見出し画像

「対話アート」って何?自分の中の「見えない境界」と向き合う

(本記事は「対話アート NAGANO WEEK 2024」のためにリライトしています。)
私たち一般社団法人ナナイロは「障がいのある人とない人の接点を創る」をミッションに、2022年に設立した団体です。

今年も11月10日より2週間、「対話アート NAGANO WEEK 2024」を開催します。私たちは2022年、2023年と「対話アートNAGANO WEEK」を松本市内の複数の施設や企業からご協力いただき、開催しました。3回目の開催となる2024年は松本市、長野市、上田市、安曇野市、下諏訪町の5市町、33ヶ所での展示、参加作家70名以上、作品総数410点以上を想定しています。

障がい者と関わったことのない人が51.9%

日本では障がい者と関わったことのない人が51.9%いるという調査データがあります。ダイバーシティやインクルージョンが叫ばれる中で、多くの人たちが「障がい」に触れる機会がそもそもない、そこに本質的な課題があると考えています。

(*)「差別はよくないけれど、障害者施設建設には反対」-「施設コンフリクト」をどう乗り越えるか。

私たちは「障がいのある人とない人の接点を創る」というミッションを実現するために、企画やイベント、ワークショップ、メディア運営を行なっています。接点を創ることが、障がいのある人への理解や支援につながり、障がいを感じる人たちにとっての選択肢を増やすことになる、と考えているからです。

より社会の多様なグラデーションをアートやメディア、イベントを通して「見える化」することで、多様な個性に寛容な地域の空気の醸成につながると考えています。

対話アートが目指すもの

対話アートは「障がいのある人とない人の接点を創る」ことを目的に、アートを通じて街中にコラボレーションを創り出すインクルーシブアートのキュレーションプロジェクトです。街中や店舗で多様なアート作品や表現が溢れることにより、社会に多様性の空気を創り出すことに賛同したアーティストや事業者、キュレーターがコラボレーションします。

多様な人が表現することができる社会は豊かだと思います。対話アートでは必ずしも障がいのある人だけの作品に焦点を当てているわけではありません。私たちは障がいのある人の作品と障がいのない人の作品をどちらも展示することにより、アートを通じて個々が能力を発揮できるインクルージョン社会の加速に貢献したいと考えています。

既に各地で障がいのある人によるアートや多様なアートの形を模索しているプロジェクトがありました。私たちは、そのような独立したプロジェクトと連携することにより、小さな声を大きな声にすることを目指しています。

一方でダイバーシティはより複雑でコミュニケーションコストの高い社会を選択することを意味します。目の前の人が自分とは異なる合理性で動いていることを受け入れて、対話をし続けていく必要があるからです。

そのような複雑な社会で、私たち自身の複雑さを抱えながら、記号化され単純化された多様性ではなく、多元的社会のデザインを創り出すために私たちに何ができるのか?

対話アートは多くの市民の皆さん、事業者、キュレーター、クリエイター、障がいを感じている人や障がいのある人をサポートしている人など、多くの人の接点となり、多様な社会のあり方を対話する機会になれば幸いです。

新しい視点は常にマイノリティから生まれる

社会がマイノリティにフォーカスすることはクリエイティブなことであり、経済的に合理性があります。YouTubeやHip-Hop、ビットコインなどイノベーティブで、世界の文化や経済を変えるものは常にマイノリティの新しい視点、価値観から生まれています。

クリエイティビティは時にはコストがかかりますが、その投資は、地域での生活の質や豊かさとして還元されます。

パンデミックや世界的な紛争、不況を経て、そしてテクノロジーの進化などが重なり、社会の流動性はこれまでの人類の歴史にないレベルで変化しています。あるリサーチで50%の人が「パンデミックとそれ以降に起こったあらゆることをきっかけに人生の選択を見直した」と回答しました。社会の前提や当たり前、価値観が変化する中で、私たちは常に新しい視点を学び続けることが必要なのだと思います。

アートは、私たちの中にあるかもしれない「見えない境界」に気づかせてくれたり、認知のラベリングを再編集してアップデートしてくれるツールです。そしてアートが介在することで、この複雑化する世界で、個々がゆるやかにつながることができるのかもしれません。対話アートは、小さく思える声を連動させることで、地域にエネルギーを与え、社会をエンパワーするクリエイティビティを可視化するためのプロジェクトだと考えています。

人は「知らない」ことは避けたり、怖がったりします。でも「知る」ことによって具体的に「行動」することができます。身の回りにある「障がい」を感じる人の「生きづらさ」やマイノリティが抱える課題に、多くの人が気づいたり、必要なケアができたら、社会の多くの課題解決が可能になるのではないでしょうか?

ナナイロは、「今」は自分には関係がないと思っている人たちを取り残さずに、「小さな声」との境界や「異質に思えるもの」との分断に接点を創りながら、より多くの人が新しい視点を認知できる場を創っていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?