・客間(朝)

   窓の外を見るエレナ。
   メイド、新聞をエレナに渡す。

メイド「賄賂事件のこと、お聞きになりました?元老院議員のほとんどが解任だそうです」
エレナ「そう」
メイド「あれ、街中大騒ぎだというのに、あまり驚かれないんですね」
エレナ「……」

   フェデリックが入ってくる。

フェデリック「ミザリーとアンナも軍警察による取り調べを受けてるそうだ」
エレナM「……アンナ」

   エレナ、決意した表情で、
   
エレナ「ちょっとアンナのところへ行ってくる」
フェデリック「え!なぜ?」
エレナ「どうして嘘をついたのか聞きたい。それに、散々いじめられてきたのにミザリーに味方した理由も知りたい。どうしても」

   フェデリック、やれやれという様子。

フェデリック「お供しますよ」
エレナ「ううん。私ひとりで行くわ」

   エレナ、馬車に乗って出かける。
   フェデリック、馬車が見えなくなるまで見送る。

〇アンナの家

   アンナ、うさぎのぬいぐるみを抱き、ベッドに腰掛けている。

アンナ「ふう」

   アンナ、疲労の色が隠せない。

   コツン
   窓に石がぶつかる。
   アンナ、窓の外を見る。
   エレナ、アンナの部屋の方を見ている。

アンナ「……エレナ」
   
   エレナは眉一つ動かさず、じっとアンナの部屋の方を見ている。
   真っ直ぐ立ち、ピクリとも動かない。

(続く)


第15話↓


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