![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/109193553/rectangle_large_type_2_3b5416ebefda8722a7042532525ab2c4.png?width=1200)
「もう正義のヒロインなんて願い下げ!」第11話
第11話
〇フェデリックの邸宅
アンナが訪ねてきた。
フェデリック、アンナを迎える。
フェデリック「いらっしゃい」
アンナ、エレナと対面する。
エレナ「(嬉しそうに)アンナ!元気だった?」
アンナ「エレナ!会いたかった」
〇フェデリックの邸宅・中庭
フェデリック「それで?話って?」
アンナ、決意した表情。膝の上でグッと拳を握る。
アンナ「ルドルフとミザリーのこと……」
エレナ・フェデリック「!!!」
回想シーン
× × ×
元老院が議会で討論をしている場面
× × ×
アンナ「ルドルフが以前から元老院に入りたがっていることは知ってるでしょ。その目的のため、ルドルフはずっと勲章を受けることを狙っていたの。でも、ここのところ聖騎士団の評判が悪いし、内部崩壊が始まっているしで、結局勲章は貰えなかったの。今まで元老院に贈った賄賂を無駄にしたくないルドルフがミザリーと組んで、元老院の長・セナ―トゥスを殺そうとしているの……」
エレナ、驚く。
フェデリック、「やっぱりか」という表情。
エレナ「なんて!?殺す!?」
アンナ「ええ。セナ―トゥスを殺して、元老院に空席をつくり、そこに滑りこむことを狙っているのよ、ルドルフは」
フェデリック「セナ―トゥス以外の元老院たちは賄賂を受け取っているからね。空席ができれば、全員がルドルフを推すだろうね」
エレナ「……」
エレナ、怒りながら立ち上がる。
エレナ「止めないと!絶対に、この悪行を止めないと」
エレナ、怒りが収まらずわなわなと震え続けている。
フェデリック「……ミザリーは、」
「ミザリーは、ルドルフを元老院に入れて、何を狙っているんだろう」
フェデリック、考え込む。
時計の秒針がやけに大きく聞こえる。
フェデリック「(独り言のように)グランドマスターか」
エレナ「グランドマスター……」
フェデリック「そうか。ミザリーはグランドマスターを狙っているんだ!ルドルフが次期グランドマスターの指名権をもつ元老院に入ることで、グランドマスターになろうとしているのか」
アンナ「グランドマスター?」
エレナ「グランドマスターとは全ての騎士団を束ねる最高指導者のことよ。国王の命令の下で動く聖騎士団や教会の命令の下で動く十字騎士団、私兵の騎士団など様々な騎士団のトップのこと」
エレナ「あんな私利私欲にまみれた連中が元老院に入ったり、グランドマスターになったりしちゃ絶対に駄目よ」
エレナ、フェデリックとアンナを見て、
エレナ「あいつらの思い通りになんてさせない!」
フェデリック、エレナとは対照的に冷静に話し出す。
フェデリック「で、アンナはどこまで知ってるの?」
アンナ「どこまで……。あ、今度の木曜日。木曜日の議会終了後に襲撃を決行するみたいです。それと、襲撃には魔獣を使うとか」
フェデリック「何で僕にだけ敬語?まぁ、いいけど。襲撃は木曜日だって?議会は金曜日まであるのに?」
アンナ、少し慌てて、
アンナ「確かにこの耳で木曜日決行と聞きました。でも、どうして木曜日なのかまでは……」
フェデリックは怪しむような目つきでアンナを見ている。
フェデリック「ふーん」
一方、エレナはアンナのことを少しも怪しんでいる様子はない。
エレナ「木曜日ね!私たちの手で必ずルドルフとミザリーを阻止しましょう。でも魔獣を使うってどうやって……都合よく魔獣が出てくれるとは限らないのに」
フェデリック、立ち上がってウロウロしながら考えている。
フェデリックM「元老院、魔獣、元老院、魔獣……」
フェデリック「分かった!魔獣使いへの迫害だ」
アンナ「魔獣使いへの迫害、ですか?」
回想シーン
× × ×
多くの魔獣使いが国王軍から攻撃され、迫害を受けている様子。
× × ×
フェデリック「10年前のことだ。それまで国王軍は隣国との戦争に魔獣を利用していた。そのため、魔獣使いたちは国王軍内で重宝され、厚い待遇を受けていた。ところが、戦争が終わると国王軍は用済みになった魔獣もろとも魔獣使いたちを虐げ始め、何百人も殺された。生き残った魔獣使いたちは西の辺境に追いやられたというわけさ」
エレナ、考え込んで、
エレナ「国王軍に強い恨みをもつ魔獣使いと元老院にどんな関係が?」
フェデリック「元老院が指名した軍人を国王が任命する。それが国王軍なんだ。だから、元老院は国王軍の元ってワケ」
エレナ、立ち上がって、
エレナ「その魔獣使いを利用して、魔獣に元老院を襲撃しようとしているのね。彼らに迫害された悲惨な事実があるのは分かった。でも、人の命が奪われようとしていることを知って、それを阻止しないわけにはいかない!」
エレナ、アンナの手を握り、
エレナ「ルドルフとミザリーの恐ろしい計画を教えてくれてありがとう、アンナ」
アンナ、申し訳なさそうに笑う。
アンナ「いいの。でも、私にできるのはここまで。これ以上は協力できないわ」
エレナ「ここまでしてくれれば十分。本当にありがとう」
エレナ、アンナと抱き合って感謝を伝えている。
フェデリック、その2人の様子を黙って見ている。
アンナ「またね、エレナ。フェデリックさんも、また」
アンナ、馬車で去る。
エレナ、馬車が見えなくなるまで手を振っている。
エレナ「さて、木曜日の襲撃に向けて作戦を練らなきゃね。今日は火曜日だから……大変!もう時間がないわ」
フェデリック「……ああ」
エレナ・フェデリック、部屋へ入る。
〇お城・司令官室(夜)
ルドルフ、仁王立ちをしている。
ミザリー、ルドルフの隣で腕を組んで立っている。
ドアが静かに開く。
アンナが入ってきた。
ミザリー「で?どうだった」
アンナ「……」
ルドルフ「どうだったかと聞いているんだが」
アンナ、舌打ちをして、
アンナ「ちゃんとやってきたわよ。エレナとフェデリックに——」
回想シーン
× × ×
アンナが元老院襲撃のことをエレナとフェデリックに伝えている。
× × ×
アンナ「——エレナとフェデリックに伝えてきたわよ。元老院襲撃が木曜日だと」
ミザリー、笑いがこみ上げてくる。
ミザリー「あはははははは!あいつら、信じたかしら」
アンナ「信じたんじゃない?少なくとも疑ってる様子はなかった」
ミザリー、笑い続けている。
ルドルフ「よし、じゃあ俺たちも作戦を確認するか」
「【金曜日】の元老院襲撃に向けて」
(続く)
第12話↓