本が人を作り人を殺す
自分の思想というものを所有したくなければ、そのもっとも安全確実な道は暇を見つけしだい、ただちに本を手にすることである。
『読書について』ショウペンハウエル
本は人に知識を与える。人に生きる力を授ける。
同時に、本は人から思考を奪い、創造することを忘却させる。
本を読むことで人は人になる。あらゆる則を学び、先人の轍を見出し、世界に生きる術を知る。
本を読むことで人は人でなくなる。あらゆる翼は折れ、己に靴のあることを忘れ、自ら思索を織ることを忘れる。
人の言葉で作り上げた衣服の、なんと煌びやかなこと。
人の言葉で作り上げた衣服の、なんと空疎なこと。
願わくば未だ意識ある内に、自らの内に言葉の湧き出でんことをこそ願う。
俺はもう俺の鎖を鋳ることはやめねばならぬ。俺自ら俺を縛ることをやめねばならぬ。俺を縛っている鎖を解き破らなければならぬ。そして俺は、新しい自己を築き上げて、新しい現実、新しい道理、新しい因果を創造しなければならぬ。
『鎖工場』 大杉 栄
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